「モバイル」に暮らすということ #4:小さな家はポートランドの家賃高騰危機を救うか?

小さな家はポートランドの家賃高騰危機を救うか?

 (記事:Can tiny homes beat Portland's affordability crisis?
 「全米で一番住みたいまち」ポートランドのお出ましである。まちづくりに興味のある人々の間ではもうすっかり説明もいらないくらい有名になったまちだ。ポートランドには、割とヒップでDIY的な精神をもった人びとが集まっている、と言われる。あまり知らない人は、ポートランド、まちづくり、などでググっていただきたいが、雰囲気は伝わるよう、私のお気に入りのムービーを紹介しておく。

ポートランドを舞台に(ネタに)したドラマ、Portlandiaより−The Dream of the 90s is alive in Portland:ポートランドには90年台の夢が生きている

 ということで、ポートランドが少し特殊な文化を持っていることがわかっただろうか。なにより、90年台の夢を持った人々が集まっているところなのだ。

 住みたい→人が集まってくる→需要が多い→価格が高くなる
という単純なサイクルで、そりゃ住宅価格も上がる。

タイニーハウスのつくる「コミュニティ」

 さて、前置きが長くなってしまった。最初の動画の内容に戻ろう。このタイニーハウスの「コミュニティ」は、3つのタイニーハウス、そして母屋からなり、8人の様々な人々が共同体として生活している。

 ポートランドでは近年の住宅価格高騰のため、タイニーハウスが増加している。海辺に停泊しているタイニーハウスのようすが動画にも出てくるが、これらの多くは違法である。そこで、この8人は、法律のグレーゾーンを利用してタイニーハウスのコミュニティを作った。

 小さい方の3つの家が設置されているのは、母屋に付随する庭、あるいはバックヤードだ。表向きは母屋の住人が地主だが、実際は8人で運営されている。それぞれが家賃を払い、庭の畑などを共有している。シェアハウスは家をシェアするが、ここでは土地がシェアされている。

 それぞれのタイニーハウスには、電気、インターネット及び水も通っている。これらは母屋から提供されている。食事もともにつくる、多世代のコミュニティが成立している。ただそれぞれの土地の割当があるだけではなく、実際にいっしょに生活を営んでいるのだ。

家賃の高騰と「Affordable:まかなえる」存在としてのタイニーハウス

 いくら家賃が高いからと言って、好きで住みやすい場所を離れることはない。ここでいかに安く暮らすことができるか。DIY精神あふれるポートランダーはそう考えたらしい。

 ポートランドの平均家賃はワンルームでも月12万円以上、その中で、このコミュニティのタイニーハウスなら、月の家賃は約3万円だ。その家はけっして質素なものではなく、豊かな生活を暮らすのに十分な設備が整っている。

 誰がどう作ったのか、それぞれの家を作る元手はなんだったのか。入れ物があって、人を後から集めたのか、それとも、「庭」があって、そこに「家」が集まってきたのか…。その経緯は気になるところであるが、後者であった場合、「うちの庭貸します」、「うちの庭空きが出ました」といったように、流動的なコミュニティのあり方ができてくるのかもしれない。(そして新しい、小規模なGated Community=ゲートで仕切られたコミュニティになる可能性もある。この話はまた後日。)

 タイニーハウスおよびこのようなコミュニティに対して、法律上はまだまだグレーである。しかし、タイニーハウスの増加、そしてそのクオリティの改善により、法律も少しずつ変わりつつあるようだ。ポートランドのタイニーハウスコミュニティはここだけではないようで、さらなる広がりを見せるだろうと思われる。

好きな場所で、安く住む。

 以上ポートランドのとあるタイニーハウスのコミュニティの例であった。小さな家を持ち、土地は所有しない(シェアする)という形態は、タイニーハウスが土地に固定されない状態であるから、建築物としてみなされず、法律のグレーゾーンにとどまっていられるのだろう。おそらく、固定資産税などからも逃れることができているはずだ。(もちろん母屋にかかる費用は住民で負担していると思われる。)

 この例では、小さく安価な家をもつこと、そして「庭」というサンクチュアリに居候することで、住まいにかかる費用を抑えるという、ちょっとずる賢いやり方があることが学べる。おそらく、法律の整備やこのようなコミュニティの増加によって自体は変化することだろうと思われるが、ポートランド自体の住宅(価格)政策が落ち着かない限りは、黙認され続けられるような気もする。住む場所自体が本当に選べるかはとにかく、現時点ではとりあえずの対応策として機能しているように見える。

 次の記事では、一転して、小さいが豪華な家を建てることで、ミニマムかつエコなコミュニティを作った、ネバダのリノの例を紹介しようと思う。

>次の記事:リノのスプロールへの大型解決策は「小さい」こと

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