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文色みち【ショートショート集】

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私が書いた約1000~2000文字前後のショートショート(掌編小説)をまとめておくマガジンです。
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#超ショートショート

夢物語り【#ショートショート】

夢を見た。 でも、どんな夢だったのか。まるで覚えていない。それでもなぜか“夢を見た”という事実だけは、はっきりと覚えているの。 この感覚を誰かに話しても、きっとわかってもらえないだろう。――他人の夢の話など、最もつまらないものなのだから。 ただ、わたしにはたった一人だけ、わたしが見た夢の話に耳を傾けてくれる人がいた。 ただ、笑ったり悲しんだりはしない。 「おもしろかった」って、一言ぐらい欲しいと願っても罰は当たらないはずよね。 夢のことを語る度に、わたしの心は重く

眼鏡【#ショートショート】

眼鏡をかけていると、よく言われるのが「頭よさそうだね」という言葉。 単純な発想で、学者や研究者に眼鏡をかけている人が多いからなのだろう。 しかし、眼鏡をかけているのは、ただ単に視力が弱いから。物をよく見たいから。 頭がいいように見せたいからではないのだ。 つまり人に見られることを意識してかけているのではなく、『人をよく見よう』としてかけている。 その根本的な違いに理解を示してくれない私の友人がある日、こういった。 「お前、眼鏡外した方がかわいいじゃん」 そう言っ