こんにちは!一人ハイカー、一人ワンダーフォーゲル部のaishiです。
今回も安田夏菜 (著)の小説
「6days 遭難者たち」のご紹介とこの作品を教科書にして自分ならどう行動するか?をライトハイカー目線で解説していく中編です。
前編はこちらからどうぞ。
解説
登り返して戻る判断をした美玖は偉いですね。
ただ大分闇雲に降りてきてしまいましたからここから登り返すのはかなり大変です。山に入る人はおわかりでしょうが、山ではちょっとした事で道を見失ったり、歩いて来た進行方向から見る景色と振り返った景色ではかなり見え方が違う事があります。なので慣れた方は定期的に迷いやすいところでは振り返って見える景色を目に焼き付けるという事をやります。
登山道のある道ですら見え方が違って道迷いする事があるんですから、登山道と現在地を見失ってから戻り返すのはかなり大変なのです。
解説 中低山や裾野の広い山は闇雲に歩き回ると目印を見失い、尾根を超えて他の尾根や他の山に迷い込んでよりドツボにハマる場合も多いですね。
焦って歩き回るとそれだけ体力を消耗したりパーティーが分裂してお互いを見失ってより困難な遭難になる事もあるので闇雲に歩き回るのは控えたいところですね。
解説 スマホの登山アプリをしっかり理解して使えていればこういう状況にはなっていませんでしたね。
ここで美玖がアナログなスマホ無しの方法を思い出そうとしていますが正直紙地図とコンパスを美玖達が持っていても厳しいんじゃ無いかな?と思います。
変にアナログ信仰がある人が少なくないですが、正直見通しのきかない中低山では目印を見つけるのも一苦労なんですよね。。紙地図やコンパスがあってもかなり難しいんです。だからこそスマホとGPS機能は山歩きの常識を変えてという事は言えます。使い方さえ理解していれば一瞬で現在地と戻るべき方向がわかりますからね。
まあ、方角を調べるだけならスマホのコンパスアプリ(iPhoneでは標準)で一発でわかるし、アナログ時計を持っていれば知識があればそれを使って方角を調べる事はできます。
美玖達は事前に地図を読み込んでいない、スマホの登山アプリを使えてない、予定に無いルートを通った、現在地を見失った、闇雲に歩いた…以上の理由で遭難しています。
これではデジタル、アナログ関係なくやるべき事ができていないので結果は変わらないでしょう。
解説 夏の中低山は木や藪が生い茂っていてなかなか見通しがきかないので目標物を2個以上見つけられる事は厳しいですね。
相当地図を読み込んでいて地形がわかり、目に入った山々と方角で現在地がわかる位ならここまで闇雲に動いたり道迷いはしないでしょうし。。
しかし道迷いの人は疲れてくるとどうしても「なんとかなるだろう」で降ってしまうんですよね。危ない精神状態に陥っています。
基本的には降っていくとさらに見通しの良い場所は無くなりますし、
大抵は沢にでてまわりが木々と岩に囲まれた谷へと陥ります。
そうなるとますます携帯電話の電波が届く確率は低くなってしまいます。
下手すると深い渓谷ではGPSの電波もロストしやすくなってしまいます。
解説 山の中は日が暮れるのが早いです。
低山だと場所にもよりますが夏なら16時30、冬なら15時30位で山の中だと暗くなった…と感じてしまう場合もあります。
暗くなってからの行動は危険を伴います。
山歩きの定石としては15:30を目処に下山していたいところです。
また道迷いや披露で動けなくなった場合は明るいうちに安全な場所を見つけてビバーク(野宿)する場所を決めておかなければなりません。暗くなってから適当なところで野宿すると滑落や水難、落石、熊などの獣の被害に合う確率が高くなってしまいます。
解説 尾根を下ると大抵沢にぶつかります。沢に降りると大変歩きにくいです。
沢には水で押し流されてきた岩や木がゴロゴロしています。また岩は水で濡れたり苔むしてて簡単に足を滑らせてしまいます。そうやってどんどん体力は削らて下手をすると怪我をします。また天候が崩れた時には落石や土砂崩れ鉄砲水に合う確率も高まります。
解説 ここからの描写は遭難者の心理を上手く描いていると思います。
不安にかられてそれを打ち消すように歩き回ってしまう。
そして体力を無駄に消耗してしまうんですよね。
そして即席パーティーだとリーダーの統率力が発揮できずにパーティー分解はよく聞く話です。まだ若い子達でしかも美玖を含めてほば山歩きの経験が無いと言っていい3人。
こうなってしまうのも無理はありません。
だからこそ正規登山道を外れて歩くような事は初心者はすべきではないですし、
バリエーションルートを歩く場合はそれなりのスキルと準備が必要になってきます。
解説 闇雲に降ってしまった3人。状況は悪くなるばかり。
ただしまだ陽があるうちにビバークできる場所を見つけられたのは良かったですね。雨風や木々のさざめき、虫、獣の影響は確実に人を疲労させ精神を蝕んでいきます。それだけ雨風がしのげる場所で暮らせるというのは有り難い事なんですよね。可能ならやはり何かあった時の為にツェルト(簡易テント)や保温の為のシュラフがあれば多少の野宿でも安心感が違います。
けれど気分は遠足の延長ですし中々そういった物を用意して山に入る人は少ないから中々責められないですね。
ただ自分は一人で山に入る事が多いので何かトラブルが起きても1週間位は動けなくなっても生きていられるような装備を持って入ります。
しかし装備を充実させれば重くなって行動に支障が出る場合もありますし、
何を持っていくか、持っていかないかのバランスはしっかり考える必要がありますね。グループ登山だと共有できる物は分担するのが良いでしょう。
またツェルトやテントなどもしっかり建てるには技術が要りますから購入したら何度も張る練習はした方が良いでしょう。
ツェルトは緊急時には張らずに頭から被って雨風避けにしたりもしますが。
自分はライペン(ARAI TENT) ビバークツェルト・ソロ をお守り代わりに持っていっています。まあこれはツェルトというよりはポンチョに近いのですがソロ山行ですし緊急時に保温や雨風凌げれば快適性は二の次、携帯性重視という考えです。
あと緊急を要する物はすぐに手の届くところに入れておいて何かあったらすぐに取り出しやすいようにしています。雨具なんかもそうですが「面倒くさい」が先行してしまうと使うタイミングを失って窮地に陥るなんて事があります。
なので「面倒くさい」を可能な限り排除して適切なタイミングで使えるようにしておきましょう。
マットもビバーク時に地面から熱を奪われたり、硬い場所で寝ると疲労するのであった方が良いですね。携帯重視なら座布団サイズの折りたたみマットを用意子ましょう。テント泊などならマットは必需品。基本は縦長なので慣れた人なら足元などクッションが要らない部分をカットして使ってたりもします。
カットした部分を座布団代わりに持ち歩いても良いですよ。
テント泊だとエアマットを使ってる人もいますしそこは好みです。
エアマットの方がコンパクトになるというメリットがあります。
エア漏れを気にする方もいますがちゃんとしたアウトドアブランドの物ならそこまえで破損など気にする必要は無いと思います。万が一穴が空いちゃってもダクトテープで補修すればいいし(笑)
ただし、高山などにいくと疲れてテント場に帰って来た時にマットを膨らませる必要がある、ただでさえ空気が薄いのにマットを膨らませて息も絶えだえになるという場合も。。
解説 最近は「正常性バイアス」という言葉が浸透して独り歩きしているようにも思います。
登山で遭難する場合にこの「正常性バイアス」が強く働いて美玖達のように遭難してしまう場合が多々あります。
しかし「正常性バイアス」に陥らないようにする事とパニックになる事は違います。ここを勘違いしていると闇雲に行動して更に状況を悪くします。
何か問題が起きたらまずは冷静に状況を確認する事。
山ではまず一旦休憩して行動食などあればしっかり食べる。
行動中の甘い物は疲れを癒やして頭の働きも良くしてくれるのでよいですね。
仲間がいれば状況を整理して今後の行動と対処法を考える事が大事です。
解説 ビバークする場合は身体が冷え切る前にできる限り持ってるもので着れるものはおれる物があれば全部着込みます。足が冷える場合はリュック(ザック)の中身を全部だして足を突っ込んでおくのも良いでしょう。
ゴミ袋があればそれも着たり巻いたりすれば身体を保温する事ができます。
夏といえど夜の山中は冷えますからどうにか低体温症にならないようにしたいところです。グループ山行なら身を寄せて抱き合って寝るのも良いでしょう。
解説 山に入る時ヘッドランプ、ヘッドライトは必需品と言われていますね。
最近は防災意識も高まっているので買っておくのも良いでしょう。
性能は昔に比べるとLEDライトになってから随分よくなって長持ちするようになり
電球が切れる球切れも無くなりました。(LEDの故障は勿論無いことはないですが随分長持ちになりました。)
電池の管理はしっかりしておきましょう。
明かりがあれば暗くなっても多少は行動ができますし、安心も得られます。
ヘッドライトの値段も明るさや機能、軽さなどにより様々です。
本格的に山歩きをするなら良いものを買った方が安心感も耐久性も使いやすさも違うので良いと思いますが、取り合えず日帰りハイクが殆どでお守り代わりに持っておきたいという方であればAmazonなんかで売っている2000~3000円位の物でも十分使えます。ただしザックに入れっぱなしにする事無く山へ行く時は内蔵バッテリーや乾電池の容量を確認して液漏れなどしていないかどうかや点灯する事をしっかり確認してから持っていきましょう。
山中でのトイレですが基本は垂れ流さないのが基本です。
特に富士山や高尾さんのような人が多く来る場所は皆が皆そこらじゅうで大小してしまうと悪臭がして環境も崩れてしまいます。素直にトイレを利用しましょう。
ただ排泄問題は時代で価値観も変わって来ていますが個人的にはあまり人が多くない場所なら小の方はしても仕方がない場面もあると思っています。
人があまり来ない山はトイレなどもありませんからね。
ここら辺はかなり個々により判断やNGのラインが異なるので結構メディアなんかは濁してしまいます。まあかなり難しい問題だからしょうがないのですが。
名だたる登山家だって割とあっちこっちでしてるんですよね。
ただやはりエベレストのような多くの登山家が押し寄せている山では排泄問題が起こり今では良識ある登山家は排泄物を持って降りているようですね。
そういう事もあってやはり線引は人が多い場所かどうか?がひとつのラインかなと思います。
勿論排泄のルールはありますよ。
1.登山道や登山道近くではしない。少し脇道に入ってする。
ただしトイレをしようとして滑落なんて事故のあるので気をつける事。
2.お尻を拭いた紙は持って帰りましょう。
3.環境に最大限配慮するなら携帯トイレを使うのが望ましい。
4.しょうがなく大をするなら穴を掘ってそこにする。
お尻を拭いた紙は持って帰る。
ポンチョや簡易ツェルトがあると排泄する時や生理用品の取り換えの時の目隠し代わりに使えるので便利です。
穴を掘る時は軽量のハンドスコップなどがあると便利です。
雪山で雪洞を掘る時なんかにも良いですね。
解説 ケーブル類は色んな端子の種類があるのでそこら辺にあるものを確認せずに持ってくると折角モバイルバッテリーが使えない!なんて事もありますね。
山にモバイルバッテリーは必携ですがケーブル類も確認しておきましょう。
しかし物によっては断線していたり安物だと発火したりする場合もあるので、できればケーブルもモバイルバッテリーもしっかりとしたメーカーの物を2本位は携帯しておきたいところ。
iPhoneなどのマグネット充電に対応している物ならケーブルが無くても充電できるのでそれも便利です。マグネット式の充電ならケーブルの端子が濡れて充電できなくなるというリスクも避けられます。
解説 低山ではバリエーションルートを歩いたり、正規登山道から外れると笹藪の海にぶつかる事が結構あります。
先が見えない不安、長袖長ズボンでないと藪が肌を傷つけてきます。
またマダニやマムシなどの毒蛇がいたりと危険がいっぱいです。
場所によっては熊と鉢合わせなんて事も。熊と出会う場合に一番危険なのは出会い頭で鉢合わせしてしまう事。見通しの利かない場所では熊鈴やラジオ、笛、大きな声でお喋りなど音を発して歩くのが良いでしょう。
そんな笹薮ですがしかし通らずにはいかない場合もあるのでその場合はなるべく肌の露出をさけて、足元が崩れたり崖になってないかの注意をし進んで行くしかありません。
可能なら夏でもドライな長袖を身に着けてグローブもあった方が良いでしょう。
また見通しが利かないのでパーティーがバラバラにならないようにも気をつけたいところ。
さて美玖達はどうなってしまうのか?
後編へ続きます。