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日本酒はイタリアンと合うのか
なんと、今回は土田酒造さんの横に併設されているVENTINOVEへ行って来ました。
ご夫婦でやられているイタリアンのお店なんですって。
色んなオーベルジュに宿泊してきた私ですが、今回はイタリアンと日本酒…?!
1日1組しか宿泊出来ないと事前に聞いていた私は前から予約の枠を狙っておりまして、早めが良いだろうと予約解禁の2ヶ月前にすぐ予約しました(2023年の6/2に泊まっております)
場所は群馬県の川場。温泉でも有名な場所です。
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お風呂はなくシャワーとトイレが部屋にくっついております。綺麗に整備されていてシャンプー、リンス、ボディソープ、タオル、ハミガキはご用意があります。
お店の周りは広い庭園のようになっておりちょっとした森林浴が出来ます。
土田酒造の正面駐車場から向かって右手に道が伸びているのですが、そのまま車でお店に行けるように道が整備されています。朝に散歩したら最高ですね。
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せっかくの温泉地だし、温泉入りたいな…って思ったら近くに日帰り温泉をやってる施設がいくつかあるので、そちらで温泉も楽しめちゃう。
ちなみに私は行きました。日帰り温泉。
1000円ちょいで3つ星旅館の温泉入れるなんて贅沢だったな。
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温泉に浸かって宿(お店?)に帰り部屋で一服。
お店にお願いしてフライング飲酒。
地元の林檎を使ったシードル。
種類がいくつもあって選ぶのも楽しい。
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飲みごたえ良し、滓もバッチリ楽しめちゃうシードルで胃の調子を整えたら、料理予約時間の18:00に。
いざ食事へ。
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キッチンではシェフのご主人が調理中。
席で眺めながら待つ時間がたまらない。食材はオリーブオイル等の一部の食材を除いて、全て群馬で統一。
こだわりが凄くてこちらもワクワクしちゃいますね。
地元のシードル、日本酒だけでなく大量のワインも揃えてます。レストラン入って左手サイドにはお酒用のガラス張り冷蔵庫があって瓶がズラーッと並んでました(写真はない)
お酒は奥さまが担当をされています。
ワインは勿論合うのでしょうが、ここはやはり土田酒造のお隣のレストランなので日本酒でディナーを楽しんでいきます。
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もうお肉の大きさに大興奮。
脂もしっかりのっていて調理後の妄想が膨らむ。
ご主人「通常は800gくらいの提供になるのですが、どれくらい食べれそうですか?」
え?ステーキって普通食べれても200gとか300gじゃないかい?でも通常って言ってるしなぁ…と私の頭は大混乱。ここはご主人の案にそのままのっかる。
私&夫「800gでお願いします」
ご主人「骨をたつ時の音がなかなか大きいので驚かせてしまうかもしれませんが、ご了承ください」
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あと、ここガスがないそうな。
薪料理と言って薪の炎で調理をしているそう。
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さて、メインのお肉を待っている間にお通し登場。
【1】
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最初に頼んだポワレが残っていたので一緒にいただきます。まずはグリンピース、こちらは地元の農家さんから頂いたものを塩ゆでにしてスプーンに。口いっぱいに広がる青々しさと穀物感、そして最後に苦味。
畑のスープは色んな地元野菜をミックスして作ったスープ。玉ねぎの辛さ、ハーブのスパイス感、じゃがいもの甘味など色んな野菜の魅力がたっぷり詰まったスープでした。
次からシードル→日本酒に切り替えます。奥さまのお酒セレクトにドキドキです。
【2】
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土田酒造でも低アルコールに仕上げているTsuchida craft 12はヨーグルトのような酸味にハチミツのような甘味がフワッと香る。
セリのパンナコッタは山菜がたくさん散りばめられている。
コシアブラはパリッパリに油で揚げて、山ウドは焼いてピーナッツを絡めて。
ワラビはピクルスで酸味でビシッと、ラディッシュは甘酸っぱいゼリーで。
セリのパンナコッタでそれらを絡めてお酒と一緒に。フレッシュな旨味とお酒の優しい甘味が最高に合う。
【3】
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Tsuchida F はもともと造っている途中で乳酸菌が増えてしまった失敗作だったというお酒だそうな。
香りはふんわりとバター。飲むとシャープな酸味が流れ込んできてバター風味の白ワインみたい。
ラビオリの空豆は地元の品種、初姫と地元の酪農家が造ったリコッタチーズを中身に入れて空マメのソース、空マメ、薪で炙った紫カリフラワー、ドライトマトを散らしたもの。
バターの香りが同調してリコッタチーズとお酒の酸と交わり一体感を生み出す。
【4】
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水芭蕉と言えば、華やかな味わいに飲みやすく水のようにサラサラ飲めるいわゆるフルーティー系。
このお酒を出された時、ここはサラダのような品がくるのだろうと予想していた私。
運ばれてきた料理の説明を聞いて度肝を抜かれる。
え?もつ煮?
いや、フルーティーな香り系のお酒にもつ煮のようなコックリした料理なんて…合うの?!
騙されたと思って、恐る恐る頂きましたよ。笑
もつの脂と純米大吟醸のなめらかさが合う!
これは意外すぎた。
玉ねぎがしっかり薪で炙ってあって、濃い甘味が出る。それがまた酒の甘味とマッチング。ルバーブやケールの香りもフワッとあって、アクセントに白インゲン豆の穀物感が良い。
奥さま談、イタリアのトスカーナ地方のもつ煮込みはインゲン豆を入れるらしいですわ。
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ここでまた、1つパフォーマンス。
セリのシーザーサラダ風みたいな感じ…?
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お肉の付け合わせにどうぞ~と小皿に盛って頂きました。セリはレストランの庭の小川に食べきれないくらいワッシャワッシャ生えているそう。
新鮮で美味しい。
【5】
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きました、メインのお肉。
薪火で焼いた絶妙の焼き加減。ほのかに香る薪火の香りが素晴らしい。手前のソースは地元のブルーベリーを使ったソース。
奥は左から追加の塩。
アカシアの花のマスタード浸け、梅胡椒。
まずは塩でそのまま。
脂はしつこくなく、ある程度の固さがあって噛む度に肉の旨味が溢れ出てくる。
梅胡椒との相性もまた良かった。柚子胡椒は聞いたことがあるけれど、梅胡椒って?と疑問だったけれど酸味が利いていて美味い。
シン・ツチダの活性にごりは初めて。
単品で飲むとまるでピルクル。ちょっと甘味が強めだけれど、この甘味が肉と一緒になると肉の甘みと旨味を増強してくれる。メインにふさわしい一品。
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初っぱなで「800gが通常」と言われていた謎がここで解けました。
お肉のおかわりです!と運ばれてきたこちらの皿。
えっと…この後にパスタとデザートくるんだよな…と思っていたら「無理しなくて大丈夫ですからね!余った分は真空パックでお持ち帰りも出来ますので」と奥さま。
なんて、優しい心遣い。
お言葉に甘えさせて頂いて、おかわりはお持ち帰りにさせて頂きました。
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〆のパスタを頂く前に日本酒のみで一服。
この誉国光は地元の定番酒で飲み飽きないような造りになっているとか。
勝手な解釈ですが、純米酒って飲んだ後に喉の奥がこもるような感覚があるのですが、このお酒は全くそういうのがないですね。
アルコール添加してあるお酒ですって出されても分からないと思う。こんなお酒が SAKE DIPLOMAの二次試験に出されたら泣くなぁと思いながら飲みました(なんじゃそりゃ)
お酒の担当をされている奥さまと少しだけお話させて頂きました。
私「このお料理のコースはお酒に合わせて料理を作ってるのですが?それとも料理に合わせてお酒を合わせてるのですか」
奥さま「料理の軸ありきでお酒は最後に考えます。群馬の食材という縛りがあるので食材がコロコロすぐに入れ替わってしまうんですよ」
私「というのは」
奥さま「例えば今日ご用意したソラマメの初姫はもう来週には旬が終わってしまいます。逆に新しい食材も次々と入ってくるのでメニューの回転が速いですね。なので食材に合わせて料理を考えるので、合わせるお酒の優先順位は本当に最後です。組み合わせに関してはシェフにも味をみてもらっています」
私「お酒は土田酒造さんがお隣ということもあってその中で組み合わせているのですね」
奥さま「このお店をやることになって土田酒造さんのお酒を飲み始めたのはここ2年くらいです。イタリアン料理はワインみたいに酸味があるお酒が合うのですが、土田酒造さんのお酒はワインみたいな酸味もキチッとありながら旨味も兼ね揃えています。とてもイタリアンに合います」
私もイタリアンは好きで1人でフラッと近場へ食べに行くことがあるのですが、やっぱりあるのはビール、ワイン、ハイボール。
日本酒があったら良いのになぁと、いつも思う。
持ち帰りという手段はありますが、お店のあの雰囲気で食べたいのにと。仕方なくその場でワインやビールを頼みます。ワインもビールも好きですが、日本酒で掛け合わせたい時もあります。
今回ここで日本酒×イタリアンを楽しめたのは貴重な経験と財産になると思う。
さて、いよいよ〆です。
【6】
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実は〆のパスタは事前にパスタの種類を見せて頂きこちらでセレクトしてお願いすることが出来ます。量もこちらに合わせてくれるので本当に有り難かった。
珍しいサイコロの形のニョッキとタリアテッレをセレクトしてパスタソースは各々お勧めのものにしました。
土田生酛は香りは穏やかだけれども、実は味が華やかなお酒。酸は程よくあって、これがトマトソースの酸味、甘味と絶妙に合わさります。しかも酒の旨味がうまくバランスをとってくれる。
ニョッキは弾力があって歯にまとわりつく印象があったのですが、このニョッキは白玉を柔らかくしたような固さでとても食べやすかった。
ニョッキってクリームソースを合わせることが多いからクリームソースも迷ったけれど、お勧めのトマトソースにして正解でしたね。
【7】
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まさかの、お燗…?!
ボロネーゼにお燗なんて初めてですぜ。
しかも片口に浮いてる緑の球体は山椒の実…?
Tsuchida 99は濃いけれどもしつこさがないお酒。
普通に何にもしなくても美味しいお酒であるが、これをお燗にしてさらに山椒とは。
お酒単体で飲むと甘旨いの後に何とも言えない山椒の痺れがピリピリきます。
ボロネーゼと合わせると最後のトーンにスパイスが加わってカレーのような味わいへ変貌。
この味の変化は面白い。
【8】
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デザートにも日本酒って合わせられますか?という私の要望にニコニコしながら「もう用意してあります」と2種類のお酒を持ってきてくださいました。
あんまりデザートと日本酒を掛け合わせてくれるお店ってなかなか無い(自身の体験談)
水芭蕉にデザート用のお酒なんてあったんだ?って驚いた。デザート酒なんて秋田の高清水が専用で造ってるのしか見たことがない。
土田の「K」は貴醸酒の「K」だそうです。
貴醸酒って名乗ればいいのになんで?と思いましたが、どうやら貴醸酒協会に入っていないと「貴醸酒」とは名乗れないそうです。造りは貴醸酒の工程で間違いないと。
夫はどちらも合うとは言っておりましたが、個人的には水芭蕉は山椒のジェラート、土田「K」 はプリンに凄く合いました。
ちなみにプリンの横に飾ってあるクリームは白インゲン豆のクリーム、ジェラートに刺さっているのは蓬のラスクだそう。
山椒のジェラートは単品でも爽やかで美味しいですが、水芭蕉と一緒に飲むことで山椒とベリーソースが混ざって最後に味が綺麗に伸びるんです。
これは癖になる。
プリンは土田「K」が加わることによってカラメルの香ばしさが増して口の中で濃厚さが留まる。ずーっと食べていたいこのループ。
料理のコースはこれで終了。
全てが美味しくて芸術的だった。
部屋に戻る時にシードル1本お願いしたらお酒強いですね、と驚かれました。笑
ご馳走さまでした。
さて、このnoteのタイトルにもなっている「日本酒はイタリアンと合うのか」のその答え。
ここまで読んで頂いた方は分かったかと思います。
日本酒とイタリアンは合います。
ただ日本酒の種類は選ばなくてはならないのかなと思いました。蔵によって造りも違うし土地の風土もあるだろうし。
群馬の地の食材をなるべく使った料理と組み合わせて土田酒造の良いところを最大限に引き出していたかと。
その土地の食材をその土地の酒で合わせるは最強のペアリングですものね。
にしても、こちらのお店はコロナあけ&インバウンドの影響も受けて予約がとれなくなりそうだと個人的に推察。2020年に訪問した佐賀の鍋島オーベルジュも今や大人気で予約がとれないと聞いているし。
ご主人の料理と奥さまの選ぶお酒が本当に最高で美味しかった。
家に帰ってきても余韻がバリバリ残るくらい素晴らしかった。VENTINOVEは機会をみて、また再訪したいと思います。
【おまけ】
朝ごはんはどうだったの?と気になっている方もいらっしゃると思いますので、チラッと写真をお見せ。
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左から時計回りにご主人のお母さんが漬けたお漬け物たち、ポークソテー、菜の花とインゲン豆の炊いたん。
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デザートのソースは私は梅をセレクトしましたが、他に苺、ブルーベリー、杏がありました。季節で変えてるのかな。
朝ごはんもお酒で疲れた体を元気にしてくれるようなものばかりで嬉しかった。いや、二日酔いにはなってないですけれど。笑
シンプルにもち米のお粥がとても美味しかったです。
写真はないけれど、おかわりして温泉玉子で2杯目を頂きました(よく食うね)
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是非、群馬の川場温泉に行く予定を立てるのであればVENTINOVEへの1泊もご考慮ください。
美味しくて素晴らしい群馬の食のパフォーマンスを記憶に刻めると思います。その時は土田酒造にも寄りましょう。
長い文章、読んで頂きありがとうございました。