労働者災害補償保険法・通則等
年金給付の支給期間等
支給期間
・年金たる保険給付の支給は、支給すべき事由が生じた月の翌月から始め、支給を受ける権利が消滅した月で終わるものとする。年金たる保険給付は、その支給を停止すべき事由が生じたときは、その事由が生じた月の翌月からその事由が消滅した月までの間は、支給しない。
支払期月
・年金たる保険給付は、毎月2月、4月、6月、8月、10月、12月の6期に、それぞれの前月分までを支払う。ただし、支給を受ける権利が消滅した場合におけるその期の年金たる保険給付は、支払期月でない月であっても、支払うものとする。
死亡の推定
・船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となった際現にその船舶に乗っていた労働者若しくは船舶に乗っていてその船舶の航行中に行方不明となった労働者の生死が3箇月間わからない場合又はこれらの労働者の死亡が3箇月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期がわからない場合には、遺族補償給付、葬祭料、遺族給付及び葬祭給付の支給に関する規定の適用については、その船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となった日又は労働者が行方不明となった日に、当該労働者は死亡したものと推定する。障害補償年金差額一時金及び障害年金差額一時金についても、それぞれ、遺族補償給付及び遺族給付とみなされて、死亡の推定の規定が適用される。
・死亡の推定の規定は、複数業務要因災害に関する保険給付(複数事業労働者遺族給付や複数事業労働者葬祭給付、複数事業労働者障害年金差額一時金)の支給に係る規定には適用されない。
未支給の保険給付
請求権者
・保険給付を受ける権利を有する者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたもの(遺族(補償)等年金については当該遺族(補償)等年金を受けることができる他の遺族)は、自己の名で、その未支給の保険給付の支給を請求することができる。
順位
・未支給の保険給付を受けるべき者の順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順序【遺族(補償)等年金については、遺族(補償)等年金の受給資格者の順序】による。未支給の保険給付を受けるべき同順位者が2人以上あるときは、その1人がした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなされ、その1人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなされる。
受給権の保護
退職者の権利
・保険給付を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない。
譲渡等の禁止
・保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。
公課の禁止
・租税その他の公課(国税である所得税、地方税たる住民税を問わない)は、保険給付として支給を受けた金品を標準として課することはできない。労災保険に関する書類に印紙税は課されない。
年金受給権者の定期報告書
・年金たる保険給付の受給権者は、毎年6月30日(1月から6月生まれの場合)又は10月31日(7月から12月生まれの場合)までに定期報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。ただし、所轄労働基準監督署長があらかじめその必要がないと認めて通知したとき又は厚生労働大臣が住民基本台帳法の規定により当該報告書と同一の内容を含む機構保存本人確認情報の提供を受けることができるとき若しくは番号法の規定により当該報告書と同一の内容を含む特定個人情報の提供を受けることができるときは、この限りでない(提出を要しない)。
支払いの調整
内払処理
・内払処理とは、前後の保険給付の受給権者が同一人である場合に、保険給付の一部を先に支払ったものとみなして処理すること。年金たる保険給付の支給を停止すべき事由が生じたにもかかわらず、その停止すべき機関の分として年金たる保険給付が支払われたときは、その支払われた年金たる保険給付は、その後に支払うべき年金たる保険給付の内払とみなすことができる。年金たる保険給付を減額して改定すべき事由が生じたにもかかわらず、その事由が生じた月の翌月以後の分として減額しない額の年金たる保険給付が支払われた場合における当該年金たる保険給付の当該減額すべきであった部分についても、同様とする。
受給権消滅等の場合
・同一の傷病に関し、障害等年金、傷病等年金、休業等年金の保険給付を受ける権利を有する労働者が、傷病等年金、障害等年金などほかの保険給付を受ける権利を有することとなり、かつ、元の保険給付を受ける権利が消滅した場合において、その消滅した月の翌月以後の分として保険給付が支払われたときは、その支払われた保険給付は、新たに受ける保険給付の内払とみなす。
労働者災害補償保険法
第12条
年金たる保険給付の支給を停止すべき事由が生じたにもかかわらず、その停止すべき期間の分として年金たる保険給付が支払われたときは、その支払われた年金たる保険給付は、その後に支払うべき年金たる保険給付の内払とみなすことができる。年金たる保険給付を減額して改定すべき事由が生じたにもかかわらず、その事由が生じた月の翌月以後の分として減額しない額の年金たる保険給付が支払われた場合における当該年金たる保険給付の当該減額すべきであった部分についても、同様とする。
充当処理
※前後の保険給付の受給権者が異なる場合に、後の保険給付を別の用途(債務の弁済)に充てるべく処理すること
第12条の2
年金たる保険給付を受ける権利を有する者が死亡したためその支給を受ける権利が消滅したにもかかわらず、その死亡の日の属する月の翌月以後の分として当該年金たる保険給付の過誤払が行われた場合において、当該過誤払による返還金に係る債権(返還金債権)に係る債務の弁済をすべき者に支払うべき保険給付があるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該保険給付の支払金の金額を当該過誤払による返還金債権の金額に充当することができる。
併給調整
社会保険の年金給付との調整
第14条2 休業補償給付を受ける労働者が同一の事由について厚生年金保険法の規定による障害厚生年金又は国民年金法の規定による障害基礎年金を受けることができるときは、当該労働者に支給する休業補償給付の額は、前項の規定にかかわらず、同項の額に別表第1第1号から第3号までに規定する場合に応じ、それぞれ同表第1号から第3号までの政令で定める率のうち傷病補償年金について定める率を乗じて得た額とする。
政令で定める調整率
障害(補償)等年金・・・障害厚生年金との併給給付は0.83、障害基礎年金との併合は0.88、障害厚生年金及び障害基礎年金の併合は0.73
傷病(補償)年金と休業(補償)等給付・・・障害厚生年金で0.88、障害基礎年金で0.88、障害基礎年金及び障害厚生年金の併合は、0.73
国民年金法30条の4の障害基礎年金との調整
・労災保険の年金たる保険給付と国民年金法30条の4の障害基礎年金(20歳前傷病による障害基礎年金)の支給を受けることができる場合には、労災保険の年金たる保険給付が全額支給され、国民年金法30条の4の障害基礎年金は支給されない。
厚生年金保険の障害手当金との調整
・同一の事由について、労災保険の障害(補償)等一時金と厚生年金保険の障害手当金の支給を受けることができる場合には、障害(補償)等一時金が全額支給され、障害手当金は支給されない。
支給制限等
絶対的支給制限
第12条の2の2
労働者が、故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因となった事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行わない。
相対的支給制限
2 労働者が故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、負傷、疾病、障害若しくは死亡若しくはこれらの原因となった事故を生じさせ、又は負傷、疾病若しくは障害の程度を増進させ、若しくはその回復を妨げたときは、政府は、保険給付の全部または一部を行わないことができる。
療養に関する指示違反の場合
・労働者が正当な理由なくて療養に関する指示に従わないことにより、負傷、疾病若しくは障害の程度を増進させ、又はその回復を妨げたときは、政府は、保険給付の全部又は一部を行わないことができる。
一時差止め
第47条の3
政府は、保険給付を受ける権利を有する者が、正当な理由なくて、第12条の7の規定による届出(定期報告書等)をせず、若しくは書類その他の物件の提出をしないとき、又は前二条の規定による命令に従わないときは、保険給付の支払を一時差し止めることができる。
29.通則
・年金たる保険給付の支給は、支給すべき事由が生じた月の翌月から始めるものとされている。
・年金たる保険給付は、その支給を停止すべき事由が生じたときは、その事由が生じた月の翌月からその事由が消滅した月までの間は、支給しない。
・労災保険法による保険給付は、同法所定の手続により行政機関が保険給付の決定をすることにより給付の内容が具体的に定まり、受給者は、それ以前においては政府に対し具体的な一定の保険給付請求権を有しないとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。
・船舶が沈没した際現にその船舶に乗っていた労働者の死亡が3ヶ月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期がわからない場合には、遺族補償給付、葬祭料、遺族給付、葬祭給付の支給に関する規定の適用については、その船舶が沈没した日に、当該労働者は、死亡したものと推定する。
30.通則等
・労災保険法に基づく遺族補償年金を受ける権利を有する者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき遺族補償年金でまだその者に支給しなかったものがあるときは、当該遺族補償年金を受けることができる他の遺族は、自己の名で、その未支給の遺族補償年金の支給を請求することができる。
・労災保険法に基づく遺族補償年金を受ける権利を有する者が死亡した場合において、その死亡した者が死亡前にその遺族補償年金を請求していなかったときは、当該遺族補償年金を受けることができる他の遺族は、自己の名で、その遺族補償年金を請求することができる。
・労災保険法に基づく保険給付を受ける権利を有する者が死亡し、その者が死亡前にその保険給付を請求していなかった場合、未支給の保険給付を受けるべき同順位者が2人以上あるときは、その1人がした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなされ、その1人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなされる。
・労災保険に関する書類には、印紙税を課さない。
31.通則等
年金たる保険給付の受給権者は、毎年、厚生労働大臣が指定する日までに、一定の事項を記載した報告書を、所轄労働基準監督署長に提出しなければならないが、所轄労働基準監督署長があらかじめその必要がないと認めて通知したとき又は厚生労働大臣が住民基本台帳法の規定により当該報告書と同一の内容を含む機構保存本人確認情報の提供を受けることができるとき若しくは番号法の規定により当該報告書と同一の内容を含む利用特定個人情報の提供を受けることができるときは、この限りでない。
労働者災害補償保険法
第十二条の四
政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。
②前項の場合において、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険給付をしないことができる。
32.通則等
年金たる保険給付の支給を停止すべき事由が生じたにもかかわらず、その停止すべき期間の分として年金たる保険給付が支払われたときは、その支払われた年金たる保険給付は、その後に支払うべき年金たる保険給付の内払とみなすことができる。
33.通則等
同一の事由により障害補償年金と厚生年金保険法の規定による障害厚生年金が支給される場合には、障害補償年金の額は、政令で定める所定の率を乗じて減額した額(その額が政令で定める額を下回るときは当該政令で定める額)となる。
・遺族補償年金の受給権者に厚生年金法の規定による老齢厚生年金が支給される場合であっても、これをもって遺族補償年金が減額されることはない。
34.通則等
・労働者が、結果の発生を意図した故意により事故を生じさせたときは、保険給付は行われないが、業務上の精神障害によって、正常の認識、行為選択能力が著しく阻害され、又は自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態で自殺が行われたと認められる場合には、結果の発生を意図した故意には該当せず、支給制限は行われない。
・業務遂行中の負傷が労働者の重大な過失によるものではなくても、当該労働者が正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、その負傷の回復を妨げたときは、政府は、保険給付の全部又は一部を行わないことができる。
第十二条の二の二
労働者が、故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因となった事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行わない。
②労働者が故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、負傷、疾病、障害若しくは死亡若しくはこれらの原因となった事故を生じさせ、又は負傷、疾病若しくは障害の程度を増進させ、若しくはその回復を妨げたときは、政府は、保険給付の全部又は一部を行わないことができる。
35.通則等
・事業主が故意又は重大な過失により労働保険の保険料の徴収等に関する法律(労働保険徴収法)第4条の2第1項の規定による届出であってこの保険に係る保険関係の成立に係るものをしていない期間中に生じた事故、一般保険料を納付しない期間中に生じた事故と(督促状に指定する期限後の期間に限る)について政府が保険給付を行ったときは、厚生労働省令で定めるところにより、業務災害に関する保険給付にあっては労働基準法の規定による災害補償の価額の限度又は船員法の規定による災害補償のうち労働基準法の規定による災害補償に相当する化学の限度で、複数業務要因災害に関する保険給付にあっては複数業務要因災害を業務災害とみなした場合に支給されるべき業務災害に関する保険給付に相当する同法の規定による災害補償の価額の限度で、その保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部を事業主から徴収することができる。
36.通則等
企業内の災害補償制度が、労働協約、就業規則等からみて労災保険の保険給付と重なる損害填補の性質を有するものであることが明らかに認められる場合には、政府は、当該保険給付について支給調整を行うことができる。
・保険給付の支給調整が行われることとなるのは、保険給付相当分を含む民事損害賠償が行われた場合に限られる。したがって、いわゆる保険給付の上積み分に相当する民事損害賠償を受けても、支給調整を行う必要はない。
37.通則等
年金たる保険給付を受ける権利を有する者が死亡したためその支給を受ける権利が消滅したにもかかわらず、その死亡の日の属する月の翌月以後の分として当該年金たる保険給付の過誤払が行われた場合において、当該支払によ返還金に係る債権(返還金債権)に係る債務の弁済をすべき者に支払うべき保険給付があるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該保険給付の支払金の金額を当該支払による過誤払債権の金額に充当することができる。
38.通則等
政府は、事業主が故意又は重大な過失により労働保険徴収法の規定による届出であって労災保険に係る保険関係の成立に係るものをしていない期間(政府が当該事業について概算保険料の認定決定をしたときは、その決定後の期間を除く)中に生じた事故について保険給付を行ったときは、厚生労働省令で定めるところにより、業務災害に関する保険給付にあって労働基準法の規定による災害補償のうち労働基準法の規定による災害補償の価額の限度又は船員法の規定による災害補償のうち労働基準法の規定による災害補償に相当する災害補償の価額の限度で、複数業務要因災害に関する保険給付にあっては複数業務要因災害を業務災害とみなした場合に支給されるべき業務災害に関する保険給付に相当する労働基準法の規定による災害補償の価額の限度で、通勤災害に関する保険給付にあっては通勤災害を業務災害とみなした場合に支給されるべき業務災害に関する保険給付に相当する労働基準法の規定による災害補償の価額の限度で、その保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部を事業主から徴収することができる。