第31回・FUTURAの没入感と感覚的な体験(ResMusicaより)
フランスのウェブマガジン・ResMusicaにFestival Futuraの記事が掲載されました。
執筆は音楽学者のMichèle Tosiさんです。
Chromeの自動翻訳があまり良くなかったので、手動で日本語訳にしてみました。
ソースは全て元記事↓に依拠します。
DrômeのCrest*を拠点とする電子音響音楽祭Futura、第31回(8月24日~26日)のテーマは「世界一周」
フランス、イタリア、日本、中国、ポルトガル、クロアチア、アメリカ、オーストリア、サハラ以南のアフリカなど、FuturaのディレクターであるVincent Laubeufが事前に呼びかけた作品募集に応えた世界中の作曲家が2023年フェスティバルの出演者として名を連ねており、このイベントの国際的な広がりを物語っている。作曲家Lucie Bortotと渡辺愛(Ai Watanabe)への2つの委嘱が決定したほか、今年は多くの女性作曲家が活躍するなど、最近の作品と若い世代に重点が置かれている。
『Galeries sous le soupir des pierres』(2023年)は、ハープ奏者としてクラシックな訓練を受けたPaola Avilesによる初公演。この作品は、ニュアンスと繊細さに満ちた探求の旅であり、Jonathan Pragerの解釈がその夢のような質を際立たせていた。Nathanaëlle Raboissonの繊細な解釈による中国の作曲家・滕晴晴(Qingqing Teng)の『Yin system』(2023)は、アルコム・カンパニーの委嘱作品。緊張感に満ちた音楽は、息づかいと情感にあふれ、若い中国人女性の呼吸、笑い声、声を聴かせた。Lucien Basdevantの『Petite Balade En Forêt Avec Marguerite マルグリットとの小さなバラード』(2023年)というタイトルは目くらましである!サウンドスケープというより、むしろアニメーション化された音の研究であるこの作品は、共鳴、反発、軌跡を奏でるために合成音を使用している。Julie Mondorが2021年に発表した『Hécate ヘカテー』(ギリシャ神話に登場する3つの頭を持つ神)は、声の亡霊のような存在が住む広大な響きの空間を切り開く。Éric Broitmannの演奏によって引き出されるテクスチャーの綿密な作業と素材の時間的な伸張は、聴くことの神秘性と緊張感を維持していた。『Vertige en entonnoir』(2012年)では、Studios d'Art Zoydで訓練を受けたサウンドアーティスト、Sarah Clenetが、螺旋を描く動きの形をとった力強く没入感のある音の流れを作り出す。言葉を覆い隠すような声の処理が、音の提案に奇妙さを加えていた。
ルッソロ賞受賞者
Futuraは4年前から、ルッソロ賞の受賞作品をプログラムに組み込んでいる。電子音響音楽を対象としたこのコンクールは、イタリアの作曲家で画家のルイジ・ルッソロ(1885-1947)へのオマージュとして1979年に創設された。2010年からは、Le Bruit de la neige協会とそのディレクターであるPhilippe Blanchardが主催し、国際的な知名度を高めている。イタリアの作曲家Diego Rattoの第2022回入賞作品「KOM」が上演された。彼の同胞であるPaolo Castriniがコンソールで演奏した『KOM』は、ジェスチャーのエネルギーと軌跡の感覚を組み合わせた10分間の作品であり、コントラストと断絶によって育まれた鋭いエッジの音楽が聴く者を魅了した。
大いなる形式
Denis Dufour(Futura創設者)は、1979年にルッソロ賞を初めて受賞した!彼は、デュフールがインタビューしたサウンド・アーティストであり友人でもある作曲家Frédéric Acquavivaに捧げた新作『FA 67-54』(1時間以上の音楽)を携えてFutura 2023に登場。この新しいデュフール伝説は、1967年の誕生から54歳の誕生日を迎える2021年までの作曲家Acquavivaのキャリアを構造的な枠組みとしている。数字遊びが好きなデュフールは、フィボナッチ数列(1、2、3、5、8、13、21、34など)に関連するAcquavivaの年代を選んでいる。アーティストとしてのキャリアを語るために招かれた作曲家の、意図的に簡潔で謎めいた言葉は、体系的に英語に翻訳され、歌手のロレ・リクセンベルグとマルチメディア・アーティストのヘム=イシュのサウンド・アクション/インプロヴィゼーションによって刺繍され、拡張され、コメントされる。英語翻訳に声を提供する後者は、見事なチベット・ホルンを吹き、その音色はJonathan Pragerがコントロールすることによってさらに引き立てられていた。奔放なファンタジー、辛辣なユーモア、名人芸のような編集。デジタル・オーダーに則り、曲の長さは...67'54"!
デュフールの作品で言及されたAcquavivaの『Séminal』(2020-21)はOlivier Lamarcheが演奏。この作品もかなりの長さ(49分)で、女性スピーカー、アーティストORLAN、女性歌手、オーケストラ、エレクトロニクスをフィーチャーしている。今晩初演されるのは、アコースティック・バージョン(全体が支持体に固定されている)である。テキストは、これから起こる宇宙論的な出来事のリストで構成され、スピーカがブロークンな英語で話し、楽器の音に囲まれている。このコンセプチュアルな作品は、同じプロトコルに従って展開し、第2部では、楽器が同時に演奏し始めると、オーケストラの布が密になるように展開した。
バラエティ
さまざまな聴衆を集め、若い耳を育て、新しい聴衆に音楽を紹介するために、Futuraはその提供するものを多様化することに熱心である。デュフールの「Tango de l'oubli」、Jonathan Pragerの「The Koala song」、Roger Cochiniの「Lullaby」、Marie-Hélène Bernard の「La mousson」などである。
スピーカー・オーケストラ(acousmonium アクースモニウム)をよりよく聴くために、午前中は同じ作品(Dieter Kaufmann の『Symphonie acousmatique』からの抜粋)の演奏を聴き比べるセッションが行われ、聴衆は演奏ごとの変化を評価することができた。作品は、3人のacousmates アクースマット(Jonathan Prager、Olivier Lamarche、Nathanaëlle Raboisson)によって投影され、聴衆はダイナミクスのレベル、各人の空間におけるユニークな動き方、希望する色に応じたスピーカーの選択などを鑑賞することができた。音響音楽の研究者であり、Futuraの常連でもあるPierre Couprie氏が制作したビデオでは、音響空間とスピーカーの活動が、パフォーマンス中にライブでスクリーンに映し出された。魅力的な内容だ!
Acousma-vidéoのコンサートの中には、Armelle Devigon(振付家)、Karen Fenn(作曲家)、Gwen Mulsant(ビデオ・アーティスト)、Corinne Frimas(声楽家)の4人のアーティストによる集団プロジェクト『Les Herbes folles』(2021年)が含まれる; 最近の作品では、Rossella Calella『Lightbending』(2022年)、Michel Titin-Schnaiderの『Sons d'anthropocène』などがあった。
真夜中から早朝(午前8時)にかけて行われる「Nuit blanche ニュイ・ブランシュ」では、約40曲のアクースマティックな作品と、毎年音楽祭の1週間前に行われる演奏コースに参加した6人の作曲家(Paolo Castrini, 佐藤 亜矢子 Ayako Sato, André Fèvre, Sarah Clenet, Anne Foucher, 渡辺愛 Ai Watanabe)ら、より幅広い演奏家たちが次々と登場した。
毎年の出会い
Futuraには、毎年、この音楽祭で最初に聴くことができる新作を制作する、忠実な作曲家が何人もいる。この2023年のクロニクルに登場する5人のアコースメイトに、作曲家のLucie Prod’hommeとAgnès Poisson、Acousmaki、Frédéric Kahn、Éric Broitman(彼はアクースモニウムも演奏した)、そして今年はアクースモニウム演奏を聴くことができなかった檜垣智也 Tomonari Higakiを加えよう。
2023年にensemble Cairnから委嘱された Armando Balice の『Battements de la mer』で海の空気を吸い込む。波のホワイトノイズが遍在する一方で、音のキャンバスと素材の質は更新され、Jonathan Pragerが最も繊細に予測する巧みなクロスフェードによって空間が変化した。
Bruno Capelle の『Dix divagations』(2019年)。そのしなやかなジェスチャーはOlivier Lamarcheの演奏によって輝きや他の色彩的なタッチを高めていた。
Laurence Whiteの『L'Ohm et la mort』(2023年)は、「永遠の風景のように展開する二部作の最初の部分」だと作曲家は言う。息、声、楽器が融合し、モチーフがループし、擬似ピアノの弦を横切るジェスチャーのような特異な図形が刻まれた。この音楽は私たちを飽きさせず、この秘密の想像上の儀式のシグナルを読み解くよう誘う。
最も忠実な信奉者の一人であるPhilippe Leguerinelは、毎年新作を携えてFuturaに参加している。『Suite diaphane en quatre mouvements』(2023年)は、「何よりも可塑的なアイデアの具体化である[...]」と作曲者が語るように、素材、ダイナミクス、動きに関する具体的かつ先鋭的な作品だった。
Paul Ramageの『ロマンスは楽園への切符』(2023)は、『À l'article de l'Amour』と題されたサイクルの第1部である。この作品は、ロックバンドがリハーサルしている曲を聴くというユーモラスなアプローチをとっており、作曲家は「妨害された」音楽を切り刻み、カットし、ループさせる!
2001年以来、エスパス・スベイラン espace Soubeyranを拠点とするFestival Futuraは、財政的な制約と乏しいリソースによって、その地位を弱め、将来を脅かされてきた。フランスで唯一、国際的な評価を得ているこのアクースマティック音楽祭が、存続に必要な支援と物的援助を得られることを期待したい。
(記事内写真はPierre Couprieによる)
*編注:
Drôme:フランス南東部Auvergne-Rhône-Alpesに位置する県
Crest:人口約九千人の小さな町。城跡を擁し、中世の面影を残す
(本note記事のバナー写真は梅沢英樹さんによります)