小説家チャレンジ12日目。
1月26日は、母の命日です。
今年に入ってすぐ、この日に実家に花を送ろうかずっと考えていた。去年からコロナ休職中なのもあって、カナダからお花を注文するふんぎりが、とうとうつかなかった。
けさ起きたとき「きょう母のためにお花を買ってきて、家に飾ればいい。いまは立派なお花を仏前に贈るよゆうがない。ムリせずカナダで私にできることをしよう」ときめた。
うす曇りの午後、完全防寒して近所のスーパーに行こうと玄関をでた瞬間、空からなにやらキラキラふってきた。零下15度で大気中の水分が結晶になり、その一つひとつが光を反射しながら、澄みわたった空気のなかを、銀粉のように舞っている。ダイヤモンドダストだ。
店の自動ドアを入ると、エントランスの正面に色とりどりの、大小さまざまな花束が並んでいる。その中でひときわ鮮やかな黄色が目に入った。
日本でもいちばん寒いこの季節に、母がよく仏前にお供えしていた水仙。冬の朝、庭の一角に咲いた花を切っている、使いこまれて丸みをおびた鉄の花鋏を思いだした。外気にふれると一瞬で凍ってしまうので、花をセロハンで二重に包んでから駐車場にむかった。
暗くなった近所の道路を、ひとりで運転する。
家の前に車をつけてエンジンをきった、さいごにヘッドライトを消したとたん、思わず「おかあさん、おかあさん、お母さぁ〜ん!!」と叫んでしまった。8年前のこの日、私が成田に着いたとき母はすでに亡くなっていた。
花を片手に車をおりるとき、しぜんに涙がポロポロと雪の上におちた。玄関でコートをぬぎ、台所にあった、ザラザラの湯のみに水をいれて水仙をさす。母が毎年わざわざもらいに行って、カナダに送ってきてくれた「新年の指針」を思いだした。
いいなと思ったら応援しよう!
人生どん底だけど、夢にむかって歩きつづけます。読んでくださってありがとう✨