厚生年金保険法・遺族厚生年金等
☆遺族厚生年金の支給要件、受給権者となる遺族の範囲と順位
☆遺族厚生年金の額の仕組み
☆遺族厚生年金の支給停止と失権の仕組み
☆脱退一時金
厚生年金保険法
第四節 遺族厚生年金
第58条(受給権者)
遺族厚生年金は、被保険者又は被保険者であった者が次の各号のいずれかに該当する場合に、その者の遺族に支給する。ただし、第一号又は第二号に該当する場合にっては、死亡した者につき、死亡日の善治うtにおいて、死亡日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の三分の二に満たないときは、この限りでない。
一 被保険者(失踪の宣告を受けた被保険者であって、行方不明となった当時被保険者であったものを含む)が、死亡したとき。
二 被保険者であった者が、被保険者の資格を喪失した後に、被保険者であった間に初診日がある傷病により当該初診日から起算して五年を経過する日前に死亡したとき。
三 障害等級の一級又は二級に該当する障害の状態にある障害厚生年金の受給権者が、死亡したとき。
四 老齢厚生年金の受給権者(保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が二十五年以上である者に限る)又は保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が二十五年以上である者が、死亡したとき。
2.前項の場合において、死亡した被保険者又は被保険者であった者が同項第一号から第三号までのいずれかに該当し、かつ、同項第四号にも該当するときは、その遺族が遺族厚生年金を請求したときに別段の申出をした場合を除き、同項第一号から第三号までのいずれかのみに該当し、同項第四号には該当しないものとみます。
第59条(遺族)
遺族厚生年金を受けることができる遺族は、被保険者又は被保険者であった者の配偶者、子、父母、孫又は祖父母であって、被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時(失踪の宣告を受けた被保険者であった者にあっては、行方不明となった当時)その者によって生計を維持したものとする。ただし、妻以外の者にあっては、次に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。
一 夫、父母又は祖父母については、五十五歳以上であること。
二 子又は孫については、十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にあるか、又はに十歳未満で障害等級の一級若しくは二級に該当する障害の状態にあり、かつ、現に婚姻をしていないこと。
2.前項の規定にかかわらず、父母は、配偶者又は子が、孫は、配偶者、子又は父母が、祖父母は、配偶者、子、祖父母又は孫が遺族厚生年金の受給権を取得したときは、それぞれ遺族厚生年金を受けることができる遺族としない。
3.被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時胎児であった子が出生したときは、第一項の規定の適用については、将来に向かって、その子は、被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時その者によって生計を維持していた子とみなす。
4.第1項の規定の適用上、被保険者又は被保険者であった者によって生計を維持していたことの認定に関し必要な事項は、政令で定める。
第59条の2(死亡の推定)
船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となった際現にその船舶に乗っていた被保険者若しくは被保険者であった者若しくは船舶に乗っていてその船舶の航行中に行方不明となった被保険者若しくは被保険者であった者の生死が三月間わからない場合又はこれらの者の死亡が三月間以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期がわからない場合には、遺族厚生年金の支給に関する規定の適用については、その船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となった日又はその者が行方不明となった日に、その者は、死亡したものと推定する。航空機が墜落し、滅失し、若しくは行方不明となった際現にその航空機に乗っていた被保険者若しくは被保険者であった者若しくは航空機に乗っていてその航空機の航行中に行方不明となった被保険者若しくは被保険者であった者の生死が三月間わからない場合又はこれらの者の死亡が三月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期がわからない場合にも、同様とする。
遺族厚生年金の年金額
厚生年金の年金額は、死亡した日の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額。
報酬比例部分の計算で、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算。
65歳以上で老齢厚生(退職共済)年金を受け取る権利がある人が、配偶者の死亡による遺族厚生年金を受け取るときは、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額と、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自分の老齢厚生年金の額の2分の1の額を合算した額を比較し、高い方の額が遺族厚生年金の額となる。
第61条
配偶者以外の者に遺族厚生年金を支給する場合において、受給権者の数に増減を生じたときは、増減を生じた月の翌月から、年金の額を改定する。
第62条※中高齢寡婦加算
遺族厚生年金(第58条第1項第4号に該当することにより支給されるものであって、その額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が二百四十未満であるものを除く)の受給権者である妻であってその権利を取得した当時四十歳以上六十五歳未満であったもの又は四十歳に達した当時当該被保険者若しくは被保険者であった者の子で国民年金法第37条の2第1項に規定する要件に該当するものと生計を同じくしていたものが六十五歳未満であるときは、第60条第1項第1号の遺族厚生年金の額に同法第38条に規定する遺族基礎年金の額に四分の三を乗じて得た額(その額に五十円未満の端数が生じたときは、これを切り捨て、五十円以上百円未満の端数が生じたときは、これを百円に切り上げる)を加算する。
2.前項の加算を開始すべき事由又は同項の加算を廃止すべき事由が生じた場合における年金の額の改定は、それぞれ当該事由が生じた月の翌月から行う。
加給年金の受給要件と加給年金額
厚生年金保険の被保険者期間が20年(※又は共済組合等の加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が40歳(女性と坑内員船員は35歳)以降15年から19年)以上ある人が、65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に達した時点)で、その方に生計を維持されている配偶者または子がいるときに加算される。
65歳到達後(または定額部分支給開始年齢に達した後)、被保険者期間が20年以上となった場合は、在職定時改定時、退職改定時(または70歳到達時)に生計を維持されている配偶者または子がいるときに加算される。
加算年金額加算のためには、届出が必要。
加給年金は、下記の年齢制限(配偶者は65歳未満ただし大正4月1日以前生まれの配偶者には年齢制限なし、子どもは18歳到達年度の末日まで、1,2級の障害の状態にある子は20歳到達年度の末日まで)に該当しなくなった場合のほか、離婚、死亡等により生計を維持されなくなったときに加算が終了する。
加算年金の額は、配偶者と1,2人目の子については各234,800円、3人目以降の子は各78,300円。
第63条(失権)
遺族厚生年金の受給権は、受給権者が次の各号のいずれかに該当するに至ったときは、消滅する。
一 死亡したとき。
二 婚姻(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあ場合を含む)をしたとき。
三 直系血族及び直系婚族以外の者の養子(届出をしていないが、事実上養子縁組関係と同様の事情がある者を含む)となったとき。
四 離縁によって、死亡した被保険者又は被保険者であった者との親族関係が終了したとき。
五 次のイ又はロに掲げる区分に応じ、当該イ又はロに定める日から起算して五年を経過したとき。
イ 遺族厚生年金の受給権を取得した当時三十歳未満である妻が当該遺族厚生年金と同一の支給事由に基づく国民年金法による遺族基礎年金の受給権を取得しないとき・・・当該遺族厚生年金の受給権を取得した日から五年
ロ 遺族厚生年金と当該遺族厚生年金と同一の支給事由に基づく国民年金法による遺族基礎年金の受給権を有する妻が三十歳に到達する前に当該遺族基礎年金の受給権が消滅したとき・・・当該遺族基礎年金の受給権が消滅した日
第64条(支給停止)
遺族厚生年金は、当該被保険者又は被保険者であった者の死亡について労働基準法第79条の規定による遺族補償の支給が行われれるべきであるときは、死亡の日から六年間、その支給を停止する。
第64条の2
遺族厚生年金(その受給権者が六十五歳に達しているものに限る)は、その受給権者が老齢厚生年金の受給権を有するときは、当該老齢厚生年金の額に相当する部分の支給を停止する。
第65条
第62条第1項の規定中高齢寡婦加算によりその額が加算された遺族厚生年金は、その受給権者である妻が当該被保険者又は被保険者であった者の死亡について国民年金法による遺族基礎年金の支給を受けることができることきは、その間、同項の規定により加算する額に相当する部分の支給を停止する。
第65条の2
夫、父母又は祖父母に対する遺族厚生年金は、受給権者が六十歳に達するまでの期間、その支給を停止する。ただし、夫に対する遺族厚生年金については、当該被保険者又は被保険者であった者の死亡について、夫が国民年金法による遺族基礎年金の受給権を有するときは、この限りでない。
第66条
子に対する遺族厚生年金は、配偶者が遺族厚生年金の受給権を有する期間、その支給を停止する。ただし、配偶者に対する遺族厚生年金が前条本文、次項本文又は次条の規定によりその支給を停止されている間は、この限りでない。
2.配偶者に対する遺族厚生年金は、当該被保険者又は被保険者であった者の死亡について、配偶者が国民年金法による遺族基礎年金の受給権を有しない場合であって子が当該遺族基礎年金の受給権を有するときは、その間、その支給を停止する。ただし、子に対する遺族厚生年金が次条の規定によりその支給を停止されている間は、この限りでない。
経過的寡婦加算
次のいずれかに該当する場合に遺族厚生年金に加算される。
・昭和31年4月1日以前生まれの妻に65歳以上で遺族厚生年金の受給権が発生したとき
・中高齢の加算がされていた昭和31年4月1日以前生まれの遺族厚生年金の受給権者である妻が65歳に達したとき
※経過的寡婦加算の額は、昭和61年4月1日から60歳に達するまで国民年金に加入した場合の老齢基礎年金の額と合わせると、中高齢寡婦加算の額と同額程度になるよう決められている。