『したきりすずめ』 ひらがな むかしばなし
むかしむかし、 あるところに、 おじいさんと おばあさんが いました。
こころの やさしい おじいさんは、 1わの スズメを かっていました。
あるひ スズメが、 おばあさんがつくった ノリを、 ツンツンと、つついて たベてしまいました。
「この いたずらスズメ!」
おばあさんは おこって、 スズメを つかまえると、 ハサミで スズメの したを きってしまいました。
チュッ、 チュッ、 チュッ!
スズメは なきながら、 やぶの なかへ にげていきました。
まもなく、 おじいさんが かえってきましたが、 スズメの すがたが みえません。
「おばあさん、 わしの スズメは どこに いったかの?」
「フン! あの いたずらスズメ。 わたしの ノリを たべてしまったから、 したを ハサミで きってやったわ」
「なんと! ああ、 かわいそうに・・・」
こころの やさしい おじいさんは、 したをきられた スズメのことが しんぱいで なりません。
「だいじょうぶだろうか? ごはんは ちゃんとたべて いるだろうか? ・・・よし、 さがしに いこう」
おじいさんは、 スズメの にげた やぶに、 スズメを さがしに いきました。
「おーい、 おーい。 スズメや スズメ。 したきりスズメは、 どこにいる?」
すると、 やぶの かげから、 チュンチュンと、 スズメの なくこえが します。
「おじいさん、 ここですよ。 スズメのいえは ここですよ」
やぶの なかから、 スズメたちが おおぜい あらわれました。
みると、 したをきられた スズメも います。
「おおっ、 すまなかったな、 どれ、 したは だいじょうぶか? ・・・ああっ、 よかった。 これなら だいじょうだぶ」
スズメの したをみて、 おじいさんは ホッとしました。
「ありがとう、 おじいさん。 さあさあ、 わたしたちの いえで やすんでいってください」
スズメたちは、 みんなで おじいさんを スズメのいえへ つれていきました。
そして、 みんなで スズメおどりを したり、 おいしいごちそうを たくさんだして くれました。
おじいさんは、 もう おおよろこびです。
「それでは、 くらくならないうちに、 かえるとしよう。 スズメさんたち、 ありがとう」
おじいさんが、 おれいをいって かえろうとすると、 スズメたちは おおきなつづらと ちいさなつづらを もってきました。
「おじいさん、 おみやげに どちらでも すきなほうを もっていって くださいな」
スズメたちが、 いいました。
「ありがとう。 でも、 わたしは このとおり、 おじいさんだから、 あまり おおきな つづらは もつことが できない。 ちいさいほうを いただいていきましょう」
おじいさんは、 ちいさなつづらを おみやげに もらって、 せなかに せおって かえっていきました。
そして、 いえに かえって スズメの おみやげを あけてみると、 なんと なかには おおばんこばんが たくさん はいっていました。
ほうせきや サンゴなどの うつくしいたからものも、 ギッシリと つまっています。
スズメたちは、 やさしいおじいさんに、 みんなで おれいの おくりものを したのです。
「まあ、 まあ、 まあ、 なんて いいものを もらったんでしょう」
スズメの おみやげを みて、 おばあさんは うらやましくて なりません。
「どれ、 わたしも いって、 もらって こようかね」
おばあさんは、 スズメの いえへ でかけていきました。
そして、 スズメの いえに むりやり はいると、
「いいかい。 ごちそうも おどりも いらないよ。 すぐに かえるから、 はやく みやげを もってくるんだよ」
「はい、 では、 おおきいつづらと ちいさいつづら・・・」
「おおきいつづらに きまっているだろ!」
おばあさんは、 おおきいつづらを うけとると、 いそいで いえへ かえっていきました。
「しかし、 なんとも おもたい つづらだね。 でも、 それだけ おたからが たくさん はいっている しょうこだよ。 ウヒヒヒヒヒッ」
いえまで もうすこしでしたが、 つづらの なかに どんなものが はいっているのか、みたくて なりません。
「どれ、 なにが はいっているか、 みてみようかね」
おばあさんは、 みちばたで つづらを おろすと、 なかを あけてみました。
「きっと、 おおばん こばんが ザックザクだよ。 ・・・うん?・・・ヒェー!」
なんと、 つづらの なかには、 ムカデに ハチに ヘビ、 そして おそろしいかおの おばけたちが、たくさん はいっていたのです。
「たっ、 たすけておくれー!」
おばあさんは いちもくさんに、 いえへ にげかえりました。
そして、 おじいさんに このことを はなすと、
「おばあさん、 かわいいスズメの したを きったり、 よくばって おおきなつづらを もらったり したから、 バチが あたったのだよ。 これからは いきものを かわいがっておやり。 けっして、 よくばらないようにね」
おじいさんは、 おばあさんに そういいました。
おしまい