タピオカの話
今回のタピオカブームの要因を分析してみる。ブームには3つの理由があると感じている。
①まずは若者のスターバックスのフラペチーノ離れだ。2006年に登場したフラペチーノは新しい飲み物でそのニュース性が人気に火をつけた。抹茶フラペチーノの登場以降、常にシーズンにマッチした新フレーバーを展開することで、10代の女性はこぞって愛飲するように。フラペチーノの600円という強気な価格設定には何よりも非日常観、優雅さ、ニュース性があった。しかしここ数年、飽きからか既視感を感じられるようになり、フラペチーノのニュース性はなくなりつつあった。そこへ2013年に春水堂、2015年にゴンチャ、2017年にはTHE ALLEYが次々と日本へ上陸。特にTHE ALLEYの新宿ルミネ店がオープンした時のメディアプロモーションがブームの引き金に。ニュース性がタピオカティーへ移行したのだ。また、フラペチーノで形成された高価なドリンクを10代女性が購入する習慣が、タピオカをこれほどまで人気にした。
②次にタピオカはティーンのアイコンでいられるということだ。InstagramやTikTokのようなサービスは誰でもログインできるため、どんなにティーンの間で盛り上がっていても、翌日には大量のおっさんが流入してきて、自分たちの秘密基地に土足で入ってくる。そうなると、しらけるというか、自分たちの秘密基地の場所を変えようとするのだ。タピオカブームを支えているのは10~20代の女性たちで、行列の中にスーツ姿の男性はほとんど目にしないだろう。おっさんには女性だらけの行列に並ぶことは耐え難く、また派手めのパッケージを持ち歩くにはハードルが高いようだ。よってタピオカティーはいつまでもティーンのものなのだ。
③そして利益率の高さゆえに店舗が無数にあることだ。タピオカは原価が1杯あたり数円~数十円であり、むしろミルクや茶葉の方が原価が高いのである。タピオカが増量無料なのはこのような裏側があったのだ。これらに容器やストローを合わせても高くて150~200円ぐらいが原価であるが、タピオカティーの相場はフラペチーノのおかげで400~600円だ。これは驚くべき利益率なのである。そのため新規参入がし易く、店舗が無数にでき、いかにもブームしているようにみえるのだ。
また、タピオカは黒糖とお茶で構成されていて、日本人が好みの味で日常的に摂取している味だということだ。言ってしまえば和菓子のような味であり、飽きにくいのだ。
飲食ブームは局所的ブームと社会的ブームに分類される。局所的ブーム(一部の世代、地域、志向性の中でのブーム)が台風の目のように成長して社会的ブームとなるのだ。社会的ブームへと成長する背景は、大きな変化が起きているということだ。タピオカの場合は、それがフラペチーノへの飽和感や飲料へ求める嗜好の変化、高価なドリンクを若者が買う習慣などである。
ブームにはブームになるためのいくつかの要因があり、それらがうまく掛け合うことでブームへとなり得るということをタピオカで勉強できた。