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ジーパン屋行路 〜その後


僕がジーパンを買いに尾道に行ってから1ヶ月が経った。

東京に戻ってきた僕は尾道デニム「PJ001」をしげしげと眺めていた。

元々この「PJ001」というジーンズは、尾道デニムプロジェクトの根幹となる、人に履いてもらってそれぞれの物語を持ったユーズドデニムを作り出す為のジーンズである。

だから作りにもそれが出ていて、腰回りや太もも辺りは働く人にも動きやすくゆとりのある、ふくらはぎはバタつかないように少しスッキリとしたシルエットになっている。

ジーンズに限らずだけれど、洋服はやはり自分の体に合ったものを着るのが一番その人を格好良く見せる。当たり前の事だけど、これだけ世の中に服や靴など身に付けている物が溢れているとつい忘れてしまう事も多い。

今回僕は尾道デニムショップで「PJ001」を購入を1サイズ(実際には36インチから次のサイズの38に)上げて太ももとふくらはぎに合わせて購入した。

だからウエストはぶかぶかだ。裾も上げないとかなり長い。残念ながが僕の足は短い。実に愉快だ。

東京に帰ってきてから本格的な夏となり、なかなか外で履く機会は無かったけれど室内で1ヶ月なるべく履いてどう体に合うかを考えた。

ジーンズは洗ったり皺が出来たりすると、割とサイズ感が変わる事も少なくない洋服だ。

尾道デニムの「PJ001」は防縮加工もされていて、店頭に並ぶ時には1ウオッシュされているので洗ったり乾かしてもサイズ感は変わりにくいのだけれども、それでも膝裏に皺が入ったりすると若干ではあるが足首や踝(くるぶし)の長さも変わってくるので裾上げにも多少は影響してくる。

そうやって体に合わせてから近所の高円寺にあるリペア屋に足を運んだ。
そこはジーンズの裾上げを指定すればチェーンステッチ仕上げで仕上げてくれる。

縫い方の違いでシングルステッチとチェーンステッチがある。
シングルステッチの方が安い場合が多く、しかも解けにくく丈夫である。
なのになぜチェーンステッチを選ぶのか…。

これがジーンズ好きの酔狂なところで、チェーンステッチの方が縮みが出てデニムにうねりが出て立体的になり、色落ちもそれに合わせて濃淡が出るのである。

セルビッジ(耳)と同じで、今では丈夫さや作り方を考えた時それが最良の製法ではないけれど、物として見た場合は手間のかかる古いやり方の方が魅力的に仕上がるのである。

「チェーンステッチとセルビッジ」

1週間程、高円寺のリペア屋に預け自分の体に合ったジーパンを履くとやはり気分も上がって自分の物になってくる感がさらに高まる。

今回はウエストをセンターで5cm詰めてもらい、丈詰を7cmやってもらった。は着心地は勿論シルエットもスッキリして良い感じになった。

「お直し後、ほぼほぼ違和感なく仕上がった」

靴でも服でもお気に入りのハズなのに「お直し」するという選択肢を知らずに寂しいお別れを直ぐにしてしまう人も多い。

靴でも洋服でも良い物、自分に合った物、気に入ってる物があれば直ぐに捨てるという選択肢をせずに直して使うという選択肢がある事を知って欲しいとも思う。なかなか自分に合った物を探すのも大変なのだから。

洋服なんかは数センチ直すだけで自分に合ってお洒落に見えたり、流行に合わない服でも少し手直しするだけでまた着れるようになる物も多い。靴も革靴なんかはブラシをかけて、靴底を直してやるだけで長く使える事も多い。

自分に合うお直し屋を探して、お直し屋を見つけたら色々相談にのってもらうのも楽しいだろう

今回、僕の場合も中々自分にジャストフィットというジーパンを見つけるのは難しかった。でもちょっと手直しする事で思い出も込みで最高の洋服の一つになった。お直し前提も含めるとかなり選択肢の幅が広がる。

さあジーパンはここからが楽しい。履き込む事で色んな表情を見せてくれるのである。そして履く度に、夏が来る度に尾道にジーパンを買いに行った事を思い出すだろう。

膝の裏に入った所謂「ハチノス」を見ると尾道水道を思い出させてくれる。

ジーパン屋行路…僕にとってそれはとても楽しく明るい道であった。

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