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2.ヴァン・ショー

ナチュールワインという概念がすきです。
そもそもわたしはあまりお酒が強くなくて、カクテルとか、梅酒とか、甘めのお酒ばかり飲んでしまいます。ワインよりもぶどうジュースを好んで飲むような人間なので、ナチュールワインも例外ではありません。ただ、どこどこの地で摘まれたぶどうがこういう工夫でワインになりました、というバックストーリーが広がる様子と、ナッツやトロピカルなどの耳にうれしい形容詞に魅力を感じます。ルックスも申し分ありません。ピクニックにはバスケットにパンとぶどう酒を詰め込んでいきたいし、最後の晩餐にもグラスの中には赤い液体が必要です。キリストはワインを自分の血として弟子たちに与えましたが、身体をめぐる赤い液体に似たワインにロマンを感じるのは生き物として自然なことかもしれません。海のように青いスープでも、ビールのように黄色いジュースでもいけません。昔福岡の友人は、「僕の血液の半分は豚骨スープだ」と言っていましたが、黄色い血液なんてひとつもロマンがありません。

底なしの魅惑のワインワールドを耳で楽しむしかない私ですが、ホットワインならぶどう10房ぶんくらいいけます。ホットワインという言葉は実は和製英語で、英語ではモルドワイン(mulld wine)と呼ぶそうです。フランスでは、ホットワインのことを、ヴァン・ショーとよびます。むかし自宅に、チリの世界一高い天文台で宇宙研究をしていた友人と、フランスの友人が遊びに来たときのことです。チリもフランスもワイン大国。2種類のホットワインを作ってもらいました。違いはそんなになく、スパイスとフルーツと甘味をカスタマイズすることでオリジナリティーを出していました。これだけ宇宙は広くて未知の世界なので、我々以外にもぶどうをつんでワインを作る輩は必ずいるでしょう。空のように青いワインやギャルネイルのようなショッキングピンクのワインで作ったギャラクシーヴァン・ショーはどんな味でしょう。とにもかくにも、ヴァン・ショーとよぶだけで10倍おいしく感じる気がするので、ここではわたしなりのヴァン・ショーのレシピを紹介します。

ヴァン・ショー 二人分
材料
赤ワイン        300g
シナモン          2g
オレンジ(みかんでも)  50g
はちみつ(砂糖でも)   20g

つくりかた
小鍋に赤ワインを入れます。シナモンと軽くつぶしたオレンジをいれ、中火で沸騰させて軽くアルコールをとばします。火を止めて、はちみつを溶かしてできあがり。

*クローブ(ホール)やカルダモン、シナモンスティックがあれば2,3個ずつ加えると、よりスパイシーでかぐわしいヴァン・ショーになります。りんごも2かけほど入れてもおいしいです。

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