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顔料つれづれ(その1)「PB15と仲間たち」

10/9追記:結晶タイプや分子構造について、あんまりにも漠然としすぎていると思ったので、冒頭を一部加筆し、構造図や結晶構造イメージを追加してみました。

こんにちは。aiwendilです。
こちらには、PB15関連でTwitterに連投したものを再掲しています。
なお、再掲にあたり、ざっくり結晶構造図と参考文献を加えています。
構造図や結晶構造イメージは原子間距離などはデタラメです。本当になんとな〜くのざっくりしたイメージとして捉えていただければと思います。
作図は、下書きはMolView( https://molview.org/ )さんを使い、その後手書きで加筆しました。デジタルアナログハイブリットです。
(配位結合は単実線表記+小矢頭で表示しています。IUPACの表記法では単実線推奨で矢印は非推奨らしいのですが日和りました。表記法が変わっていたのね。知らなかった・・・・。)

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PB15ファミリー(?)について需要がありそうな感じなので、文献で理解している範囲で情報を。
PB15その他の枝番は、物質としては銅フタロシアニンと呼ばれるグループで、その中でも青く発色する顔料たちのCI名です。
PB15、PB15:1、PB15:2、PB15:3、PB15:4、PB15:5、PB15:6の7種。
基本形がPB15で、これはα型と呼ばれる結晶構造を取るものです。このPB15は結晶構造が不安定で、一定の条件で一部が勝手にβ型に変換してしまう(色調が変わってしまう)ことがあって、それで色々な改良が加えられた結果たくさんの異性体・修飾構造体ができたという経緯があるそうです。

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PB15:1はα型で、ベンゼン環の一部を塩素置換して非結晶化したもの、PB15:2はα型で非結晶型化処理に加えて凝集防止処理を加えた非凝集性タイプ、PB15:3はβ型結晶無処理タイプ、PB15:4はβ型で非結晶型&非凝集性タイプ、PB15:5はγ型結晶、PB15:6はε型結晶、とのことです。
PB15:5は工業的に使われていないそうなので、通常我々が目にできるのはそれ以外の6種ということになるのではないかと思います。
α型が赤味、β型が緑味、ε型が深い赤味になりますので、色の系統としては理論上はα型グループ(PB15,PB15:1,PB15:2)、β型グループ(PB15:3,PB15:4)、ε型(15:6)がそれぞれ似た色味になるということのようです。ただ、同じCI名でも置換した塩素の数による違いがあったり、PB15は混晶があって緑味に寄ったりすることもあるようなので、合成ロットや製品ごとに微妙な違いは当然あるものと考えていいのではないかと思われます。
なお、PB15は系統の総称番号だと誤解されることが多いようなのですが、他の枝番同様に独立した番号です。顔料の専門文献資料にはたいていこのフタロシアニンの種類に関する表が載っているのでたぶん業界では定番の知見なのではないかと思います。詳細はこの日本語の総説がわかりやすいかと思います。→J. Jpn. Soc. Colour Mater., 83[11], 475-483(2010)「フタロシアニン顔料」

ちなみに、この銅フタロシアニンと同じ構造で銅がないのがPB16、塩素置換をたくさん施したのがPG7、塩素と臭素で置換したのがPG36、スルホン化してバリウムレーキにするとPB17:1になる、という関係のようです。

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以上、PB15その他の銅フタロシアニンについてざっくり情報でした。
文献的に調べただけでこの分野は素人なので、錯誤等ありましたら教えていただけると喜びます。

備考:冒頭画像は手持ちの顔料たちの一例です。なお、同じCI名でもメーカーさんや製品によって微妙に(場合によってはだいぶ)色味が違います。PB15:2だけは手持ちがありませんでした。残念。

参考文献
J. Jpn. Soc. Colour Mater., 83[11], 475-483(2010)「フタロシアニン顔料」
「色材工学ハンドブック」(2005) 朝倉書店
「Pigment Handbook Vol.1」(1986) Wiley-Interscience

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