「モバイル」に暮らすということ #2:文化的・制度的な前提

文化的・制度的な前提について

 本題に入る前に、簡単に前提事項を整理しておく。前提とかいいよ、という人は、次の記事に進んでもいいけれど、文化的な差もあるので、できれば読んでいてほしい。

Tiny House Movementとは

 Curbedの特集記事に紹介されているのは、アメリカで数年前から流行りだしたTiny House Movementについてである。2010年前後から本格的に動き出し、そういえば、まだ続いてるの?という時期にきている。(CurbedによるTiny House Movement のこれまでの経緯まとめ記事

 記事内で紹介されている例は以下のようなものである。
・デトロイトの新しいスターター・ホーム(デトロイト、ミシガン)
・タイニーホームはポートランドの家賃高騰危機を救えるか?(ポートランド、オレゴン)
・リノのスプロールへの大型解決策は「小さい」こと(リノ、ネバダ)
・Airstream(レンタルトレイラー)でラスベガスにコミュニティをつくる(ラスベガス、ネバダ)
今回はこの内上の3つを紹介したい。

前提

 Tiny House Movementとは、ざっくり「小さな家でミニマムな暮らしをしよう」というムーブメントである。モバイルハウスとの親和性もあり、その中には移動できるようにタイヤがついた家もある。元々は家賃が高い・地代が高いという理由と、2009年の住宅危機(サブプライムローン問題)があったことから、安価で簡易な家を作り、好きなところに住みたいという志向がでてきたようである。(+より環境に優しいすまいを、という理由もあるらしい)。ハリケーン・カトリーナの被害の後に、仮設住宅として建設された例もある。誰かのバックヤードに短期的に置かせてもらうことが前提であり、非常にミニマムな例では、シャワーなどはお世話になっている本家のものを借りる、という例も見たことがある。

 Wikipedia 特集記事の中で紹介されている例は、どれもアメリカの例である。先にアメリカにおける住宅についての認識について少し前提を説明する。
①一ヶ月に支払う適切な家賃の割合は、世帯月収の30%とされている
②家を持つことはステータスであり、「アメリカン・ドリーム」の1つである。
アメリカの典型的な家は247㎡程度。対してTiny Houseは93㎡以下。

①一ヶ月に払う適切な家賃の割合は、アメリカ合衆国住宅都市開発省で定義されているものである。この水準の家賃は、Affordable(=入手可能な)と呼ばれる。この水準に家賃を設定している住宅は、Affordable Housingと呼ばれる。
②これはアメリカに行って結構驚いたことであるが、人生の最終目標のひとつとして、家を持つことがかなり重要視されている。Curbedのムービーの中にも、「American Dream」という単語が何度か聞き取れると思う。
③247㎡は畳にすれば約150畳分、93㎡は、56枚分。6畳で約10㎡なので、平均的な家は6畳の部屋が15部屋、Tiny Houseは5部屋というところか。私はこれでも大きい気はしている。しかし、とりあえずアメリカ基準ということで理解しておこう。

 この他にも細々とした文化の差、制度の差が出てくるが、それらについては記事を紹介しつつ説明していきたい。

>次の記事:デトロイトの新しいスターター・ホーム

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