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民泊と住宅価格の現状ーハワイの民泊と地域経済へのインパクト#3

 このシリーズでは、ハワイの住宅問題/家賃高騰問題に関して取組む団体、Hawaii Apple Seedによる、バケーションレンタルの家賃及び地域経済に関するレポート(2018年3月22日公開)を紹介している。
▶その1:民泊の増加は家賃上昇、地域経済の衰退を引き起こす?
▶その2:旅する楽園、住む地獄

ハワイにおけるVRUの現状

 それでは、ハワイにおけるVRUの現状をみていこう。
 ハワイのVRU数は、2015年から2017年の間に17,000件から23,000件と、過去2年で35%増加している。

 ハワイ全体で540,000ユニットある部屋数のうち、約24件に1件がVRUとなっている計算だという。地域による偏りもあり、カウアイのコロア地区では、2.5件に1件がVRUと集中している。これらのVRUのうち、少なくとも52%は州外の人によって所有されている。また、73%~93%のVRUは一棟貸しだという。

  ↑バケーションレンタルされている物件は、
  ・ハワイ全体の住宅では24件に1件
  
・カウアイ島においては、10件に1件
  ・ラハイナ(マウイ島)では、3件に1件 の割合である。

 ゲストが滞在している間、ホストは家を空ける必要があるため、これらの一棟貸し物件のオーナーは、物件で生活しているのではないだろうと想定される。また、これらのオーナーは、同時に複数のユニットを商業的なスタイルでVRUとして登録しているとも考えられる。ある調査によれば、20以上の貸出物件をホストしているオーナーの売上は、全体の売上の27%に登るともいう。

地域経済へのネガティブな影響とは

 サンフランシスコでは、VRUの増加が地元のじ家賃相場に対してネガティブな影響を与えているという。レンタル物件が市場から減ると、自ずから供給が減ることとなり、その価格は上昇する。その影響は、VRU一件あたり年間$300,000にも登ると計算されている。ロサンゼルスでは、本来レンタル用であるはずのユニットの1%がAirbnbに登録されており、家賃相場は7.4%の増加だと報告されている。ニューヨークでは、違法な8,000件のVRUユニットをAirbnbから取り除いた結果、市場にあるレンタル用物件の数が10%増加したという。

 確かに、VRUとして物件を貸し出したほうが、長期的には利益につながる。2015年のハワイコミュニティーサービス室の調査によれば、占有率が80%だった場合、平均的なAirbnbユニットは、長期レンタルの3.5倍の利益を生み出しているという。つまり、Airbnbユニットとして貸し出せば、通常1年で得られる利益と同等が、年間73日の貸出だけで得られてしまうこととなる。特定の人気の地域なら、その日数はさらに少なくてよいこととなる。

 本当は人を住まわせるための場所が、同じ利益を生み出すことができるからと言う理由で、稼働しなくなる。そして、そのせいで価格が上がっていく。空いている部屋はあるのに、人がそこに住むことができない、という循環が出来上がる。

↑Airbnbの物件は、長期レンタルと比較して平均で約3.5倍もの利益を生み出している。


 このような経済的なメリットからすると、物件がVRUになることは避けられない事態なのかもしれない。これらのオーナーは、これからも続くと考えられる不動産価格の上昇と、アメリカ国内で一番低い不動産税率の恩恵を受けている。これらの要素によって、ハワイは長期的に安心して投資でき、かつ多くのリターンを期待できる絶好の場所となってしまっている。それはすべて、住民の負担の上に成り立っているのである。

マウイの実例

 ここで州内一のVRUユニット数をもつマウイの実例をみてみよう。マウイでは、住宅ストックのおよそ13.6%、数にしておよそ9,000件がVRUになっている。そのうち、たったの223件だけが合法的なものであり、残りの8,777件は違法だ。マウイの住宅市場では、住宅が州外のオーナーに売られることが多く、コンドミニアムの約60%、52%の家が州外の人の手に渡っている。

 このような州外のオーナーのうち、66%が住宅をレンタルしていると報告されている。このうち16.7%の人々だけが、地域の住民のみへの貸出を行っているという。マウイが州内一のVRU率を持つわけである。

  ↑マウイの島外からの物件所有者が、物件を貸し出している先
  訪問者:55.6%
  島内居住者のみ:16.7%
  「知らない」:27.7%

 マウイでは、2006年から新規供給住宅の数が、世帯の増加数に遅れを取るようになってきた。2014年のレポートによると、2020年には、不足する住宅ユニット数は4,000に達するという。このうち70%は地域標準収入(AMI)の80%に満たない人々が必要としている。マウイの約1/4の人々が、すでに経済的に非常に苦しい状態となっており、これはハワイ州の中でも、最もその率が高くなっている。

 新しく住宅も建設されるものの、その多くは手に届かないような価格設定となっている。マウイ島は、ハワイ州内で最も適正価格住宅が足りない島といわれている。マウイにおける住宅販売価格の中央値は、2010年から2014年の間に24%の上昇となっている。

 では、どうすればこの状況はコントロールできるのだろうか。次の記事では、世界各地における規制の状況を紹介する。

>次の記事:各地の民泊規制状況

※使用したグラフはすべてレポート内より。
写真はマウイ島のラハイナ付近で撮った家と虹。


 

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石垣綾音@こみゅとば
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