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楽園

鯨、楽になりなさい。
海は広い。だがお前には少し狭いだろう。
いつも体を縮こめて、窮屈ではないのか。
欠伸もできない生活は、さぞ辛いだろう。
海より広い場所があると思うか。
俺はあると思う。
お前がのびのび暮らせる楽園が、
きっとあると信じている。

鯨、森を知ってるか。
木という植物がたくさん生えている場所だ。
だがお前は残念ながらそこに辿り着けない。
なぜならお前より大きい森はないからだ。
森は広く大きいが、お前ほどではないのだ。
お前は大きくなりすぎた。
もう少し小さく生まれたかったって?
何を言うんだ。
泣くんじゃない。お前は強いじゃないか。
自分より小さい者に優しくできるじゃないか。
だから泣くな。
......
海は、お前の泪でできたのかもしれないな。

鯨、どこへ行く。
海を出るって?
当てはあるのか?
おい、鯨よ。
......
......
......


鯨が戻ってくることはなかった。
海は出られただろうか。
海は広い。あいつにとっては小さいと思って
いたが、想像より海は果てしない。
あいつは海を出ても生きていけるだろうか。
俺がいなくて寂しくないだろうか。
またどこかで1人で泣いてないだろうか。
鯨、
鯨よ、
大きく美しい鯨よ、
寂しくなったらいつでも逢いに来い。
俺はずっと待つ。
だから泣くなよ。
鯨、頑張れよ。
......
......
......

鯨、楽園は、見つかったかい。

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