厚生年金保険法
厚生年金保険法第1条
この法律は、労働者の老齢、障害又は死亡について保険給付を行い、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。
第2条
厚生年金保険は、政府が、管掌する。
厚生労働保険に加入するのは、70歳未満の労働者。医療保険で公務員など共済に加入している人や船員保険に加入している人も、年金保険では厚生年金保険に加入する。ただし、パート勤めやフリーターで労働時間が同じ職場で働く正社員の4分の3未満の人は、原則として厚生年金保険は適用されない。健康保険も同じ扱い。
ただし、週の労働時間20時間以上、月額賃金8.8万円以上、学生でない、従業員101人以上の企業に使用されるというすべての要件を満たすときは、厚生年金保険も健康保険も適用される。
保険給付の中心は、国民年金が支給する定額の基礎年金の上乗せとして支給する報酬比例の年金。
当然被保険者とは、本人の意思にかかわらず法律の規定により当然に被保険者となる者。適用事業所に使用される70歳未満の者は、使用される期間が短期の者など適用除外の規定に該当するものを除き、すべて当然被保険者となる。平成27年の被用者年金の一元化により、当然被保険者の種別は次のようになった。
第1号厚生年金被保険者:下記以外の厚生年金保険の被保険者(従来の厚生年金保険の被保険者、民間被用者等)
第2号厚生年金被保険者:国家公務員強制組合の組合員たる厚生年金保険の被保険者
第3号厚生年金被保険者:地方公務員共済組合の組合員たる厚生年金保険の被保険者
第4号厚生年金被保険者:私学教職員共済制度の加入者たる厚生年金保険の被保険者
適用事業所以外の事業所に使用される70歳未満の者で、事業者の同意を得て厚生労働大臣の認可を受けたものは任意単独被保険者となることができる。事業主は、適用事業所で当然被保険者を使用する事業主同様、任意単独被保険者の保険料の半額負担と全額の納付をする義務が生じる。
当然被保険者および任意単独被保険者は、いずれも70歳に達したときはその日に被保険者の資格を喪失するが、70歳に達したときに老齢厚生年金等の受給権を有しない者は、その受給権の取得を目的として、任意に被保険者となることができる。これを、高齢任意加入被保険者という。
厚生年金保険においても、保険料の額の計算や保険給付の学の決定に標準報酬を用いる。健康保険法と同じ方法だが、等級区分が第1級(88,000円)から第32級(650,000円)とされている点が異なる(健康保険では50等級に区分されている)。厚生年金保険法では、標準賞与額の上限額は賞与の支給1回につき150万円とされる。厚生年金保険法では、標準報酬月額の下限が健康保険よりも高く設定され、標準報酬月額の上限および標準賞与月額の上限が健康保険法よりも低く設定されている。これは、報酬の高低による格差があまり拡大しないように配慮されている。
保険料額の計算
標準報酬月額に係る保険料の額=標準報酬月額×保険料率
標準賞与額に係る保険料の額=標準賞与額×保険料率
※賞与支給月がある場合、上記2つの保険料をその翌月末日までに納付する。保険料率は原則1000分の183。
保険料は、原則として被保険者の資格を取得した月から被保険者の資格を喪失した月の前月までの各月について、その月の翌月末日までに納付する。保険料は事業主と被保険者がそぞれ半額ずつ負担。事業主がその全額を納付。高齢任意加入被保険者のうち、事業主の同意を得なかった者は、本人が保険料の全額を負担し納付。保険料の納付義務を負う事業主は、被保険者に通貨で支払う報酬から、被保険者の負担すべき前月分の保険料を控除することができる。健康保険料も同じ。
厚生年金保険の保険給付は、老齢、障害、死亡の3つの支給事由があり、それぞれ老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金という。一時金は、障害手当金のみ。国民年金と同様、短期在留外国人の保険料の掛け捨てに配慮した脱退一時金の制度がある。年金の支給期間および支払期月は、国民年金と共通。