厚生年金保険法・離婚時における標準報酬の分割

☆離婚時の年金分割の制度
☆合意分割と3号分割の違い
☆離婚時みなし被保険者期間

・離婚等をした場合における特例(合意分割の特例)は、平成19年4月1日以後に離婚等をした場合に適用されるが、平成19年4月1日前の気婚姻等をしていた期間も分割の対象期間に含まれる。

厚生年金保険法
第三章の二 離婚等をした場合における特例
第78条の2(離婚等をした場合における標準報酬の改定の特例)
第1号改定者(被保険者又は被保険者であった者であって、第78条の6第1項第1号及び第2項第1号の規定により標準報酬が改定されるものをいう)又は第二号改定者(第一号改定者の配偶者であった者であって、同条第一項第二号及び第二項第二号の規定により標準報酬が改定され、又は決定されるもの)は、離婚等(離婚(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者にちうて、当該事情が解消した場合を除く)、婚姻の取消しその他厚生労働省令で定める事由をいう。)をした場合であって、次の各号のいずれかに該当するときは、実施機関に対し、当該離婚等についての対象期間(婚姻期間その他の厚生労働省令で定める期間をいう)に係る被保険者期間の標準報酬(第一号改定者及び第二号改定者(当事者)の標準報酬)の改定又は決定を請求することができる。ただし、当該離婚等をしたときから二年を経過したときその他の厚生労働省令で定める場合に該当するときは、この限りでない。
1.当事者が標準報酬の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき按分割合(当該改定又は決定後の当事者の次条第一項に規定する対象期間標準報酬総額の合計額に対する第二号改定者の対象期間標準報酬総額の割合をいう)について合意しているとき。
Ⅱ次項の規定により家庭裁判所が請求すべき按分割合を定めたとき。

2.前項の規定による標準報酬の改定又は決定の請求(標準報酬改定請求)について、同項第一号の当事者の合意のための協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者の一方の申立てにより、家庭裁判所は、当該対象期間における保険料納付に対する当事者の寄与の程度その他一切の事情を考慮して、請求すべき按分割合を定めることができる。

3.標準報酬改定請求は、当事者が標準報酬の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき按分割合について合意している旨が記載された公正証書の添付その他の厚生労働省令で定める方法によりしなければならない。

第78条の3(請求すべき按分割合)
請求すべき按分割合は、当事者それぞれの対象期間標準報酬総額(対象期間に係る被保険者期間の各月の標準報酬月額の合計額に対する第二号改定者の対象期間標準報酬総額の割合を超え二分の一以下の範囲(按分割合の範囲)内で定めなければならない。

2.次条第一項の規定により按分割合の範囲について情報の提供(第78条の5n規定により裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官が受けた資料の提供を含み、これが複数あるときは、その最後のもの)を受けた日が対象期間の末日前であって対象期間の末日までの間が一年を超えない場合その他の厚生労働省令で定める場合における標準報酬改定請求については、前項の規定にかかわらず、当該情報の提供を受けた按分割合の範囲を、同項の按分割合の範囲とすることができる。

第78条の4(有事者等への情報の提供等)
当事者又はその一方は、実施機関に対し、主務省令で定めるところにより、標準報酬改定請求を行うために必要な情報であって次項に規定するものの提供を請求うることができる。ただし、当該請求が標準報酬改定請求後に行われた場合又は第七十八条の二第一項ただし書に該当する場合その他厚生労働省令で定める場合においては、この限りでない。
2.前項の情報は、対象期間標準報酬総額、按分割合の範囲、これらの算定の基礎となる期間その他厚生労働省令で定めるものとし、同項の請求があった日において対象期間の末日が到来していないときは、同項の請求があった日を対象期間の末日とみなして算定したものとする。

第78条の5
実施機関は、裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官に対し、その求めに応じて、第78条の2第2項の規定による請求すべき按分割合に関する処分を行うために必要な資料を提供しなければならない。

第78条の6(標準報酬の改定再は決定)
実施機関は、標準報酬改定請求があった場合において、第一号改定者が標準報酬月額を有する対象期間に係る被保険者期間の各月ごとに、当事者の標準報酬月額をそれぞれ次の各号に定める額に改定し、又は決定することができる。
一 第一号改定者 改定前の標準報酬月額に一から改定割合(按分割合を基礎として厚生労働省令で定めるところにより算定した率をいう。)を控除して得た率を乗じて得た額

二 第二号被保険者 改定前の標準報酬月額(標準報酬月額を有しない月にあては、零)に、第一号改定者の改定前の標準報酬月額に改定割をを乗じて得た額を加えて得た額

2.実施機関は、標準報酬改定請求があった場合において、第一号改定者が標準賞与額を有する対象期間に係る被保険者期間の各月ごとに、当事者の標準賞与額をそれぞれ次の各号に定める額に改定し、又は決定することができる。
一 第一号改定者 改定前の標準賞与額に一から改定割合を控除して得た率を乗じて得た額
二 第二号改定者 改定前の標準賞与額(標準賞与額を有しない月にあっては、零)に、第一号改定者の改定前の標準賞与額に改定割合を乗じて得た額を加えて得た額

3.前二項の場合において、対象期間のうち第一号改定者の被保険者期間であって第二号改定者の被保険者期間でない期間については、第二号改定者の被保険者期間であったものとみなす。

4.第一項及び第二項の規定により改定され、又は決定された標準報酬は、当該標準報酬改定請求のあった日から将来に向かってのみその効力を有する。

第78条の10(老齢厚生年金等の額の改定)
老齢厚生年金の受給権者について、第78条の6第1項及び第2項の規定により標準報酬の改定又は決定が行われたときは、第43条第1項の規定にかかわらず、対象期間に係る被保険者期間の最後の月以前における被保険者期間(対象期間の末日後に当該老齢厚生年金を支給すべき事由が生じた場合その他の政令で定める場合にあっては、政令で定める期間)及び改定又は決定後の標準報酬を老齢厚生年金の額の計算の基礎とするものとし、当該標準報酬改定請求のあった日の属する月の翌月から、年金の額を改定する。

2.障害厚生年金の受給権者については、当該障害厚生年金の額の計算の基礎となる被保険者期間に係る標準報酬が第78条の6第1項及び第2項の規定により改定され、又は決定されたときは、改定又は決定後の標準報酬を基礎として、当該標準報酬改定請求のあった日の属する月の翌月から、年金の額を改定する。ただし、第50条第1項後段の規定が適用されている障害厚生年金については、離婚時みなし被保険者期間は、その計算の基礎としない。

第三章の三 被扶養配偶者である期間についての特例
第78条の13(被扶養配偶者に対する年金たる保険給付の基本的知識)
被扶養配偶者に対する年金たる保険給付に関しては、第三章に定めるもののほか、被扶養配偶者を有する被保険者が負担した保険料について、当該被扶養配偶者が共同して負担したものであるという基本的認識の下に、この章の定めるところによる。

日本年金機構HPより
離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)
平成20年5月1日以後に離婚等をし、以下の条件に該当したときに、国民年金の第3号被保険者であった方からの請求により、平成20年4月1日以後の婚姻期間中の3号被保険者期間における相手方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)の2分の1ずつ、当事者間で分割することができる制度。請求にあたり当事者双方の合意は不要。ただし、分割される人が障害厚生年金の受給権者で、この分割請求の対象となる期間を年金額の基礎としている場合は、3号分割請求は認められない。請求期限は、原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内。この分割制度により、厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割した場合は、当事者それぞれの老齢厚生年金等の年金額は、分割後の記録に基づき計算される。
・分割をした人は、自分の厚生年金記録から、相手方に分割をした標準報酬月額・標準賞与額を除いたその残りの標準賞与額・標準賞与額に基づき、年金額が計算される。
・分割を受けた人は、自分の厚生年金記録と、相手方から分割された標準報酬月額・標準賞与額に基づき、年金額が計算される。なお、分割後の標準報酬月額・標準賞与額に基づく老齢厚生年金を受けるには、自身の厚生年金の加入期間や国民年金の保険料を納付した期間等によって受給資格期間を満たしていることや生年月日に応じて定められている支給開始年齢に到達していることが必要。
☆年金分割の公課は、厚生年金の報酬比例部分(厚生年金基金が国に代行して支給する部分を含む)に限られ、国民年金の老齢基礎年金に影響はない。
☆現に老齢厚生年金を受けている場合は、年金分割をした月の翌月分から年金額が変更される。

・合意分割後3号分割が同時に行われる場合とは、合意分割の請求が行われ、婚姻期間中に3号分割の対象となる期間が含まれるときのこと。合意分割と同時に3号分割の請求があったとみなされる。したがって、3号分割の対象となる期間は、3号分割による標準報酬の分割に加え、合意分割による標準報酬の分割も行われる。

分割請求期限は、原則として、次に掲げる事由に該当した日の翌日から起算して2年以内。
1.離婚をしたとき
2.婚姻の取消しをしたとき
3.事実婚関係にある人が国民年金第3号被保険者資格を喪失し、事実婚関係が解消したと認められるとき。

次の事例に該当した場合、その日の翌日から起算して、6カ月を経過するまでに限り、分割請求することができる。
1.離婚から2年を経過するまでに審判申立を行って、本来の請求期限が経過後、又は本来請求期限経過日前の6カ月以内に調停が成立した。
2.離婚から2年を経過するまでに調停申し立てを行って、本来の請求期限が経過後、又は本来請求期限経過日前の6カ月以内に按分割を定めた判決が確定した。
3.按分割合に関する附帯処分を求める申立てを行って、本来の請求期限が経過後、又は本来請求期限経過日前の6カ月以内に按分割合を定めた判決が確定した。
4.按分割合に関する附帯処分を求める申立てを行って、本来の請求期限が経過後、又は本来請求期限経過日前の6カ月以内に按分割合を定めた和解が成立した。

・合意分割制度は、平成19年4月1日以後に離婚した場合のほか、平成19年4月1日以後に婚姻が取り消された場合が対象となる。また、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の関係(事実婚関係)にある方は、平成19年4月1日以後に、事実婚関係が解消したと認められる場合であって、事実婚関係にあった間に、当事者の一方が他方の被扶養配偶者として国民年金の第3号被保険者と認定されていた期間があるときに対象となる。

・分割の対象となる期間は、その離婚又は婚姻の取消しに係る婚姻期間。ただし、その婚姻期間が次の1または2の期間と重複する場合、対象期間は婚姻きっから1及び2の期間を除いた期間となる。
1.当事者以外の者が、当事者の一方の被扶養配偶者として第3号被保険者であった期間
2.当事者の一方が、当事者以外の者の被扶養配偶者として第3号被保険者であった期間

また、事実婚関係が解消した場合の対象期間は、当事者の一方が他方の被扶養配偶者として第3号被保険者であった期間。

特別支給の老齢厚生年金とは、昭和60年の法律改正により、厚生年金保険の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられたことから、受給開始年齢を段階的にスムーズに引き上げるために設けられた制度。特別支給の老齢厚生年金を受給するためには以下の要件を満たしている必要がある。
・男性の場合、昭和36年4月1日以前に生まれたこと。
・女性の場合、昭和41年4月1日以前に生まれたこと。
・老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があること。
・厚生年金保険等に1年以上加入していたこと。
・生年月日に応じた受給開始年齢に達していること。

・離婚時みなし被保険者期間及び被扶養配偶者みなし日保険sh機関以外の厚生年金保険の被保険者期間の月数が1年に満たない者には、特別支給の老齢厚生年金は支給されない。


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