労働安全衛生法・建設業等の安全衛生管理体制
建設業等においては、全産業に共通の安全衛生管理体制に加え、建設現場等での安全衛生管理体制(統括安全衛生責任者、元方安全衛生管理者、安全衛生責任者、店社安全衛生管理者の選任)も設けなければならない。
・元方事業者とは、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているものをいい、当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が2以上あるため、その者が2以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者をいう。建設業、造船業の元方事業者を特定元方事業者という。
・特定元方事業者の労働者が当該場所において作業を行うときは、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることにより生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせるとともに、特定元方事業者等が講ずべき労働災害を防止するため必要な措置に関する事項を統括管理させなければならない。ただし、これらの労働者の数が政令で定める数未満であるときは、この限りでない。統一の作業場所において、関係請負人の労働者を含め従事労働者数が常時30人以上のずい道等の建設の仕事、橋梁の建設の仕事(安全な作業の遂行が損なわれるおそれのある場所での仕事に限る)圧気工法による作業を行う仕事と、それ以外の建設業または造船業の仕事では、随時50人以上の従事労働者数の特定元事業者が、統括安全衛生責任者を選任しなければならない。
統括安全衛生責任者は、元方安全衛生管理者の指揮をするとともに、労働災害を防止するため必要な措置に関する事項を統括管理しなければならない。
・統括安全衛生責任者を選任した事業者のうち、建設業を行う事業者は、元方安全衛生管理者も選任しなければならない。元方安全衛生管理者は統括安全衛生責任者が統括管理する事項のうち、技術的事項を管理しなければならない。
・統括安全衛生責任者が選任された場合において、統括安全衛生責任者を選任すべき事業者以外の請負人で、その場所で当該仕事を自ら行うものは、安全衛生責任者を選任しなければならない。
・建設業に属する事業の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者が一の場所(これらの労働者の数が一定数未満である場所及び統括安全衛生責任者を選任しなければならない場所を除く)において作業を行うときは、当該場所において行われる仕事に係る請負契約を締結している事業場ごとに、これらの労働者の作業が同一の場所で行われることにより生ずる労働災害を防止するため、所定の資格を有する者のうちから店社安全衛生管理者を選任し、その者に、当該事業場で締結している当該請負契約に係る仕事を行う場所における特定元方事業者が講ずべき労働災害を防止するために必要な措置に関する事項を担当する者に対する指導その他の事項を行わせなければならない。
ずい道等の建設の仕事、橋梁の建設の仕事(安全な作業の遂行が損なわれるおそれのある場所での仕事に限る)、圧気工法による作業を行う仕事では、従事労働者数が常時20人以上30人未満、主要構造部が鉄骨造又は鉄骨鉄筋コンクリート造である建築物の建設の仕事は常時20人以上50人未満が同一の作業場所において労働に従事する建設業の元方事業者が、店社安全衛生管理者を選任しなければならない。
・店社安全衛生管理者は、作業場(その事業場で締結している請負契約に係る仕事を行う場所)における労働災害を防止するための措置に関する事項を担当する者の指導等を行うこととされている。
10.安全衛生管理体制Ⅱ
都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、統括安全衛生責任者の業務の執行について当該統括安全衛生責任者を選任した事業者に勧告することができる。
労働安全衛生法
第十五条(統括安全衛生責任者)
事業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの(当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が二以上あるため、その者が二以上あることとなるときは、当該請負契約のうち最も先次の請負契約における注文者とする。以下、元方事業者)のうち、建設業その他政令で定める業種に属する事業(特定事業)を行う者(特定元方事業者)は、その労働者及びその請負人(元方事業者の当該事業の仕事が数次の請負契約によって行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含む。以下、関係請負人)の労働者が当該場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせるとともに、第三十条第一項各号の事項を統括管理させなければならない。ただし、これらの労働者の数が政令で定める数未満であるときは、この限りでない。
2.統括安全衛生責任者は、当該場所においてその事業の実施を統括管理する者をもって充てなければならない。
3.第三十条(特定元方事業者等の講ずべき措置)第四項の場合において、同項の全ての労働者の数が政令で定める数以上であるときは、当該指名された事業者は、これらの労働者に関し、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生管理者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせるとともに、同条第一項各号の事項を統括管理させなければならない。この場合において、当該指名された事業者及び当該指名された事業者以外の事業者については、第一項の規定は、適用しない。
4.第一項又は前項に定めるもののほか、第二十五条の二第一項に規定する仕事(建設業その他政令で定める業種に属する事業の仕事)が数次の請負契約によって行われる場合においては、第一項又は前項の規定により統括安全衛生責任者を選任した事業者は、統括安全衛生責任者に第三十条の三第五項において準用する第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、同条第一項各号の措置を統括管理させなければならない。
5.第十条第三項(都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、統括安全衛生管理者の業務の執行について事業者に勧告することができる。)の規定は、統括安全衛生責任者の業務の執行について準用する。この場合において、同項中「事業者」とあるのは、「当該統括安全衛生責任者を選任した事業者」と読み替えるものとする。
第十五条の二(元方安全衛生管理者)
前条第一項又は第三項の規定により統括安全衛生責任者を選任した事業者で、建設業その他政令で定める業種に属する事業を行うものは、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、元方安全衛生管理者を選任し、その者に第三十条第一項各号の事項のうち技術的事項を管理させなければならない。
2.第十一条第二項(労働基準監督署長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、事業者に対し、安全管理者の増員又は解任を命ずることができる。)の規定は、元方安全衛生管理者について準用する。この場合のいて、同項中「事業者」とあるのは、「当該元方安全衛生管理者を選任した事業者」と読み替えるものとする。
第三十条(特定元方事業者等の講ずべき措置)
特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、次の事項に関する必要な措置を講じなければならない。
一 協議組織の設置及び運営を行うこと。
二 作業間の連絡及び調整を行うこと。
三 作業場所を巡視すること。
四 関係請負人が行う労働者の安全又は衛生のための教育に対する指導及び援助を行うこと。
五 仕事を行う場所が仕事ごとに異なることを常態とする業種で、厚生労働省令で定めるものに属する事業を行う元方事業者にあっては、仕事の工程に関する計画及び作業場所における機械、設備等の配置に関する計画を作成するとともに、当該機械、設備等を使用する作業に関し関係請負人がこの法律又はこれに基づく命令の規定に基づき講ずべき措置についての指導を行うこと。
六 前各号に掲げるもののほか、当該労働災害を防止するため必要な事項
2.特定事業の仕事の発注者(注文者のうち、その仕事を他の者から請け負わないで注文している者をいう。)で、特定元方事業者以外のものは、一の場所において行われる特定事業の仕事を二以上の請負人に請け負わせている場合において、当該場所において当該仕事に係る二以上の請負人の労働者が作業を行うこときは、厚生労働省令で定めるところにより、請負人で当該仕事を自ら行う事業者であるもののうちから、前項に規定する措置を講ずべき者として一人を指名しなければならない。一の場所において行われる特定事業の仕事の全部を請け負った者で、特定元方事業者以外のもののうち、当該仕事を二以上の請負人に請け負わせている者についても、同様とする。
3.前項の規定による指名がされないときは、同項の指名は、労働基準監督署長がする。
4.第二項又は前項の規定による指名がされたときは、当該指名された事業者は、当該場所において当該仕事の作業に従事するすべての労働者に関し、第一項に規定する措置を講じなければならない。この場合においては、当該指名された事業者及び当該指名された事業者以外の事業者については、第一項の規定は、適用しない。
第十五条の三(店社安全衛生管理者)
建設業に属する事業の元方事業者は、その労働は及び関係請負人の労働者が一の場所(これらの労働者の数が厚生労働省令で定める数未満である場所及び第十五条第一項または第三項の規定により統括安全衛生責任者を選任しなければならない場所を除く)において行われる仕事に係る請負契約を締結している事業場ごとに、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、店社安全衛生管理者を選任し、その者に、当該事業場で締結している当該請負契約に係る仕事を行う場所における第三十条第一項各号の事項を担当する者に対する指導その他厚生労働省令で定める事項を行わなければならない。
2.第三十条第四項の場合において、同項のすべての労働者の数が厚生労働省令で定める数以上であるとき(第十五条第一項又は第三項の規定により統括安全衛生責任者を選任しなければならないときを除く)は、当該指名された事業者で建設業に属する事業の仕事を行うものは、当該場所において行われる仕事に係る請負契約を締結している事業場ごとに、これらの労働者に関し、これらの労働者の作業が同一の場所で行われることによって生ずる労働災害を防止するため、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、店社安全衛生管理者を選任し、その者に、当該事業場で締結している当該請負契約に係る仕事を行う場所における第三十条第一項各号の事項を担当する者に対する指導その他厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。この場合においては、当該指名された事業者及び当該指名された事業者以外の事業者については、前項の規定は適用しない。
第十六条(安全衛生責任者)
第十五条第一項又は第三項の場合において、これらの規定により統括安全衛生責任者を選任すべき事業者以外の請負人で、当該仕事を自ら行うものは、安全衛生責任者を選任し、その者に統括安全衛生責任者との連絡その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。
2.前項の規定により安全衛生責任者を選任した請負人は、同項の事業者に対し、遅滞なく、その旨を通報しなければならない。
11.
1.統括安全衛生責任者を選任した事業者で、建設業を行うものは、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、元方安全衛生管理者を選任し、その者に統括安全衛生責任者が統括管理する事項のうちから技術的事項を管理させなければならない。
2.上記1の厚生労働省令で定める資格を有する者は、以下の1から3の者をいう。
1.学校教育法による大学又は高等専門学校における理科系等の正規の課程を修めて卒業した者等で、その後3年以上建設工事の施工における安全衛生の実務に従事した経験を有するもの
2.学校教育法による高等学校又は中等教育学校において理科系等の正規の学科を修めて卒業した者で、その後5年以上建設工事の施工における安全衛生の実務に従事した経験を有するもの
3.1,2に掲げる者のほか、厚生労働大臣が定めるもの。
☆元方安全衛生管理者の選任義務は、建設業のみ。
☆統括安全衛生責任者を選任すべき事業者以外の請負人で、当該仕事を自ら行うものは、安全衛生責任者を選任し、その者に統括安全衛生責任者との連絡その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。