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第434回  < 日本経済の相対的地位について >

円安も手伝い、日本のGDPがドイツに抜かれて4位に転落したという記事がありました。GDPの絶対的な金額に注意を払う人も減ってきたように感じますが、2023年時点でのIMFが発表した世界の名目GDPでは1位の米国が27兆3,578億ドル、2位の中国が17兆6,620億ドル、3位がドイツの4兆4,573億ドル、僅差で4位の日本が4兆2,129億ドルとなっています。3兆ドル台で5位インド、6位イギリスと続きます。世界11位の人口を持つ日本は、一人当たりの所得、個人消費が多く、国内に規模の大きい市場を持っていることが特徴です。
 
一方、2023年の労働経済白書では、日本の一人当たり労働生産性は1996年以降横ばいであり、他国に比べて伸び悩み、1人当たりの賃金が増えないことは長らく問題点として指摘されています。また、国内総生産を就業者数で割った1人当たり名目労働生産性の1996年から2021年の変化を指数化すると、日本が101.6なのに対して米国は241.0、イギリスは200.3となっており、労働生産性の相対的な伸び悩みが顕著です。
 
また、ここ数年の物価上昇率と所得増加は欧米のみならず、アジアでも顕著であり、日本が蚊帳の外に置かれている状況です。先日訪問した東南アジアでの物価は、数年前のそれとは2倍以上に感じます。円安効果も大きく、シンガポール、香港というアジアの金融ハブのみならず、大国中国、インド、東南アジア諸国のタイ、インドネシア、マレーシアという国々から来た人々は日本の「安さ」に驚く状況となりました。
 
高齢化が進む日本では今後のGDP成長は微増にとどまり、グローバルの経済での相対的地位は低下方向であることは疑いがありません。経済産業省が今年公表した資料を見ると、2040年時点の日本の実質GDPと実質賃金の伸びは微増にとどまる一方、インドのGDPが日本を上回り、実質賃金においてはドイツ、イギリス、フランス、韓国が日本を上回るというシナリオが示されています。したがって、日本は、政府、企業、個人が変化と挑戦を恐れずグローバルマーケットで稼ぐことと、新しい産業を興すイノベーションを生み出していくほか、世界の中での相対的地位を維持することはないと結論づけています。
 
私どもが国内スタートアップ企業への投資を通じて希望をもって見ている事象は、人手不足の供給制約をデジタル投資で解消しようという動き、日本の生活、文化、コンテンツをマネタイズする動き、政府によるスタートアップ育成5カ年計画に代表されるイノベーションを後押しする動きが大規模化している点です。
 
このような状況を踏まえ、今後15年の時間軸で私たちが投資運用会社として日本経済に対して貢献できることは、イノベーションやコンテンツ等の魅力ある国内投資機会の発掘と海外からの国内投資を後押しすることではないかと考えています。そのためにも、投資運用のスキルに長けた人材、海外からの投資家資金へのアクセスを持つ人材の育成は必須であり、大きな課題であると感じています。








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