ライプチヒに引っ越しました
日本に28年、フランスに3年、そしてこれからはドイツに住むことになった。
何から書いたらいいかな。
まず、私たち夫婦はドイツはザクセン州ライプチヒにアパートを買った。
ヨーロッパにアパートを買うというのは夫の念願だった。アパートを買えば家賃はかからないし、何より彼の仕事に必要不可欠な専用暗室を作ることができる。そもそものはじまりは、そこだった。
今から5年以上前、私と結婚する前、夫はパリに住んでいて、その頃ベルリンがアツい!という声をきいて、バックパックに現金を背負ってアパートを買いに行った。
でもその日ベルリンには大寒波が到来していて、街角には人気もなく、唯一ベルリン在住の友人はちょっと鬱気味で、薄暗い小汚いバーに連れて行ってくれただけで、夫にとってベルリンの何がアツいのかサッパリ分からず、こんな街には住めない!と帰ってきたのだった。
それから数年たち、夫婦でパリに移り住んでしばらくした頃、夫の仕事でベルリンのギャラリーを訪ねた。5月のベルリンは緑が美しく、素敵なカフェがあちらこちらに立ち並び、ごはんは安くておいしく、案内してくれた新しい友人はとても親切だった。
なので、夫は再びベルリンにアパートを買おうと試みたのだけど、時既に遅し。5年前とは違い、ベルリンはまさにバブル。ヨーロッパの都市としてはまだまだ安いけれど、空き家率はものの3%と言われ、競争は熾烈を極めた。
それでも諦めず、私たち夫婦は良さそうな物件があればすぐさまベルリンに飛び立ち内見し、ドイツの他の街にも足を伸ばした。デュッセルドルフ、ドルトムント、エッセン、ドレスデン、そしてライプチヒ。
あちこちでいろいろな不動産屋さんに話しをきき、破格の条件でアパートを見つけたこともあった。ドイツ語しか話せない不動産屋さんと、iPhoneのグーグル翻訳の音声入力を使って会話をしたりもした(意外と使える!)。
でもいつも最後に振られた。オークションは空振り、連絡が取れなくなったり、直前でオーナーがほかの人に売ってしまったりもした。夫は何度も絶望していた。私はアパートの鍵を受け取るその日まで、過度な期待をするのはやめておいた。夫婦で絶望してるわけにもいかないので。
そんなこんなで3年が経とうとしていた時、ついにその物件にめぐりあった。
ライプチヒの中心部からほど近い、70平米弱のアパート。そのアパートはちょっと変わっていて、寝室の隣に大きなジャグジールームがあった。防水加工もされたその部屋は、暗室にはご用向きだったけれど、おそらく大半の人には無駄なスペースのある物件だったのだろう。条件はとてもいいのに、売れ残っていた。
というわけで、二人の貯金をはたいてアパートを買った。
もちろんドイツ語なんてまったくしゃべれない。友達もいないし、仕事があるかもわからない。でもたぶんなんとかなる。今までもなんとかなってきたし、贅沢をしなければ、二人で暮らしていくくらいはきっと大丈夫。それより何より、毎日朝昼晩+ヒマさえあれば不動産サイトを見ていた夫の苦労が報われたのがよかった。私も私で、365日+閏年、毎日物件の話をされていたから、それがやっと終わるのがとてもうれしい。
長くなったので今日はこのへんで。
とにもかくにも私たちは、これからライプチヒで、人生の新たなページをはじめるつもりだ。