
主人公になれる習慣【#創作エッセイ #わたしの習慣】
頭の中で、毎日これを続けようと考えているうちは、それはまだ習慣とは呼べない。
無意識のうちに続けていることを習慣と呼べる。と私は考えてる。
改めて振り返ってみると、いつの間にかあの行動が習慣になっていたかなあと思うことがほとんどない。もちろんお風呂に入ったり歯を磨いたりするのは幼いころからの教育を受けて続けてはいるが、意識して習慣づけようとしたものではから、人に話すような習慣にはならない。
朝の運動や寝る前の読書など、習慣づけようとしたことはあった。しかし様々な理由で続かなかった。意志が弱いと言われれば、そうなのかもしれない。
そんな私が今でも続けている習慣の中で、続けて良かったことと言えば「顔を洗う」ことかなと感じている。
特に朝、起きたらすぐに顔を洗うようにしている。
顔の皮脂を洗い流すことに加え、寝ぼけ眼を起こす意図があり、いわゆる一石二鳥。完璧に目覚めるというわけではないが、洗わないときと比べるとすっきり感が違う。
顔を洗うときは、洗顔料を泡立て(最近は泡で出てくるものを使っている)顔全体に馴染ませる。あまりゴシゴシするのは良くないと耳にして以降は優しく洗うように心掛けていた。
水で洗い流したあとは、洗濯済みのタオルで拭き取り化粧水で整える。
毎日続けることは苦でないし、忙しい朝でも必ず行っていた。それが習慣ということなのだろう。
「顔を洗って出直してこい!」という台詞は、現実で口にしたことも耳にしたこともない。小説や映画などの中で出会うことがあるからこそ、認知している。
意味としては、「気持ちを改める」というのが一般的。何かで失敗して、そのときの気持ちをリセットするときに「顔を洗って出直す」という表現になる。
顔を洗うとき「水」を使うけれど、神社などを参拝するさいに水は「清める」の意味が込められるから、顔を洗う行為は清めることにも繋がるのかもしれない。
顔を清めてる感覚はないが、毎日昨日の自分をリセットしてその日を迎える。昨日できなかったことを今日する。自分が成長していくためには、昨日の自分を超えていく。そういった意識を持ったら、また毎日の洗顔も何か変わっていくのかもしれない。
「わたしの習慣」というテーマに沿っているかどうかはわからないが、以前務めていた会社の社員旅行に行った際、同部屋になった先輩の習慣に少し感心したことがある。
先輩は少し潔癖症なところがあり、滞在しているホテルのアメニティを使うことはなく全て持ち込んだ化粧品などを使っていた。
それに関しては特別驚くことはない。こだわりがあれば、自分の肌や髪質にあったものを使う方が良いことは私でも理解できる。
ただ、その先輩は朝起きたらシャワーを浴びていた。「家でも毎日浴びてるんですか?」と聞くと、先輩は少し自慢げに答えてくれた。
「シャワー浴びると目が覚めるんだよね。それに、なんだか脱皮した感じで、気分も良いし」
お気に入りのボディソープは、金木犀の香り。全身を包み込み、とても癒やされるそうだ。
朝からシャワーを浴びるのは、それなりに時間にゆとりが必要だ。私にはそこまでのゆとりがなかった。
その話を聞いてから、私も一度朝のシャワーを試して見たことがある。しかし、続かなかった。確かにさっぱりとするし目覚めも良い。ただそれなら洗顔でも事足りると感じた。
日々取り入れる習慣は人ぞれぞれだし、自分に合った習慣を取り入れるのが一番。朝のシャワーは私には合わなかっただけ。そう捉えるようにした。
それでも今も印象に残っているのは、その先輩が充実しているように見えたからだと思う。
それはシャワーを浴びた後の表情が、というわけではなく、その先輩の人生そのものが充実しているように見えたのだ。仕事でもプライベートでも不満というものを感じていないように見て取れた。それは端から見ての印象だから、上手く隠しているのかもしれない。それでも外に出さない(他人に悟られない)ようにできるのは、朝のシャワー効果も大いにあるのだろうと、今になって感じている。
ドラマのワンシーンでも、主人公の男性がシャワーを浴びて格好良くタオルを首に掛けているなんてシーンがあったりもするが、先輩も人生の主人公をしっかりと歩んでいるのだろう。
ちなみにその先輩は、一年後ぐらいに転職してしまった。理由は聞かなかったが、勝手にスキルアップの転職だと思っている。
きっと自分に自信を持って、毎日の習慣を語れるぐらいになれたら、私も自分の物語の主人公になれるのかもしれない。なんて。
今更だけど改めて、新しい習慣を探してみようかな。