読書記録「ジソウのお仕事」
虐待による悲しい事件が起こるたびに「児相はなぜ、子どもを保護できなかったのか?」という批判がされるけど…
子どもを保護することや、保護した子どもをその先守っていくことが、いかに複雑で難しい問題なのかということが、とってもわかりやすく書かれている本。
・水道もガスも電気も止まった家で、何日も母親を待って、保護されてからも「保護されたくなかった。ずっとママを待っていたかった」と語る姉妹。
・父親から性的虐待をされていた女子中学生を保護したら、母親は「娘の顔を見たくもない」と出て行った。父親が引き取りを希望し、娘も父親の元に帰りたがったが帰せなかった。そのことで、児相の職員を恨み続ける少女。
・親から「もうこんな子、要りません。引き取ってください。」と言われ、連れて来られた子。
・「もう家には帰りたくないから、施設に入れてください。」と、自分からやって来た子。
・保護したものの、その問題行動のせいで施設も受け入れ拒否、学校も受け入れ拒否、どこにも行き場のない子。
・児相に保護されて施設に入ったけど、自分で逃げ出して家に帰ってしまった子。
第三者の大人からすれば「その親の元で生活し続けることは、その子のためにならないのでは…」と思われるような場合でも、
その家庭・その親しか知らない子どもたちが、みんな家を出たいと思っているか?保護を望んでいるか?と言ったら、そんなこともないというのが現実なのだと痛感させられます。。
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子どもが虐待によって命を落とすなんてニュースを見たら「児相はなぜ保護できなかったんだ」と批判したくなる気持ちは、よくわかるけど。。
でもそろそろ批判だけじゃなくて、じゃあどうしていったら良いのか?
どうすれば、社会全体で子どもたちを守っていけるのか?
そうした議論をしていかなければならないのではないか、と思います。
子どもを守るのは、児相だけの仕事じゃない。
本書の筆者は、児童相談所で10年以上働かれている児童福祉司さん。
テレビドラマのように、感動的でも、熱血でもないけれど、等身大の児相職員の方々の日常の姿を知ることができる一冊でした。