社会保険に関する一般常識・社会保障制度、社会保障の沿革等
・今後の日本の社会保障制度は、すべての世代を支援の対象とし、すべての世代が年齢ではなく負担能力に応じて負担し合う仕組みを目指すとともに、子ども・子育て支援の充実を図るなど、全世代型の社会保障への転換を目指すこととされている。
社会保障制度の沿革
・創設当初の健康保険の特色は、ドイツの疾病保険法をモデルとして制定された日本初の社会保険制度。疾病保険と災害補償を兼ねた保険で、工場法及び鉱業法の適用のある事業場の労働者に適用された。
大正11年:健康保険法制定(保険給付および費用の負担に関する規定を除き、大正15年に施行・昭和2年に完全施行)
昭和13年:国民健康保険法制定、同年に施行。昭和33年に全面改正され、同改正法が翌年に施行。
・厚生省設置
昭和14年:船員保険法制定、翌年思考。
・職員健康保険法制定、昭和17年に健康保険に吸収統合される。
昭和16年:労働者年金保険法制定、翌年思考。昭和19年に厚生年金保険法に改称。
昭和20年:全国民の3分の1が社会保険の保護を受ける状況に。国民健康保険は全国で約1万組合、被保険者数や約4,100万人に達したと称せられたが、実態は貧弱きわまる状況だった。
昭和22年:労働者災害補償保険法及び失業保険法(現在の雇用保険法)の制定に伴い、健康保険の給付から業務上災害が除かれるとともに厚生年金保険における事業主責任が分離。。健康保険は、財源確保のため標準報酬の改訂と保険料率の引上げを繰り返さざるを得ない状況。
昭和34年:国民年金法制定。同年11月より無拠出制の福祉年金の支給開始。
昭和36年:国民健康保険事業が全市町村で実施されるとともに、国民年金保険制度が拠出制となり、国民皆保険体制及び国民皆年金体制が実現。
昭和40年:厚生年金基金制度の創設、翌年施行。在職老齢年金制度の創設、同年施行。
昭和46年:児童手当法制定、翌年施行。
昭和48年:高額療養費制度の創設、当時は月額3万円を超える自己負担分を償還・健保は同年に施行、国保は昭和50年に法定給付化。家族(被扶養者)給付率を5割から7割に引き上げ。
・物価スライド制(物価指数が5%を超えて変動した場合に年金額を改定)の導入、同年施行。
・再評価制度の導入、同年施行
昭和57年:老人保健法(高齢者の医療の確保に関する法律の前身)制定、翌年施行
昭和59年:低率の一部負担金制度の導入(被用者保険の被保険者の10割給付を改め1割負担に、同年施行)
・退職者医療制度の創設、翌年施行
昭和60年:基礎年金制度の創設、昭和61年に施行。
船員保険の職務外年金部門を統合、翌年施行
平成元年:完全自動物価スライド制度の導入、翌年施行
・国民年金基金制度の整備及び昼間学生の強制加入、いずれも平成3年施行
平成6年:付添看護の解消のための規定の整備・訪問看護療養費及び入院時食事療養費の創設、同年施行
・特別支給の老齢厚生年金の定額部分の段階的廃止(平成13年から段階的に実施)、特別支給の老齢厚生年金と失業等給付との調整(平成10年に施行)
・脱退一時金制度の創設、翌年施行
平成8年:3共済(JT、JR、NTT)を統合、翌年施行
・基礎年金番号の導入、翌年施行
平成9年:被保険者の一部負担金を2割に引上げ、同年施行
・介護保険法制定、平成12年施行
平成12年:老人の定額負担を廃止し、原則1割負担とする(平成13年施行)
・給付水準の5%適正(減額)化(同年施行)
・特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分の段階的廃止(平成25年から段階的に実施)
・高在老の導入(平成14年に施行)
・総報酬制の導入(平成15年施行)
・ドイツと社会保障協定を実施(発効)
※現在は、これまで各国ごとに制定されていた社会保障協定の実施に関する諸法律を、社会保障協定に係る法制の簡素化及びその的確かつ円滑な実施を図る観点から統合し、『社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律』が制定されるに至っている。
平成13年:確定拠出年金法制定、同年施行
・確定給付企業年金法制定、翌年施行
平成14年:老人医療の対象年齢の75歳への引上げ、同年に施行
・老人以外の負担割合を原則3割で医療保険間の負担率を統一、翌年施行
・総報酬制の導入、翌年施行
・国において保険料を直接徴収する仕組みに改める(市町村による印紙検認事務の廃止)
平成16年:基礎年金国庫負担割合の引上げ開始・保険料水準固定方式及びマクロ経済スライドの導入、同年施行
・離婚時の年金分割制度の導入、平成19年に施行
・第3号被保険者期間に係る年金分割制度の導入、平成20年に施行
平成18年:後期高齢者医療制度の創設、平成20年施行
・全国健康保険協会の設立、平成20年施行
平成19年:日本年金機構の設立、平成22年施行、社会保険庁廃止
・船員保険法改正、職務上疾病・年金部門、失業部門の労災保険、雇用保険への統合、平成22年施行
平成23年:国民年金基金の加入年齢の引上げ、平成25年に施行
平成24年:夫に対する遺族基礎年金の支給(平成26年施行)
・産前産後休業期間中の保険料免除(平成26年施行)短時間労働者への適用拡大(平成28年施行)(健康保険、厚生年金)
・被用者年金制度の一元化(公務員・私学教職員も厚生年金保険に加入)平成27年施行
・老齢基礎年金等の受給資格期間を10年に短縮、平成29年施行
平成25年:厚生年金基金制度の見直し、平成26年施行
平成26年:年金記録訂正手続の創設、平成27年施行
へ成27年:被用者保険者の後期高齢者支援金の全面総報酬割を実施(同年~平成29年で段階的実施)
・入院時食事療養費等の見直し
・標準報酬月額上限の引上げ
・患者申出量寮費の創設等(平成28年に施行)
・市町村国保の都道府県単位化、平成30年施行
平成28年:マクロ経済スライドの見直し(平成30年に施行)
・産前産後期間の保険料免除(国保・平成31年に施行)
平成29年:高額療養費の見直し、同年及び平成30年施行
・入院時生活療養費の見直し(同年に施行)
・介護納付金の全面総報酬割を実施(同年~令和2年で段階的に実施)
・介護医療院の創設(平成30年施行)
令和元年:被扶養者(第3号被保険者)に、国内居住用件を追加(令和2年施行)
・オンライン資格確認の導入、令和2年施行
令和2年:在職定時改定の導入
・低在老の支給停止の基準額引上げ(令和4年に施行)
・年金の受給開始時期の上限を70歳から75歳に引上げ(令和4年に施行)
・健康保険短時間労働者への適用拡大、適用業種の拡大、令和4年に施行
令和3年:傷病手当金の支給期間の通算化
・任意継続被保険者等からの申請による任意の資格喪失を可能に。
・後期高齢者医療の窓口負担割合の見直し(令和4年施行)
・公的年金制度の財政方式は、積立方式と、賦課方式の2つ。我が国は、限りなく賦課方式に近い。当年度の給付に必要な費用が、現在の被保険者の保険料で賄われる仕組み。
・平成16年年金制度改正により、基礎年金国庫負担割合が3分の1から2分の1に引上げ。最終的な保険料水準を固定し、保険料総額の範囲内で給付水準を自動的に調整する保険料水準固定方式が導入。平成29年までに、厚生年金保険の第1号厚生年金被保険者の保険料率は、18.3%まで、国民年金の保険料額は16,900円(平成16年度価格)まで段階的に引き上げられた上で固定。国民年金保険料額は、平成31年4月から実施の産前産後期間の保険料免除の財源として100円引き上げられ、17,000円となっている。マクロ経済スライドの導入により、受給時に1人当たり手取り賃金の伸びを反映して年金額が算定、受給後は物価の伸びで改定される。固定した保険料負担の範囲内でバランスがとれるようになるまでは、年金額の計算に当たって賃金や物価の伸びをそのまま使うのではなく、年金額の伸びを自動的に調整するマクロ経済スライドが行われる。この年金額の調整、マクロ経済スライドを行う期間においては、年金制度を支える力を表す被保険者数の減少率や平均余命の伸び等を勘案した一定率、スライド調整率を年金額の改定に反映させ、改定率を1人当たり手取り賃金や物価の伸びより抑制する。従来の将来にわたるすべての期間について給付と負担の均衡を図る永久均衡方式から、100年程度の期間について給付と負担の均衡を図る有言均衡方式に改められた。
・平成18年医療保険制度改正により、医療費適正化の総合的な推進、新たな高齢者医療制度の創設、都道府県単位を軸とした保険者の再編・統合などを内容とする改正が行われた。75歳以上の後期高齢者が加入する独立した医療制度として後期高齢者医療制度が創設。保険料徴収は市町村が行い、財政運営は都道府県単位で全市町村が加入する後期高齢者医療広域連合が担う。公費負担約5割、現役世代からの支援約4割、後期高齢者の保険料約1割を財源とする。政府管掌健康保険については、公法人たる全国健康保険協会が保険者として設立された。都道府県ごとに地域の医療費を反映した保険料率を設定する都道府県単位の財政運営を行うこととした。適用及び保険料徴収事務は、日本年金機構が実施する。国保改革では、平成30年度から、都道府県が安定的な財政運営や効率的な事業運営の確保等の国民健康保険の運営に中心的な役割を担うこととされた。従来の市町村国保を都道府県単位に再編し、都道府県は、保険給付に要した費用を全額、市町村に対して交付するとともに、市町村から国民健康保険事業費納付金を徴収し、財政収支の全体を管理することとなった。市町村は、資格管理、保険料の賦課徴収、保健事業等、地域における決め構会事業を引き続き担うこととされた。