労働基準法、時間外労働・休日労働、みなし労働時間制

30.
・派遣先の使用者は、派遣先の事業場において、災害その他避けることのできない事由により臨時の必要がある場合には、派遣労働者を法定労働時間外に労働させることができるが、この場合において、事前に行政官庁の許可を受け、又はその暇がない場合に事後に遅滞なく届出をする義務を負うのは、派遣先の使用者である。
☆割増賃金の支払義務は、派遣元の使用者にある。

・労働基準法上の労使協定の効力は、その協定に定めるところによって労働させても労働基準法に違反しないという免罰効果をもつものであり、労働者の民事上の義務は、当該協定から直接生じるものではなく、労働協約、就業規則等の根拠が必要なものである。

昭和63年1月1日基発第一号
〇改正労働基準法の施行について
労働時基準法の一部を改正する法律については、昭和62年9月26日付発基第76号により労働事務次官より通達されたところであるが、同法による改正後の労働基準法並びにこれに基づく労働基準法第32条第1項の労働時間等に係る暫定措置に関する法令及び労働基準法施行規則の一部を改正する省令による改正後の労働基準法施行規則の内容は下記の通り。
1.法定労働時間
(2)一週間の法定労働時間と一日の法定労働時間
法第32条第1項で1週間の法定労働時間を規定し、同条第2項で1日の法定労働時間を規定することとしたが、これは、労働時間の規制は一週間単位の規制を基本として一週間の労働時間を短縮し、一日の労働時間は一週間の労働時間を各日に割り振る場合の上限として考えるという考え方によるものであること。
一週間の法定労働時間と一日の法定労働時間とを項を分けて規定することとしたが、いずれも法定労働時間であることに変わりはなく、使用者は、労働者に、法定除外事由なく、一週間の法定労働時間及び一日の法定労働時間を超えて労働さえてはならないものであること。
なお、一週間とは、就業規則その他に別段の定めがない限り、日曜日から土曜日までのいわゆる暦週をいうものであること。また、一日とは、午前0時から午後12時までのいわゆる暦日をいうものであり、継続勤務が二暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも一勤務として取り扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該日の「一日」の労働とするものであること。

2.変形労働時間制
変形労働時間制は、労働基準法制定当時に比して第三次産業の占める比重の著しい増大等の社会経済情勢の変化に対応するとともに、労使が労働時間の短縮を自ら工夫しつつ進めていくことが容易となるような柔軟な枠組みを設けることにより、労働者の生活設計を損なわない範囲内において労働時間を弾力化し、週休二日制の普及、年間休日日数の増加、業務の繁閑に応じた労働時間の配分等を行うことによって労働時間を短縮することを目的とするものであること。

(1)一箇月単位の変形労働時間制
ロ 一箇月単位の変形労働時間制を採用する場合には、就業規則その他これに準ずるものにより、変形期間における各日、各週の労働時間を具体的に定めることを要し、変形期間を平均し週40時間の範囲内であっても使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような制度はこれに該当しないものであること。法第89条第1項は就業規則で始業及び終業の時刻を定めることと規定しているので、就業規則においては、確実の労働時間の長さだけでなく、始業及び終業の時刻も定める必要があるものであること。

ハ 変形時間における法定労働時間の総枠
一箇月単位の変形労働時間制を採用する場合には、変形期間を平均し一週間の労働時間が法定労働時間を超えない定めをすることが要件とされているが、これは要するに、変形期間における所定労働時間の合計を次の式によって計算される変形期間における法定労働時間の総枠の範囲内とすることが必要であるということであること。
40×変形期間の暦日数/7

ニ 時間外労働となる時間
一箇月単位の変形労働時間制を採用した場合に時間外労働となるのは、次の時間であること。
①一日については、就業規則その他これに準ずるものにより八時間を超える時間を定めた日はその時間を、それ以外の日は八時間を超えて労働した時間
②一週間については、就業規則その他これに準ずるものにより40時間を超える時間を定めた週はその時間を、それ以外の週は40時間を超えて労働した時間(①で時間外労働となる時間を除く。)
③変形期間については、変形期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間(①又は②で時間外労働となる時間を除く。)

ホ 就業規則の変更届の受理
一箇月単位の変形労働時間制を採用する場合又はその内容を変更する場合には、それに関連して就業規則を変更し、その変更届が労働基準監督署長に届け出られることとなるが、その受理に当たっては労働者代表の意見書をチェックし、必要に応じてその意見を十分聴くよう指導する等的確に指導すること。
尚、就業規則においては、変形期間の起算日を明らかにすることとされているので、的確に指導すること。

(2)フレックスタイム制
イ 趣旨
フレックスタイム制は、一か月以内の一定の期間の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲内で各日の始業及び終業の時刻を選択して働くことにより、労働者がその生活と業務との調和を図りながら、効率的に働くことを可能とし、労働時間を短縮しようとするものであること。
従来は、労働基準法上、フレックスタイム制に規定はなく、事実上、始業及び終業の時刻が労働者の自主的決定にゆだねられている限り、法第32条第2項及び第89条第1項の趣旨に反しないものとして扱われていたものについて、今回その採用の要件を法律上明らかにしたものであること。

ロ 就業規則の定め
フレックスタイム制を採用する場合には、就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を労働者の決定にゆだねる旨を定める必要があるものであること。
その場合、始業及び終業の時刻の両方を労働者の決定にゆだねる必要があり、始業時刻又は終業時刻の一方についてのみ労働者の決定にゆだねるのでは足りないものであること。

(4)一週間単位の非定型的変形労働時間制
イ 趣旨
日ごとの業務に著しい繁閑が生じることが多く、かつ、その繁閑が定型的に定まっていない場合に、一週間を単位として、一定の範囲内で、就業規則その他これに準ずるものによりあらかじめ特定することなく、一日の労働時間を10時間まで延長することを認めることにより、労働時間のより効率的な配分を可能とし、全体としての労働時間を短縮しようとするものであること。

労働基準法第三十六条(時間外及び休日の労働)
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間又は前条の休日に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
②前項の協定においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができることとされる労働者の範囲
二 対象期間(この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる期間をいい、一年間に限るものとする。第四号及び第六項第三号において同じ)
三 労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる場合
四 対象期間における一日、一箇月及び一年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数
五 労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項
③前項第四号の労働時間を延長して労働させることができる時間は、当該事業場の業務量、時間外労働の動向その他の事情を考慮して通常予見される時間外労働の範囲内において、限度時間を超えない時間に限る。
④前項の限度時間は、一箇月について四十五時間および一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあっては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。
⑤第一項の協定においては、第二項各号に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る)並びに一年について労働時間を延長して労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め七百二十時間を超えない範囲内に限る)を定めることができる。この場合において、第一項の享千絵に、併せて第二項第二号の対象期間において労働時間を延長して労働させる時間が一箇月について四十五時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあっては、一箇月について四十二時間)を超えることができる月数(一年について六箇月に限る)を定めなければならない。
⑥使用者は、第一項の協定で定めるところによって労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であっても、次の各号に掲げる時間について、当該各号に定める要件を満たすものとしなければならない。
一 坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務について、一日について労働時間を延長して労働させた時間 二時間を超えないこと。
二 一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間百時間未満であること。
三 対象期間の初日から一箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の一箇月、二箇月、三箇月、四箇月及び五箇月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の一箇月当たりの平均時間 谷内十時間を超えないこと。
⑦厚生労働大臣は、労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするため、第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の健康、福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して指針を定めることができる。
⑧第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、当該協定で労働時間の延長及び休日の労働を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の指針に適合したものとなるようにしなければならない。
⑨行政官庁は、第七項の指針に関し、第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。
⑩前項の助言及び指導を行うに当たっては、労働者の健康が確保されるよう特に配慮しなければならない。
⑪第三項から第五項まで及び第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る)の規定は、新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務については適用しない。

31.使用者は、36協定で定めるところによって労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であっても、一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間は百時間未満としなければならないとされ、これに違反した使用者については労働基準法の6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられる。

32.
第三十七条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間または老防備の賃金の計算額の二割五分以上の五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた労働の時間については、通常の労働時間の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
②前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
③使用者が、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。
④使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
⑤第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金算入しない。

33.
・災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において法定労働時間を延長し、又は法定の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。
・上記1の届出があった場合において、行政官庁がその労働時間の延長又は休日の労働を不適当と認めるときは、その後にその時間に相当する休憩又は休日を与えるべきことを命ずることができる。

34.みなし労働時間制
専門業務型裁量労働制に係る労働時間のみなしに関する規定は、労働基準法第6章の年少者及び同法第6章の2の妊産婦等の労働時間に関する規定に係る労働時間の算定については、適用されない。

第三十八条の二
労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定しがたいときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。
②前項ただし書の場合において、当該業務に関し、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、その協定で定める時間を同項ただし書の当該業務の遂行に通常必要とされる時間とする。
③使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。

第三十八条の三
使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、労働者を第一号に掲げる業務に就かせたときは、当該労働者は、厚生労働省令で定めるところにより、第二号に掲げる時間労働したものとみなす。
一 業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務(一 新商品若しくは新技術の研究開発または人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
 二 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であってプログラムの設計の基本となるもの)の分析又は設計の業務 三 新聞若しくは議出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送業第二条第二十八号に規定する放送番組の制作のための取材若しくは編集の業務 四 衣服、室内装飾、工業精神、広告塔の新たなデザインの考案の業務 語 放送番組、映画等の製作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務 六 前各号のほか、厚生労働大臣の指定する業務)のうち、労働者に就かせることとする業務(対象業務)
二 対象業務に従事する労働者の労働時間として算定される時間
三 対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、当該対象業務に従事する労働者に対し使用者が具体的な指示をしないこと。
四 対象業務に従事する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること。
五 対象業務に従事する労働者からの苦情の処理に関する措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること。
六 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める時効
②前条第三項の規定は、前項の協定について準用する。

35.
・派遣労働者については、企画業務型裁量労働制を適用することはできない。

・企画業務型裁量労働制に係る労使委員会の決議を行政官庁に届け出た使用者は、所定の事項について、決議の有効期間の始期から起算して6箇月以内に1回、及びその後1年以内ごとに1回、行政官庁に届け出なければならない。

・企画業務型裁量労働制を採用するに当たり労使委員会の決議事項とされる当該企画業務型裁量労働制の対象業務は、「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務」とされている。

・企画業務型裁量労働制の採用に当たっては、「使用者は、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度を変更する場合にあっては、労使委員会に対し、当該変更の内容について説明を行うこと」を労使委員会で決議しなければならない。

36.賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る)が設置された事業場において、当該委員会がその委員の5分の4以上の多数による議決により所定の事項に関する決議をし、かつ、使用者が、当該決議を行政官庁に届け出た場合において、(2)に掲げる労働者の範囲に属する労働者を当該事業場における(1)に掲げる業務に就かせたときは、当該労働者は、(3)に掲げる時間労働したものとみなす。
(1)事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務
(2)対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者であって、当該対象業務に就かせたときは当該決議で定める時間労働したものとみなされることとなるものの範囲
(3)対象業務に従事する上記(2)に掲げる労働者の範囲に属する労働者の労働時間として算定される時間



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