はじめての、おひとりさまバー。 #山の上ホテル②
つづき
散歩から帰宅し
しばらく部屋でゆっくり過ごす。
気づくと時刻は22時をすぎたあたり。
これからどうしようか、悩む。
というのも、
今回の目的のひとつであった、ホテルでバー。
ここ山の上ホテルでは有名な、“ノンノン”というバーが存在する。
わたしはこれまでの人生で、ちゃんとしたバーには行ったことがない。
学生の頃に集団で訪れた、二次会でも使えるようなところしか知らない。
そもそもお酒が強くなくて詳しくもなくて
バーという空間そのものには興味があったけれど
なかなか行く勇気がなかった。
わたしにとってハードルの高い、バー。
加えて格式高いノンノンで、初めてのおひとりさまバーを経験するのか。できるのか。
ラストオーダーは22時30、
あと数十分のリミット。
どうしようか、悩みに悩む。
ここで諦めてどうする。
今日行かないでいつ行くんだ。
絶対にあとで行けば良かったと思うぞ、ご褒美ホテルなんだから!
ビビっているとなにもできない
思いきりが大事だと自分に言い聞かせ
とうとう決意する。
行くぜ!
再びハイヒールに脚を通し
1階のバー、ノンノンへ向かう。
こちらはカウンター9席のみのお席。
先客でおじさまグループが2組いるのが外から確認できた。
パッと見、空いていなさそう、、?
入れるのか、否か、、
不安を全面に顔に出しながら、入り口周囲をうろうろする。
席数がなく、入れないんじゃないかと心が折れ掛けたが
一旦ロビーで気持ちを落ち着かせ
再びトライ。
そろーっと、恐る恐る足を踏み入れると、バーテンダーと目が合う。
「奥へどうぞ、」
はしっこに、ひと席空席が。
なんだか素敵な雰囲気のあるお姉さまの隣に着座。
温かいおしぼりを受けとる。
「何にしますか」と問われても、下戸なわたしは何を頼めば良いのかわからない。
事前に調べていた、ホテルオリジナルカクテルである ザ・ヒルトップ をお願いする。
わりと強めですよ?と言われたが
結果大丈夫だろうということで、例のものを頼む。
上品なカクテルグラスに、渋いバーテンにシェイクされた魅惑の液体が注ぎ込まれる。
ひとくち口をつける。
おいしい。
大人の味。
なんと伝えれば良いのかわからないが充実感に包まれる。
こんな素敵空間で、こんな素敵なお酒を飲めるなんて。
大人になってよかった。
バーでの過ごし方なんてわからないから、
いやバーテンや他のお客さんとお話するのが良いのかと思うが、
緊張でそんなこともできないと思い
文庫本を持参していた。
自分の世界に浸っています~という雰囲気をつくりながら、ふわふわした頭で文字を追い
となりの会話に耳を傾ける。
30-40代くらいのお姉さまがひとりで隣にいらした。
仕事で東京に来たらしい。
度々この山の上ホテルを利用しており、明日も仕事だという。
おじさまグループも、
仕事や接待でバーに訪れたり、ホテルに泊まることも度々あるのだという。
わたしは気合いに気合いをいれて、
ご褒美ホテルとして来ているのに
仕事用で、ふらっと来ることができるひとが多くいるのだと実感。
それだけちゃんとした、責任ある仕事や事業をしており
それの対価として、いい生活を送っているのだろうけど
少し羨ましさだったり劣等感を感じ、経済格差におののく。
都会にいるとより感じる。
優秀な人々の多さ。自身とは交わることのないだろう人々の存在。
ああ、人生。。
気づけば23時となる。
最後のお客様もいなくなりわたしひとりになる。
営業終了のお時間のため、わたしも退散することとする。
最後に店内の写真を撮らせていただき
少しだけ、文豪たちのお話をバーテンに伺う。
エレベーターまで送っていただき(数メートルだが)
満足感と充足感に包まれながら
ハイヒールで絨毯の引かれた廊下を闊歩し部屋へ戻る。
そして満ち足りた気持ちで就寝。
なんて素敵な時間。興奮でなかなか寝付けなかった
翌朝☀️
窓から差し込む朝日に照らされ起床。
ぼさぼさの頭で
浴衣寝巻きが乱れたまま
ゆっくり茶を飲む。
ぼーっとしたり
テレビを眺めたり
本を読んだりしていると朝食の時間に。
現在朝食はルームサービスのみ。
レストランでのモーニングも良いけれど
憧れていたルームサービス。
ついにこの時がきた。
コンコン、と部屋の扉がノックされる。
嬉々として扉を開き、
かわいいお姉さんを招き入れる。
テーブルに用意されていく朝食たち。
銀のトレーに乗ったお皿も
きらきらの黄色いオムレツも
ぬるくならないように工夫されたオレンジジュースも
全部全部かわいくて、言葉を失う。
ゆっくり、自分ひとりで
この空間を占領できるなんて。
なんて贅沢。
食後のコーヒーもたっぷりあって
ああ、もう
全てが最高。
⛰️🏨
今回、ホテルの案内がついたプランを予約していたため
ホテル散策のために10時にロビーに集合する。
同じく宿泊されていた素敵な夫婦と共に
ホテルを散策しながらスタッフさんのお話を聞く。
後に、あまりお話ができずでしたが大丈夫でしたか?と訪ねられたが
あの夫婦と共にできてよかった。
わたしの知らないことを踏まえてお話しされていたり
知識があるからこそできる質問をされていて
ひとりでの参加以上の満足感を得られた。
案内してもらったスタッフさんは、
顔でリアクションを取ってあまり発言していなかったわたしにも
気を配って話しかけていただいて
ここにもおもてなし力を感じ感銘を受ける。
建設当時のことや
ホテルになる前の使用方法のお話
なぜここにリサラーソンのライオンがいるのか
など、いろいろな話が聞けた。
チェックアウトは12時のため
部屋に戻ってゆっくり準備。
別れを惜しみながら部屋をあとにする。
最後の最後まで、やわらかで聡明な笑顔で迎えていただき
お客様に対する心配りを感じ
本当に本当に気持ちの良い滞在ができた。
ああもう、
思い出してこれを書いている今も
幸せの感情に包まれる。
なんだか仕事や将来に悩み
これからの人生の指針を見失い
もやもやした気持ちを抱えていたが
頑張れそうな気がする。
わたしは大丈夫な気がする。
なんの根本的解決もしていないけれど
心の栄養が補給できた。
本当に、ありがとうございました。
また来ます。