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産総研デザインスクールで、研究を社会へつなげるアプローチを学ぶー日産自動車総合研究所様インタビュー(前編)

日産自動車株式会社 総合研究所様:産総研デザインスクール2期生(2019年度)・竹本圭佑さん、4期生(2021年度)・岩崎裕一さん、5期生(2022年度)・前橋亮太さん、6期生(2023年度)・ゴンゴラ フロレス ダニエルさん、EVシステム研究所・上條元久さん、研究企画部・三浦宏明さん

産総研デザインスクールの修了生・現役生の活躍を紹介するnoteマガジン「​​AISTDSアンバサダー」。今回は産総研デザインスクール校長・小島が日産自動車総合研究所の皆さんと対談しました。今回は前編として、修了生の産総研デザインスクールでの学びや、本業との両立方法について伺います。

右から産総研デザインスクール校長・小島一浩
日産自動車株式会社 総合研究所 研究企画部 三浦宏明さん
日産自動車株式会社 R&D人事部 前橋亮太さん
日産自動車株式会社 総合研究所 EVシステム研究所 岩崎裕一さん
日産自動車株式会社 総合研究所 EVシステム研究所 竹本圭佑さん
日産自動車株式会社 総合研究所 モビリティ&AI研究所 ゴンゴラ フロレス ダニエルさん
日産自動車株式会社 総合研究所 EVシステム研究所 エキスパートリーダー  上條元久さん


産総研デザインスクールに求めたのは、研究の先にアプローチする力

小島:最初に、みなさんが産総研デザインスクールへ参加しようと思った理由を伺えますか?

竹本さん:私は普段EV関連の研究に取り組んでいますが、自分の研究の先があまりイメージできず、研究をどう社会へ実装していけばいいか悩んでいました。そのとき、上司から産総研デザインスクールのお話を伺い、ここなら社会実装をする方法が学べるのではないかと思い参加しました。

岩崎さん:私は電気自動車の研究をしています。電気自動車は今転換期を迎えつつあり、使い方に大きな変化が求められています。

一方で、社会は大きな変化を嫌う傾向があると思っており、電気自動車を普及させていくためには、これから起こりうる変化と社会のニーズ両方にアプローチすることが必要です。そのために、自分には何ができるのか産総研デザインスクールで考えたいと思いました。

前橋さん:私は研究所で材料に関する研究をしていましたが、新しい研究テーマ提案のためのプロセスを確立できていませんでした。産総研デザインスクールで新しいテーマを創出するノウハウを学び、自分のスキルアップに繋げたいと思い、参加を希望しました。

ダニエルさん:私はモビリティAIの研究者としてキャリアを積んできました。いずれは社会問題にポジティブな影響を与えることがしたいと思っています。

そのためには研究だけではなく、複数のステークホルダーを巻き込みながら、課題解決ができるスキルが必要だと考えています。産総研デザインスクールなら、自分が求めているスキルが身につくのではないかと思い、参加を決めました。

小島:みなさんが共通しているのは、ご自身の研究の先にアプローチしたいという想いだと思います。上條さんは受講生を派遣する立場にいらっしゃいますが、受講生に期待していることはありますか?

上條さん:私たちが所属する日産自動車総合研究所には「Compass」というミッションがあります。これは少し先のテーマを見つけ育てていく存在になるという意味です。

そのミッションを実現するために、研究所内では次の研究テーマを考えるアイデアクリエーション活動*があります。受講生のみなさんには、産総研デザインスクールでの学びを活かし、今までにはなかった提案やフィードバックができる人材になってもらいたいと思っています。

それが研究テーマを創出するプロセスに新しい風を吹き込み、研究所全体にもいい影響を与えていくのではないかと考えています。

※アイデアクリエーション活動
年間を通してどの研究員もが新しい研究テーマを提案できる活動。テーマ創出におけるチームは部署横断で編成することができ、新しいテーマを生み出す起点となっている。


受講中に自分の視点が大きく変化した瞬間

小島:みなさんは自分ができる範囲を広げることを目的に、産総研デザインスクールに参加されたかと思います。期間中にみなさんが印象的だったことはありますか?

竹本さん:私はアートシンキングとラピッドプロトタイプの授業が印象に残っています。アートシンキングの授業では、アート作品を見ながらプロジェクトのアイデアを発散していくプロセスがとても新鮮で、自分がやりたいことを見つけるための良いツールだと学びました。

またラピッドプロトタイプの授業では、完成度にこだわらずアイデアを形にして、フィードバックをもらうサイクルを回していきます。

社内では、数ヶ月かけてプロトタイプをつくることが一般的です。しかし授業を通して、簡単なプロトタイプでも効率的にフィードバックがもらえることを知り、プロトタイプに対する視点が大きく変化した授業でした。

そのマインドは今でも大切にしていて、社内でもはやくプロトタイプを見せて、フィードバックをもらうよう心がけています。

岩崎さん:私はクリエイティブリーダーシップの授業での一場面が印象に残っています。この授業では人を巻き込む方法や、チームをリードしていくスキルを学びます。

授業のなかで、小島さんが「議論ではオープンクエスチョンが重要で、『なぜ』と聞くと人は適当に答えてしまう」と仰っていて。私も学会などで「なぜ?」と質問されると、長考しながらもそこまで考えていないなと気づきました。

だから小島さんの言葉が、コミュニケーションのスタンスが変化するきっかけだったと思います。今でもその言葉を心に留めて、相手と対話することを意識しています。

小島:私もいつも意識していることなので、印象残ってくれていて嬉しいです。前橋さんとダニエルさんはいかがですか?

前橋さん:産総研デザインスクールでは、「My will」という形で受講生が本当にやりたいことを話す場が何度もあります。受講生の発表を聞いているなかで、自分はこの人とやりたいなと明確に感じた瞬間がありました。自分にとってはそれがとても新鮮で、一緒にやりたいと思える人たちとプロジェクトチームを組むことができました。

仕事をしていると、その人の専攻や研究内容、今までのキャリアなどに目が向いてしまうことが多いと思います。しかし、自分が一緒にやりたいと思える人とプロジェクトチームを組めたことで、プロジェクトにも力を入れて取り組むことができました。

何ができるかではなく、どうしていきたいかという気持ちで共感することが、プロジェクトを進める上で大事だと学んだ瞬間でした。

ダニエルさん:私はアイデアのビジネスモデルを考えるサステナブルモデルデザインの授業が印象に残っています。

私は元々技術者なのでビジネスには全然関心がなかったし、自分には関係のないことだと思っていました。しかし授業を通して、アイデアを実現するためのパートナーや、継続して取り組むためのアクションを具体的に考えることができました。そして自分のやりたいこととビジネスは深くつながっていると気づいたんです。自分のビジネスに対する捉え方が大きく変化したので、とても印象に残っています。

小島:アイデアを発想し具体化していく方法や、プロジェクトを一緒に進めていくためのリーダーシップのヒントまで。本当に幅広く学びを吸収されていて、非常に興味深いです。


産総研デザインスクールの制度をフル活用しながら、学びを社内へ還元する

小島:産総研デザインスクールに参加したい方によく聞かれるのが、「どう本業を両立すればいいのか?」というご相談です。みなさんはどのように両立されましたか?

岩崎さん:産総研デザインスクールでは、学びを実践しプロジェクトをつくっていくプロジェクトチームと、学びを深めるためのラーニングチームが編成されます。本業の影響で授業に参加できなかったメンバーは、それぞれのチームで学びをシェアしてもらい、フォローアップしあっていたと思います。

また運営メンバーのみなさんに受講中の悩みを相談できる「メンタリング」という時間が月に1回用意されています。授業で腑に落ちなくても、メンタリングで消化しきれていない部分を質問できるので、学びを深めることはできたと思います。

竹本さん:産総研デザインスクールで学んでいたことは、仕事内容と非常に近しいものでした。なので受講中から実際に社内で学びを実践しながら、学ぶことと働くことを近づけていったと思います。

たとえば、産総研デザインスクールで学んだアートシンキングのプロセスを社内チームで実践しました。実際にアートを鑑賞して、アイデアを発想し、簡単なプロトタイプをつくる過程をチームメンバーに体験してもらったところ、とてもいい反応をもらえました。

小島:デザインスクールの制度をフル活用しつつ、学びを社内に積極的に還元されていたんですね。本業と学びを分けることなく、融合させていく考え方を持てると自然と両立できていくのかなと思いました。


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前編はここまでになります。後編では、受講生の変化や産総研デザインスクールでの学びの活用事例などを伺います。後編もお楽しみに!

▼後編はこちら


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