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Ⅶ. 関数の計算②と連続【基礎微積分学:大学数学】
1. 複雑な有利関数の極限の計算
1.1. 分母 → 0 or ∞ な有利関数の極限
さて、前回の記事で簡単な極限の計算ができるようになったところで、
もっと複雑な関数が計算できるようになっていこう。
まずは$${\displaystyle\frac{(定数)}0}$$、そして$${\displaystyle\frac{(定数)}\infty}$$のケースだ。
単刀直入に言おう。
・定数$${c>0}$$に対して$${\displaystyle\lim_{x\to0^+}\frac {\,c\,}x=\infty}$$、$${\displaystyle\lim_{x\to0^-}\frac {\,c\,}x=-\,\infty}$$
(⇔ 分子が定数で分母に$${0^\pm}$$が来ると正か負の無限大に発散する)
[$${\displaystyle\lim_{x\to a^+}x=a^+}$$、$${\displaystyle\lim_{x\to a^-}x=a^-}$$]
・定数$${c\in\mathbb{R}}$$に対して$${\displaystyle\lim_{x\to\pm\infty}\frac{\,c\,}x=0}$$
(⇔ 分子が定数で分母に正負の無限大が来ると$${0}$$に収束する)
さて、ね。まぁグラフを見てもわかると思う。
最初のグラフが$${\displaystyle\lim_{x\to0}\frac{\,1\,}{x^2}}$$と$${\displaystyle\lim_{x\to0}\frac{\,1\,}{-\,x^2}}$$で、
次のグラフが$${\displaystyle\lim_{x\to\pm\infty}\frac{\,1\,}{x}}$$。
グラフィングソフトに頼りながら確かめてみてほしい。
前回の記事でも記載した通り、$${\displaystyle\lim_{x\to0}\frac{1}{x^{2n-1}}\;\;(n\in\mathbb{N})}$$は定義されない。左右が違うからね。
1.2. 分子&分母 → 0 な有利関数の極限
さて、こちらは少し特殊な場合で、有理関数の極限で直接代入法を使おうとしたら$${\displaystyle\frac{\,0\,}0}$$になっちゃった場合だ。
このような場合は次のような手順で解決していく。
例題として$${\displaystyle\lim_{x\to2}\frac{x^3+7x^2-4x-28}{x^2-x-6}}$$を計算してみよう。
① まず分子&分母がそれぞれ因数分解ができるかためそう。
ex) $${\displaystyle\lim_{x\to-2}\frac{x^3+7x^2-4x-28}{x^2-x-6}=\lim_{x\to-2}\frac{(x+2)(x-2)(x+7)}{(x+2)(x-3)}}$$
② できたのなら、分子&分母に共通する「極限で0になる因数」を探そう。
ここでは「0因子」と呼ぶよ。
ex) $${\displaystyle\lim_{x\to-2}\frac{(\textbf{\textit{x\,}}\mathbf{+\,2})(x-2)(x+7)}{(\textbf{\textit{x\,}}\mathbf{+\,2})(x-3)}}$$
③ 極限はその値そのものではない、ということを利用して約分してしまおう。
ex) $${\displaystyle\lim_{x\to-2}\frac{\cancel{(x+2)}(x-2)(x+7)}{\cancel{(x+2)}(x-3)}=\lim_{x\to-2}\frac{(x-2)(x+7)}{x-3}}$$
④ 0因子がないのを確認したら、代入して終わり。
ex) $${\displaystyle\lim_{x\to-2}\frac{(x-2)(x+7)}{x-3}=\frac{(-2-2)(-2+7)}{-2-3}=\mathbf{4}\;\;\blacksquare}$$
ここでもし約分ができない場合、「微分」を学んだあとに使えるテクニックで解くことができる[ロピタルの定理(L'Hospital’s Rule)]。つまり、今はあんまり解けない。そんな問題はまだ範囲外なので、置いとこう。
次は$${0}$$とはまた違うケースだ。
1.3. 分子&分母 → ±∞ な有利関数の極限
さて、$${0}$$でないなら$${\infty}$$だ。$${\displaystyle\frac{\pm\,\infty}{\pm\,\infty}}$$(複号任意)を計算しよう。
こちらは$${0}$$のときよりは頭を使わなくても解ける。
例として$${\displaystyle\lim_{x\to\infty}\frac{-4x^3+x-11}{2x^3+5x^2-7x+3}}$$を計算してみよう。
① 分子$${\longrightarrow\pm\,\infty}$$、分母$${\longrightarrow\pm\,\infty}$$が確認出来たら、
より次数の小さいほうの最高次数で分子・分母を割る。
ex) $${\displaystyle\lim_{x\to\infty}\frac{-\,4x^3+x-11}{2x^3+5x^2-7x+3}=\displaystyle\lim_{x\to\infty}\frac{\displaystyle-\,4+\frac1{x^2}-\frac{11}{x^3}}{\displaystyle2+\frac5{\,x\,}-\frac7{x^2}+\frac3{x^3}}}$$
② $${\displaystyle\frac{c}{\infty}=0}$$を使って極限を計算する。
ex) $${\displaystyle\lim_{x\to\infty}\frac{\displaystyle-\,4+\cancel{\frac1{x^2}}-\cancel{\frac{11}{x^3}}}{\displaystyle2+\cancel{\frac5{\,x\,}}-\cancel{\frac7{x^2}}+\cancel{\frac3{x^3}}}=\lim_{x\to\infty}\frac{\,-\,4\,}2=-2}$$
こちらは分子&分母が多項式であればどんな次数の式であろうが関係ないが、
どちらの次数が大きいかで結果が変わったりする。
多項式$${f}$$の次数を$${\dim(f)}$$とするとき、
最高次項の係数がそれぞれ$${a}$$、$${b}$$である多項式$${P(x)}$$、$${Q(x)}$$に対して
・$${\displaystyle\dim(P(x))<\dim(Q(x)) \Longrightarrow \lim_{x\to\infty}\frac{P(x)}{Q(x)}=\mathbf{0}}$$
・$${\displaystyle\dim(P(x))=\dim(Q(x)) \Longrightarrow \lim_{x\to\infty}\frac{P(x)}{Q(x)}=\frac{\,\textbf{\textit{a}}\,\,}{\textbf{\textit{b}}}}$$
・$${\displaystyle\dim(P(x))>\dim(Q(x)) \Longrightarrow \lim_{x\to\infty}\frac{P(x)}{Q(x)}=\pm\,\mathbf{\infty}}$$
(分子の最高次項の係数の正負による。正なら$${+\,\infty}$$、負なら$${-\,\infty}$$。)
2. 関数の連続性(Continuity of f.)
「連続」という単語は、まぁ日常生活でも出てこないわけではない単語なので、これを読んでいるみんなも馴染みはあるのじゃないだろうか。
「途切れることなく連ねて続いている」、という意味、と私は解釈している。
これは数学でも一緒。「関数が連続」ってどーゆーことなんやろね。
まぁ、それの前に、一個前々回の記事(Ⅴ)でちょろっと出てきた概念について見てみよう。
2.1. 関数の連続性
さて、今度こそ「関数の連続性」とはなんぞや、について見てみよう。
$${\displaystyle\lim_{x\to a}f(x)=f(a)}$$であるとき、関数$${f}$$は$${a}$$で連続である。
……あれ、すんごい短い。日本語にしてみたら
($${a}$$であるときの極限値)=($${a}$$であるときの関数値)
ということになる。
つまり
・$${a}$$での極限値が存在して
・$${a}$$での関数値も存在して
・極限値が関数値と一緒
という3拍子が揃うと$${a}$$で連続、ということになる。
なので、とある関数が連続ならその関数の極限値は直接代入法で求めてOK。
……しかし、「とある点で連続」って、なんかちょっとおかしくないか?
ということで、連続の範囲をちょいと広げてみ――……る前に、
範囲を広げるための概念をちょいと習得しておこう。
・$${\displaystyle\lim_{x\to a^+}f(x)=f(a)}$$のとき、関数$${f}$$は$${a}$$の右側で連続である。
・$${\displaystyle\lim_{x\to a^-}f(x)=f(a)}$$のとき、関数$${f}$$は$${a}$$の左側で連続である。
つまり、片側極限で定義された連続を「片側連続」というんだな、って。
ということで、これを使った「区間での連続」の定義を見てみよう。
閉区間$${A}$$に対して、関数$${f}$$が
全ての$${x\in A}$$で連続 / (もし存在するなら)終点の片側で連続*
この条件を全て満たすと、関数$${f}$$は区間$${A}$$で連続である。
(* $${[a,\;b]}$$なら$${a}$$での右側連続、$${b}$$での左側連続。)
これでようやく我々の知っている「連続」になった。
(普通実数全体で)連続する関数を連続関数と言うのだが、
連続関数はグラフで表しても連続、つまり途切れることなく続く。
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2.2. 関数の不連続
不連続はまぁ言葉の通り連続じゃない、というやつ。
前述した「連続の3拍子」の中で一つも満たしていなかったら不連続。
前回の記事で片側極限の説明をするときに例として挙げた$${y=\lfloor x\rfloor}$$も、
全ての$${x\in\mathbb{Z}}$$で不連続である。グラフ途切れてるし。
グラフが無限に突っ切っているとか($${\displaystyle\frac1{x^n}}$$とか)、
グラフに穴が開いているとか($${\displaystyle\frac{x^2-1}{x-1}}$$とか)、
そういう関数が不連続関数と言えるだろう。
2.3. 定義域で連続である関数
次は、定義域で連続である関数を見ていこう。
・多項関数($${\mathbb{R}}$$):$${a_0+a_1x+a_2x^2+\cdots+a_nx^n}$$
・三角関数:$${\sin x}$$、$${\cos x}$$、$${\tan x}$$、$${\sec x}$$、$${\csc x}$$、$${\cot x}$$
・逆三角関数:$${\sin^{-1}}$$、$${\cos^{-1}}$$、$${\tan^{-1}}$$、$${\sec^{-1}}$$、$${\csc^{-1}}$$、$${\cot^{-1}}$$
・有理関数($${\mathbb{R}-\{p\}}$$):$${\displaystyle y=\frac{a}{x-p}+q}$$
・無理関数($${[\,p,\;\infty)}$$/$${(-\infty,\;p]}$$):$${y=\sqrt{\:\!a(x-p)\:}+q}$$
・指数関数($${\mathbb{R}}$$):$${y=a^x}$$
・対数関数($${\mathbb{R}^+}$$):$${y=\log_ax}$$
これらは定義域でなら全部連続。△&△⁻¹は全部定義域が違うので入れなかった。
まぁ私らがよく計算に用いてる関数なら連続なんだな~って思ってもらえたら。