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【ショートストーリー】忘却のやすらぎ

※こちらはフィクションとなります。逃げ場のない日々に、やすらぎの欲しいときに、ぜひ覗きに来てくださるとうれしいです。


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何か忘れている。
思い出せないままに、朝食のジャムパンを食べてから身支度をする。

何か忘れている。
思い出せないままに、家の鍵を閉めて出勤する。

そしていつも通り忙殺の一日が過ぎていく。

休憩時間に見るネットニュースは誤字だらけで目も当てられない完成度だし、批判だけは一丁前にできるSNSを見るのももう飽きている。

自分のため息と同時に運ばれてきたチーズ牛丼を目の前に
「君しかいない」とつぶやいて口いっぱいにほおばった。

帰宅ラッシュまでが忙殺の一日。
冬なのに汗臭い空気と遠くから聞こえる咳とくしゃみに、めまいがする。
最寄り駅について、ようやく一息ついてこう思う。

何か忘れている。

冷蔵庫に唯一あった卵と冷凍庫に唯一あったご飯で卵かけご飯をほおばった後、これでは夜は足りないとコンビニに行きカップラーメンを買う。

お湯を入れて待つ3分間、とてつもなく心地よいやすらぎを感じていて、多少の罪悪感もありつつほおばったカップラーメンは、忘れていたものを思い出させた。

また明後日ぐらいには忘れるんだろうなと思い眠りについた。

END



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