労働者災害補償保険法・社会復帰促進等事業

労働者災害補償保険法
第3章の2 社会復帰促進等事業
第29条
政府は、この保険の適用事業に係る労働者及びその遺族について、社会復帰促進等事業として、次の事業を行うことができる。
一 療養に関する施設及びリハビリテーションに関する施設の設置及び運営その他業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害を被った労働者(被災労働者)の円滑な社会復帰を促進するために必要な事業
二 被災労働者の療養生活の援護、被災労働者の受ける介護の援護、その遺族の就学の援護、被災労働者及びその遺族が必要とする資金の貸付けによる援護その他被災労働者及びその遺族の援護を図るために必要な事業(被災労働者等援護事業)
三 業務災害の防止に関する活動に対する援助、健康診断に関する施設の設置及び運営その他労働者の安全及び衛生の確保、保険給付の適切な実施の確保並びに賃金の支払の確保を図るために必要な事業(安全衛生確保等事業)
2.前項各号に掲げる事業の実施に関して必要な基準は、厚生労働省令で定める。
3.政府は、第1項の社会復帰促進等事業のうち、独立行政書士法人労働者健康安全機構法第12条第1項に掲げるものを独立行政法人健康安全機構に行わせるものとする。

・被災労働者援護事業として、特別支給金、労災就学援護費、労災就労保育援護費及び休業補償特別援護金等の支給が行われている。

・休業特別支給金は、休業(補償)等給付(休業(補償)等給付は、労働者が業務上の事由、複数事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による負傷又は疾病に係る療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第4日目から支給するもの。1日につき給付基礎日額の100分の60に相当する額)の支給の対象となる日について、その休業(補償)等給付を受ける者に対し、その申請に基づいて支給される。その額は、1日につき休業給付基礎日額の100分の20に相当する額。

・傷病特別支給金は、傷病(補償)等年金(業務上の事由、複数事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者が当該負傷又は疾病に係る療養の開始後1年6箇月を経過した日において治癒しておらず、障害の程度が傷害等級に該当するとき、その状態が継続している間、当該労働者に対して支給される。1級:給付基礎日額の311日分、2級277日分、3級245日分)の受給権者に対し、その申請に基づいて支給される一時金で、その額は1級で114万円、2級で107万円、3級で100万円。

・障害特別支給金は、障害(補償)等給付(労働者が業務上の事由、複数事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかり、治ったときに身体に障害等級に該当する障害が存する場合に、その障害等級に応じ、障害等年金又は障害等一時金として支給される。)の受給権者に対し、その申請に基づいて支給される一時金で、その額は次の通り。
1級・・・342万円
2級・・・320万円
3級・・・300万円
4級・・・264万円
5級・・・225万円
6級・・・192万円
7級・・・159万円
8級・・・65万円
9級・・・50万円
10級・・・39万円
11級・・・29万円
12級・・・20万円
13級・・・14万円
14級・・・8万円

・傷病特別支給金を受給した労働者の場合は、障害特別支給金の額がすでに受給した傷病特別支給金の額を超えるときに限り、その差額に相当する額が支給される。

・遺族特別支給金は、遺族(補償)等給付の受給権者に対し、その申請に基づいて支給される一時金で、その額は一律300万円。

特別給与を算定基礎とする特別支給金
・特別給与を算定基礎とする特別支給金の額の算定には、算定基礎日額が用いられるが、これは算定基礎年額を365で除すことによって算定される。
算定基礎年額は、原則として、負傷又は発病の日以前1年間(雇入後1年に満たない者については、雇入後の期間)に当該労働者に対して支払われた特別給与の総額をいうが、次の額のうちいずれか低い方の額が、その上限となる。
①給付基礎日額に365を乗じて得た額の20%相当額
②150万円

・特別支給金はすべて、所轄労働基準監督署長に申請することによって支給決定され、当該申請は原則として保険給付の請求と同時に行わなければならない。ただし、傷病特別支給金、傷病特別年金の申請は、傷病(補償)等年金が、請求によってではなく職権によって支給決定されるため、支給決定を受けた者については、申請があったものとして取り扱われる。

傷病特別年金
傷病特別年金は、傷病(補償)等年金の受給権者に対し、その申請に基づいて支給され、その年額は次の通り。
1級・・・1年につき算定基礎日額の313日分
2級・・・277日分
3級・・・245日分

障害特別年金
障害特別年金は、障害(補償)等年金の受給権者に対し、その申請に基づいて支給され、その年額は次の通り。(日数は障害(補償)等年金と同じ。)
1級・・・1年につき算定基礎日額の313日分
2級・・・277日分
3級・・・245日分
4級・・・213日分
5級・・・184日分
6級・・・156日分
7級・・・131日分

障害特別一時金
障害特別一時金は、障害(補償)等一時金の受給権者に対し、その申請に基づいて支給され、その額は次の通り。(日数は、障害(補償)等一時金と同じ)
8級・・・算定基礎日額の503日分
9級・・・391日分
10級・・・302日分
11級・・・233日分
12級・・・156日分
13級・・・101日分
14級・・・56日分

障害特別年金差額一時金
障害特別年金差額一時金は、障害(補償)等年金差額一時金の受給権者に対し、その申請に基づいて支給され、その額は、次表の額から当該受給権者の障害に関し支給された障害特別年金の額の合計額を差し引いた額になる。
1級・・・1340日分
2級・・・1190日分
3級・・・1050日分
4級・・・920日分
5級・・・790日分
6級・・・670日分
7級・・・560日分

遺族特別年金
遺族特別年金は、遺族(補償)等年金の受給権者に対し、その申請に基づいて支給され、その額は、受給権者及びその者と生計を同じくしている受給資格者(若年停止者を除く)の人数の区分に応じ、次の通り。
1人・・・1年につき算定基礎日額の153日分
※ただし、55歳以上の妻又は障害の状態にある妻にあっては、算定基礎日額の175日分
2人・・・201日分
3人・・・233日分
4人以上・・・245日分

遺族特別一時金
遺族特別一時金は、遺族(補償)等一時金の受給権者に対し、その申請に基づいて支給され、その額は次の通り。
・労働者の死亡の当時に遺族(補償)等年金の受給資格者がないとき・・・算定基礎日額の1000日分
・遺族(補償)等年金の受給権者の権利が消滅した場合において、他に当該遺族(補償)等年金の受給資格者がなく、かつ、当該労働者の死亡に関し支給された遺族特別年金の額の合計額が算定基礎日額の1000日分に満たないとき・・・算定基礎日額の1000日分からすでに支給された遺族特別年金の額を所定の方法により合計した額を控除した額

特別支給金の通則時効
1.スライド
・休業特別支給金については、その算定基礎が休業(補償)等給付と同じ休業給付基礎日額なので、休業(補償)等給付と同様のスライド改定が行われる。
・傷病特別支給金、障害特別支給金及び遺族特別支給金は、定額制なのでスライド制の適用はない。
・特別給与を算定基礎とする特別支給金は、年金たる保険給付と同様のスライド改定が行われる。

2.保険給付との相違点
・前払一時金給付を受給しても支給停止されない。
・費用徴収は行われない。したがって、不正受給しても国税徴収の例による処分の対象とならず、不当利得として民事上の返還手続きとなる。
・損害賠償との調整は行われない。
・社会保険との供給調整は行われない。
・譲渡、差し押さえ等の対象となる。(退職後の権利、公課の禁止は運用上保障)
・特別給与を算定基礎とする特別支給金の規定は、中小事業主等、一人親方等及び海外派遣者については、適用しない。
・不服申し立ての対象とならない。

申請期限
特別支給金の申請は、支給要件を満たすこととなった日の翌日から起算して5年以内(ただし、休業特別支給金は2年以内)に行わなければならない。

39.社会復帰促進等事業
・社会復帰促進等事業のうち特別支給金に関する事務は、都道府県労働局長の指揮監督を受けて、所轄労働基準監督署長が行う。

・休業特別支給金の額は、1日につき休業給付基礎(=原則として労働基準法の平均賃金に相当する額。事故が発生した日(賃金締切日が定められているときは、その直前の賃金締切日)の直前3ヶ月間にその労働者に対して支払われた金額の総額を、その期間の暦日数で割った1日当たりの賃金額のことで臨時的支払われた賃金、賞与など3カ月を超える期間ごとに支払われる賃金は含まれない)日額の100分の20に相当する額とされる。

・算定基礎日額とは、原則として、業務上又は通勤による負傷や死亡の原因である事故が発生した日又は診断によって病気にかかったことが確定した日以前1年間にその労働者が事業主から受けた特別給与の総額を算定基礎年額として365で割って得た額。特別給与(給付基礎日額の算定の基礎から除外されているボーナスなど3カ月を超える期間ごとに支払われる賃金)の総額が給付基礎年額(給付基礎日額の365倍に相当する額)の20%を上回る場合には、給付基礎日額20%に相当する額が算定基礎日額となり、150万円が限度額。

・加重障害に係る特別支給金の額は、現在の身体障害の該当する障害等級に応ずる障害特別支給金の額から、既にあった身体障害の該当する障害等級に応ずる障害特別支給金の額を差し引いた額。

・遺族特別支給金の額は、300万円(当該遺族特別支給金の支給を受ける遺族が2人以上ある場合には、300m年をその人数で除して得た額)

労働者災害補償保険法
第三章の二 社会復帰促進等事業
第二十九条
政府は、この保険の適用事業に係る労働者及びその遺族について、社会復帰促進等事業として、次の事業を行うことができる。
一 療養に関する施設及びリハビリテーションに関する施設の設置及び運営その他業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害を被った労働者(被災労働者)の円滑な社会復帰を促進するために必要な事業
二 被災労働者の療養生活の援護、被災労働者の受ける介護の援護、その遺族の就学の援護、被災労働者及びその遺族が必要とする資金の貸付けによる援護その他被災労働者及びその遺族の援護を図るために必要な事業
三 業務災害の防止に関する活動に対する援助、健康診断に関する施設の設置及び運営その他労働者の安全及び衛生の確保、保険給付の適切な実施の確保並びに賃金の支払の確保を図るために必要な事業
②前項各号に掲げる事業の実施に関して必要な基準は、厚生労働省令で定める。
③政府は、第一項の社会復帰促進等事業のうち、独立行政法人労働者健康安全機構法第12条第1項に掲げるものを独立行政法人労働者健康安全機構に行われるものとする。

労働者災害補償保険特別支給金支給規則
昭和49年12月28日
労働者災害補償保険法第50条(この法律の施行に関する細目は、厚生労働省令で、これを定める)の規定に基づき、労働者災害補償保険特別支給金支給規則を次のように定める。
第一条(趣旨)
この省令は、労働者災害補償保険法第29条第1項の社会復帰促進等事業として行う特別支給金の支給に関し必要な事項を定めるものとする。

第二条(特別支給金の種類)
この省令による特別支給金は、次に掲げるものとする。
一 休業特別支給金
二 障害特別支給金
三 遺族特別支給金
三の二 傷病特別支給金
四 障害特別年金
五 障害特別一時金
六 遺族特別年金
七 遺族特別一時金
八 傷病特別年金

40.社会復帰促進等事業
・休業特別支給金の支給の申請は、休業特別支給金の支給の対象となる日の翌日から起算して二年以内に行わなければならない。

・休業特別支給金の支給を受けようとする者は、当該休業特別支給金の支給の申請の際に、特別給与の総額を記載し、かつ、事業主の証明を受けた届書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

・政府が被災労働者に支給する特別支給金は、社会復帰促進等事業の一環として、被災労働者の療養生活の援護等によりその福祉の増進を図るために行われるものであり、被災労働者の受領した特別支給金を、使用者又は第三者が被災労働者に対し損害賠償すべき損害額から控除することはできないとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。

・特別支給金は、社会復帰促進等事業の一環として被災労働者等の福祉の増進を図るために行われるものであるが、譲渡、差押えについては、法令上禁止されていない。

・遺族補償年金前払一時金が支給されたため、遺族補償年金の支給が停止された場合であっても、遺族特別年金については支給は停止されない。

休業(補償)等給付は、労働者が業務又は通勤が原因となった負傷や疾病による療養のため労働することができず、そのために賃金を受けていないとき、その第4日目から休業補償給付(業務災害)、複数事業労働者休業給付(複数事業要因災害)、又は休業給付(通勤災害)が支給される。
単一事業労働者の場合は、休業補償給付、休業給付は給付基礎日額の60%×休業日数と、休業特別支給金として給付基礎日額の20%×休業日数
複数事業労働者の場合は、休業等給付が、複数就業先に係る給付基礎日額に相当する額を合算した額の60%×休業日数に、休業特別支給金として複数就業先に係る給付基礎日額に相当する額を合算した額の20%×休業日数

41.社会復帰促進等事業
政府は、労災保険の適用事業に係る労働者及びその遺族について、社会復帰促進等事業として次の事業を行うことができる。
1.被災労働者の円滑な社会復帰を促進するために必要な事業
2.被災労働者及びその遺族の援護を図るために必要な事業
3.労働者の安全及び衛生の確保、保険給付の適切な実施の確保並びに賃金の支払の確保を図るために必要な事業
なお、政府は当該社会復帰促進等事業のうち、独立行政法人労働者健康安全機構法に掲げるものを独立行政法人労働者健康安全機構に行わせるものとされている。

賃金の支払の確保等に関する法律(賃金支払確保法)
昭和51年5月27日
第一章 総則
第一条(目的)
この法律は、景気の変動、産業構造の変化その他の事情により企業経営が安定を欠くに至った場合及び労働者が事業を退職する場合における賃金の支払等の適正化を図るため、貯蓄金の保全措置及び事業活動に著しい支障を生じたことにより賃金の支払を受けることが困難となった労働者に対する保護措置その他賃金の支払の確保に関する措置を講じ、もって労働者の生活の安定に資することを目的とする。

第二条(定義)
この法律において「賃金」とは、労働基準法第11条に規定する賃金をいう。
2.この法律において「労働者」とは、労働基準法第9条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く)をいう。

第三章 未払賃金の立替払事業
第九条(労働者災害補償保険法との関係)
この章に規定する事業は、労働者災害補償保険法第29条第1項第3号に掲げる事業として行う。




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