年金制度の概要と国民年金法

国民年金保険法(国民年金制度の目的)
国民年金制度は、日本国憲法第25条第2項に規定する理念に基き、老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し、もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。

厚生年金保険法(この法律の目的)
この法律は、老翁者の老齢、障害又は死亡について保険給付を行い、労働者及びその遺族の生活の安定と風刺の向上に寄与することを目的とする。

老齢、障害、死亡という事由で長期にわたり生活費を得られなくなったときの生活保障で年単位で必要な期間支給される年金制度。日本の最初の年金制度は、工場等で働く男子労働者に限定して、購買力の吸収や軍費調達の意味合いをもつ労働者年金保険法が昭和16年に制定。昭和19年に雇用構造の変化に対処するため廃止され、女性労働者および一般職員も対象とする被用者年金制度として新たに厚生年金保険法が制定された。被用者以外の、農林水産業などに従事する自営業者を対象とする年金制度は、昭和34年に国民年金法として制定施行。保険料の納付を要しない無拠出制の福祉年金だったが、昭和36年に保険料の納付を前提とする拠出制の年金制度が始まった。すべての国民がいずれかの公的年金制度に加入する国民皆年金体制が整った。昭和60年に年金制度の抜本的な大改正が行われ、すべての国民を国民年金の対象とし、この国民年金から全国民共通の低額の基礎年金を支給することにした。これに伴い、厚生年金保険制度から国民年金制度に一定の割合で基礎年金拠出金を納めさせることとし、国民年金の財政を安定させた。それまでの厚生年金保険の給付内容は、定額部分と報酬比例部分から構成されていたが、定額部分は国民年金から基礎年金が支給されることになったため、厚生年金からはこの基礎年金に上乗せする報酬比例の年金だけが支給されることになった。国民年金から支給される基礎年金と、厚生年金保険から支給される報酬比例の年金を合わせて、2階建ての年金ともいう。一般に昭和60年改正前の年金法を旧法、改正以後の年金法を新法という。平成27年10月からは、公務員などが加入している共済組合や私立学校教職員の共済組合の年金制度が、厚生年金保険制度に吸収合併された。(被用者年金制度の一元化)国民年金制度も厚生年金制度も、政府が管掌。

国民年金の第1号被保険者には、日本国内に住所を有している20歳以上60歳未満の者で、第2号被保険者や第3号被保険者に該当しないものが該当する。自営業者、大学生、フリーター、無職の人も第1号被保険者。ただい、かつて労働者として厚生年金保険に入っていたことなどにより老齢厚生年金等の受給権を有する者など一定のものは除かれる。
第2号被保険者は、民間企業に勤める者や公務員など、厚生年金保険に加入している者。ただし、65歳以上の者は、老齢寝厚生年金等の受給権を有しない者に限る。
第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている配偶者で、20歳以上60歳未満の者。
第1~3号非保管者は、強制加入被保険者。強制加入被保険者に該当しない者は、一定の要件に該当すれば厚生労働大臣に申し出ることによって被保険者となることができる。(任意加入被保険者)60歳に達したことによって第1号被保険者の資格を喪失した者が、その時点で老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていないときに、これを満たすために任意加入被保険者となることができる。国民年金被保険者期間は、月を単位として計算される。被保険者の資格を取得した日の属する月から、その資格を喪失いた日の属する月の前月までが被保険者期間となる。4月1日生まれの人は3月31日に20歳になる(法律上は原則として誕生日の前日に歳をとることになっている)ので3月31日に資格を取得し、同じく3月31日に60歳になるので3月31日に資格を喪失する。したがって非保管者期間は法律上20歳になる3月から同じく60歳になる3月の前月の2月までの480月(12ヶ月×40年)となる。

国民年金の保険料は、所得などに関係なく月額定額制(令和5年度は16,520円、令和6年度は16,980円)で、被保険者期間の計算の基礎となる各月につき納付する。納期限は翌月末日。将来の一定期間の保険料をまとめて前納もできる。保険料を納付するのは第1号被保険者と任意加入被保険者だけで、第2号被保険者と第3号被保険者は、第2号被保険者が厚生年金保険制度において納付した厚生年金保険料の一部が、国民年金の給付(基礎年金)に充てるための費用として国民年金制度に回される。(これに充てられるものが基礎年金拠出金)第3号被保険者は、配偶者である第2号被保険者が納付している厚生年金保険料をもって納付しているものとみなされる。

第1号被保険者と任意加入被保険者は、老齢基礎年金の上乗せの年金として付加年金(支給額は200円×納付済月数)を受給することを目的として付加保険料(月額400円)を納付することができる。口座振替による納付や前納には、保険料額の一定の割引制度がある。

国民年金の保険料を納付しなければならない第1号被保険者で、所得が低いなどの理由で納付することが事実上困難な人に、保険料の免除制度が設けられている。適用除外として年金制度の外に追いやって老後無年金とならないように、被保険者が障害基礎年金の受給権者である場合など、一定の要件に該当するときは法律上当然に保険料の全部が免除される法定免除、所得が一定額以下の者などが厚生労働大臣に申請することにより、保険料の全部または一部が免除される申請免除がある。学生等で第1号被保険者となっている場合、本人の所得が一定額以下のときは申請によって保険料を免除する学生納付特例がある。卒業して就職してからの追納を期待した免除制度。暫定的な免除制度として、50歳未満の者に対する納付猶予がある。全年齢層において非正規労働者が増加している現状を踏まえ、厚生年金保険に加入できない者が国民年金の保険料を滞納して将来年金が受給できなくなるという問題を緩和するための制度。

保険料の免除を受けた期間があれば、老後の年金は当然その期間分、減額される。厚生労働大臣の承認を受けて過去10年以内の免除期間について後から追って納付する追納を認めている。追納する場合は、原則として、免除を受けた当時の保険料の額に一定の額を加算した額となる。産前産後期間(出産予定日の前月から4箇月間)に係る保険料免除制度も設けられている。免除期間は、追納することなく保険料納付済期間とされ、老齢基礎年金の額が算定される。付加保険料を納付することもできる。(他の免除期間は、付加保険料の納付はできない。)

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