パリから爆走、全2500キロの記録2
パリから爆走、全2500キロの記録1の続きです。
ハンブルグに着いた私たち。翌朝8時頃に起きると、ホテル近くの車の代理店へ。ここのオーナーが夫が仕事で使う写真の引き伸ばし機を格安で売ってくれたのだ。
先に言っておくと、ドイツ人は世界でも類を見ない素晴らしい民族だと思う。ベルリンに初めて行ったときも、他の都市に行ったときも、みな一様に親切で、勤勉で、能力が高い。
一番感動したのは、ベルリンで必ず訪ねる夫お気に入りのカフェに行ったとき。店員さんは英語を話すけど、メニューはドイツ語だけなので、スープと思しきものの内容を尋ねた。おそらくそれはドイツ料理の類で、英語に訳すのは難しかったのか、店員さんは言葉につまっていた。すると、プイッと踵を返してどこかに行ってしまったので、フランスに住んでいた私は、「言葉が通じない外国人だから、めんどくさくなって無視されたんだな」と思っていた。それはフランスではとてもよくあることで、いちいち気にすることもなかった。と、思った次の瞬間。その店員さんはカップにたっぷりスープを注いで持ってきてくれた。そして「味見してみて」と渡してくれたのだ。
その時の衝撃と言ったら!!!
私はこの話をたぶん30人くらいにしている。それほど驚いたし、なんて親切なんだろう、なんて機転の効いた人なんだろうと、心から感動した。ドイツ人は見た目こそ強面だけれど(ドイツ代表ゴールキーパー、カーンみたいな顔の女性がたくさんいる)、心はあたたかい人が多い。
とにかく、フランスとは大違い(感じ悪く、サボってばかりで、何をするにも不器用)だ。フランスはフランスで、そのスノッブさとか閉鎖的な感じが、京都みたいで嫌いでもないんだけど。とにかく私は、ドイツ人に嫌な思いをさせられたことがない。
そしてこの日も、巨大な引き伸ばし機をバンに積むにあたって、分解しなくてはいけないので、相当時間がかかるだろうと踏んでいた。そしたら、さすがはドイツ人!!!すべての準備を滞りなく済ませておいてくれたのだ。すなわち、すべてのパーツは分解され、細かい部品は小さな段ボールにまとめてあり、それ以外のパーツは種類や大きさごとに並べてあった。加えて、台車を用意してくれ、それはもう見事にスムーズにすべてが終わったのだ。もちろん譲渡にあたっての契約書のようなものも用意しておいてくれ、確認作業をして私たちはすぐに出発することができた。ますます彼らのことが好きになった。
ハンブルグからライプチヒまでは3時間ほどの道のり。休憩をしながらゆっくり進み、今夜眠るための布団を買いに、郊外のIKEAに寄った。IKEAでは一番あったかいという羽毛の布団とシーツなどを買い求めた。16時に管理会社の人と合流し、初めてアパートの中に足を踏み入れた。
実は、これまでほぼすべての物件を内見していたのだが、ここだけ私は見ていなかったのだ。でも夫は何度も見せてもらっていたし、写真も何十枚も撮って見せてもらっていたので、特に心配はしていなかった。住めば都と言うしね。細かいことを気にしないのは、きっと長所だと思う。
そして、私たちのアパートはとても感じがよかった。1階なのがちょっと心配だったけれど、周囲の環境も悪くなく、外から中が見えることもない。何よりアパート全体がとても明るくて、夕方だというのに電気をつけなくてもいいくらいだった。加えて、とてもあたたかい。思った以上に素敵なアパートだった。
一通りの説明を受けたのち、今夜眠る寝室を片付けるために家電量販店へ赴いた。ひとまず掃除機を買い、夕食を簡単に済ませて家に戻った。寝室だけ念入りに掃除機をかけ、雑巾で何度も何度も床や壁をふき、IKEAで買った布団をしいて眠った。