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言葉の”罠”と、言葉で”私”と出会い直すこと


私たちって言葉を使って世界を認識しますよね。

例えば、何かを食べた時に、体にドキュン!とする刺激のような何かが走った時に、ドキュン!を「美味しい」と言葉にした経験があると、その食べ物は「美味しい」となるし、食べ物、という表現自体も、口に入れて咀嚼して飲み込んで栄養になりそうなものを「食べ物」と言葉にすると決めているから、ドキュン!とする刺激のような何か、とは言わないわけです。(説明が長い……)

でも、人によっては、ドキュン!とする刺激のような何かは、必ずしも「美味しい」では表現できないかもしれなくて、もっと細かく表現しようとするなら、「体がドキュン!とする刺激」や、「口の中が別人になって体をびっくりさせる強烈なもの」みたいな言い方になるかもしれない。
でもそんな言い方してると長くなりすぎちゃうから、便宜上、自分以外の誰かとの共通認識として使いやすい言葉「美味しい」を使うことが増えます。

こういう使いやすい言葉って、他にもたくさんあります。
「可愛い」「かっこいい」「綺麗」といった形容詞とか、「美容」「ファッション」「マスコミ」「サービス業」といった名詞とか。
言葉を記号化して使いやすくすることって社会を効率的にまわすためには必要なことなんだと思います。”効率的に”まわすためには。(社会に対するイヤミをちらつかせるために二回繰り返してみました)
でも罠もあるわけです。今日はその罠についてのお話です。


以前、言語化のセッションで「自分の”好き”なことはあるのに、エネルギーが湧かない」という、ゆめこさん(仮名)に出会いました。

まず、「好き」だと思っていることを言語化してみたら、リストアップするほど出てきました。確かに、好きなことはある、と。

今度は、「エネルギーが湧く」というのがどんな状態かを言語化してみました。すると、その方にとっては「ワクワクして時間を忘れてしまう状態」であることがわかりました。じゃあ、ワクワクして時間を忘れてしまう状態が、どんな時に起きているかを思い出してみよう!ということで言語化してみたら、こちらもたくさん出てくる。盛り上がりました。ワクワクしたことって思い出すだけでもエネルギーが満ちてくるんですよね。

この時点で、エネルギーが湧かないことを不安に思っていらしたゆめこさんは、エネルギーが湧く自分を思い出し安心されていたのですが、気になる点が一つありました。
「エネルギーが湧く状態」でリストアップしたことに、「好きなこと」でリストアップしたことが一切入っていなかったんです。
つまり、
「好きなこと」=「エネルギーが湧く状態」
になっていない。

これってすごく興味深いことで、「好き」という言葉は「かわいい」に匹敵するくらい、いろんなニュアンスを網羅しやすい言葉ですが、エネルギーが湧く、はゆめこさんの中では別ものだったんです。(それくらいエネルギーが湧く状態がゆめこさんにとっては特別な感覚であるとも言えます)

それで、ゆめこさんにとっての「好き」を言語化してみたところ、ゆめこさんにとっての「好き」は「自分以外の誰かや多くの人が”好き”と言っているように感じるもの=流行っているもの」という定義が見えてきました。

つまり、ゆめこさんにとっては「好き」という言葉との繋がりは浅く、「エネルギーが湧く状態」という言葉の方が深く繋がっているのだけれども、一般的には「好きなことを仕事にする」とか「好きなことを大事に」とか、絶対安心100%肯定なパワフル「好き」が溢れているので、ゆめこさんは何とか自分と繋げようとした結果、自分の外側にある誰かの感覚=流行、に合わせた結果、自分がワクワクするエネルギーが湧く状態が置き去りになっていたわけです。

言葉にはそれぞれたくさんの定義があります。だからこそ、自分の定義を置き去りにして、誰かの言葉にのると、その定義に自分自身がのまれ、自分自身を言葉によって認識し間違えてしまうことがある。これが、私が話したかった”言葉の罠”です。

ゆめこさんの場合は、そもそも「好き」という言葉との繋がりが浅かったけれど、例えば「好き」という言葉一つとっても、言語化セッションをしていると、人によってその定義が大きく異なることを実体験として感じます。

「好き」の定義が、ある人にとっては「時間を忘れて夢中になってしまうこと」だったり、ある人にとっては「胸が苦しくなるくらい辛いことが多くても最後の一瞬だけ心が満たされること」だったり……定義はその人がどんな人生を歩んできたかを表します。


新しく何かを始めようとしている方が、例えば「私は美容が好きだけれど、もうやってる人がたくさんいるし…」と悩んでいるシーンに出くわすことがありますが、「美容が好き」という言葉なんて、記号化された言葉同士の掛け合わせなので、そりゃたくさんいるわけです。

でも、「美容」という言葉も、「好き」という言葉も、自分の定義を考えてみてほしい。どうして自分が美容に惹かれるのか。なぜそれを好き、と言っているのか。そもそも、好き、がどういう状態なのか……
そんなことを言語化していくと、気づいた時には、そこに自分が歩んできた人生の足跡が刻まれているはずです。

聞き慣れた言葉ほど記号化されていると思ってください。
そういう言葉は使いやすいけれど、時にあなただけの個性を埋没させてしまう。言葉は自分と世界を結びつけるけれど、あなた自身を世界に溶かすこともします。
記号化された言葉に出会ったら、先に書いたように、その定義を言語化してみてください。語彙力はあまり関係ありません。なぜならあなたが体験してきたことを書けばいいからです。


言葉の罠に囚われず、あなたという人が言葉であなた自身と出会い直すことができますように。
そしてあなたの世界を作れますように!


#残り半年













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