労働者災害補償保険法・目的等、業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害
労働者災害補償保険法
第一章総則
第一条
労働者災害補償保険は、業務上の事由、事業主が同一人でない二以上の事業に使用される労働者(複数事業労働者)の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由、複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もって労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。
第二条
労働者災害補償保険は、政府が、これを管掌する。
第二条の二
労働者災害補償保険は、第一条の目的を達成するため、業務上の事由、複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に関して保険給付を行うほか、社会復帰促進等事業を行うことができる。
第三条
この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする。
2.前項の規定にかかわらず、国の直営事業及び官公署の事業(労働基準法別表第一に掲げる事業を除く。)については、この法律は、適用しない。
労働基準法
別表第一
一 物の製造、改造、加工、修理、洗浄、選別、包装、装飾、仕上げ、販売のためにする仕立て、破壊若しくは解体又は材料の変造の事業(電気、ガス又は各種動力の発生、変更若しくは伝導の事業及び水道の事業を含む)
二 鉱業、石切り業その他土石又は鉱物採取の事業
三 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業
四 道路、鉄道、軌道、索道、船舶又は航空機による旅客又は貨物の運送の事業
五 ドック、船舶、岸壁、波止場、停車場又は倉庫における貨物の取扱いの事業
六 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業
七 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業
八 物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業
九 金融、保険、媒介、周旋、集金、案内又は広告の事業
十 映画の製作又は映写、演劇その他興行の事業
十一 郵便、信書便又は電子通信の事業
十二 教育、研究又は調査の事業
十三 病者又はきょじゃう者の治療、看護その他保健衛生の事業
十四 旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業
十五 焼却、清掃又はと畜場の事業
第五条
この法律に基く政令及び厚生労働省令並びに労働保険の保険料の徴収等に関する法律(徴収法)に基づく政令及び厚生労働省令(労働者災害補償保険事業に係るものに限る)は、その草案について、労働政策審議会の意見を聞いて、これを制定する。
第二章 保険関係の成立及び消滅
第六条 保険関係の成立及び消滅については、徴収法の定めるところによる。
第三章 保険給付
第一節 通則
第七条 この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
一 労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」)に関する保険給付
二 複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする負傷、疾病、障害又は死亡(複数業務要因災害)に関する保険給付
三 労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(通勤災害)に関する保険給付
四 二次健康診断等給付
2.前項第3号の通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。
一 住居と就業の場所との間の往復
二 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
三 第1号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動
3.労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、第一項第三号の通勤としない。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。
第3節 通勤災害に関する保険給付
第21条 第7条第1項第3号の通勤災害に関する保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
一 療養給付
二 休業給付
三 障害給付
四 遺族給付
五 葬祭給付
六 傷病年金
七 介護給付
第22条
療養給付は、労働者が通勤により負傷し、又は疾病にかかった場合に、当該労働者に対し、その請求に基づいて行う。
第13条の規定は、療養給付について準用する。
第13条
療養補償給付は、療養の給付とする。
2.前項の療養の給付の範囲は、次の各号(政府が必要と認めるものに限る。)による。
一 診察
二 薬剤又は治療材料の支給
三 処置、手術その他の治療
四 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
五 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
六 移送
3.政府は、第1項の療養の給付をすることが困難な場合その他厚生労働省令で定める場合には、療養の給付に代えて療養の費用を支給することができる。
労働者災害補償保険法施行規則
第三節 通勤災害に関する保険給付
第18条の4(通勤による疾病の範囲)
法第22条第1項の厚生労働省令で定める疾病は、通勤による負傷に起因する疾病その他通勤に起因することが明らかな疾病とする。
・複数業務要因災害による疾病の範囲は、労災保険法施行規則において、「労働基準法施行規則別表第1の2第8号及び第9号に掲げる疾病その他2以上の事業の業務を要因とすることの明らかな疾病」と規定されている。
・労災保険法において、通勤とは、労働者が、就業に関し、一定の移動を、合理的な経路及び方法により行うことをおいい、業務の性質を有するものを除くものとする。
1.目的等
・労働者災害補償保険は、業務上の事由、事業主が同一人でない2以上の事業に使用される労働者(複数事業労働者)の2以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由、複数事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もって労働者の福祉の増進に寄与することを目的としている。
・労災保険法においては、労働者を使用する事業を適用事業とするが、国の直営事業及び官公署の事業(労働基準法別表第1に掲げる事業を除く)については、同法は、適用しない。
・労働者災害補償保険等関係事務のうち、保険給付(二次健康診断等給付を除く)並びに社会復帰促進事業のうち労災就学等援護費及び特別支給金の支給並びに厚生労働省労働局長が定める給付に関する事務は、都道府県労働局長の指揮監督を受けて、所轄労働基準監督署長が行う。
労働者災害補償保険法
第三十二条
国庫は、予算の範囲内において、労働者災害補償保険事業に要する費用の一部を補助することができる。
2.目的等
・2以上の労災保険の適用事業に使用される労働者については、それぞれの事業における労働時間数又は賃金の額の多寡にかかわらず、それぞれの事業において労災保険法の適用がある。
・派遣労働者が、派遣先の指揮命令を受けて従事した労働によって生じた業務災害については、派遣元の事業を労災保険の適用事業として保険給付が行われる。
・常時3人の労働者を使用する個人経営の林業の事業については、労災保険の強制適用事業となる。
・労災保険の暫定任意適用事業の事業主は、その事業に使用される労働者の過半数が希望するときは、労災保険の加入の申請をしなければならない。
3.目的等
労災保険は、業務上の事由、事業主が同一人でない2以上の事業に使用される労働者(複数事業労働者)の2以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由、複数事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もって労働派の福祉の増進に寄与することを目的とする。
4.業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害
「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(令和5年9月1日付け基発0901第2号)においては、次の①、②、③のいずれの要件も満たす対象疾病(本認定基準で対象とする疾病をいう)は、労働基準法施行規則別表第1の2第9号に規定する精神及び行動の障害又はこれに付随する疾病に該当する業務上の疾病として取り扱うこととされている。
①対象疾病を発病していること。
②対象疾病の発症前おおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること。
③業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと。
基発1018第1号
都道府県労働局長宛
血管病変等を著しく憎悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について
表記については、平成13年12月12日付基発第1063号通達により示してきたところであるが、今般、「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」の検討結果を踏まえ、別添の認定基準を新たに定め、令和3年9月15日から施行するので、今後の取扱いに遺漏なきを期されたい。
なお、本通達の施工に伴い、1063号通達及び昭和62年10月26日付け基発第620号は廃止する。
血管病変等を著しく憎悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準
第1 基本的な考え方
脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。以下「脳・心臓疾患」という)は、その発症の基礎となる動脈硬化等による血管病変又は動脈瘤、心筋変性等の基礎的病態(血管病変等)が、長い年月の生活の営みの中で徐々に形成、進行及び憎悪するといった自然経過をたどり発症するものである。
しかしながら、業務による明らかな過重負荷が加わることによって、血管病変等がその自然経過を超えて著しく憎悪し、脳・心臓疾患が発症する場合があり、そのような経過をたどり発症した脳・心臓疾患は、その発症に当たって業務が相対的に有力な原因であると判断し、業務に起因する疾病として取り扱う。
このような脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす業務による明らかな過重負荷として、発症に近接した時期における負荷及び長期間にわたる疲労の蓄積を考慮する。
これらの業務による過重負荷の判断に当たっては、労働時間の長さ等で表される業務量や、業務内容、作業環境等を具体的かつ客観的に把握し、総合的に判断する必要がある。
第2 対象疾病
本認定基準は、次に掲げる脳・心臓疾患を対象疾病として取り扱う。
1.脳血管出血(脳出血)
(1)脳内出血(脳出血)
(2)くも膜下出血
(3)脳梗塞
(4)高血圧性脳症
2.虚血性心疾患等
(1)心筋梗塞
(2)狭心症
(3)心停止(心臓性突然死を含む)
(4)重篤な心不全
(5)大動脈解離
3.認定要件
次の1、2又は3の業務による明らかな過重負荷を受けたことにより発症した脳・心臓疾患は、業務に起因する疾病として取り扱う。
1.発症前の長期間(おおおむね6ヶ月間)にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務(長期間の過重業務)に就労したこと。(発症前おおむね6ヶ月より前の業務については、疲労の蓄積に係る業務の過重性を評価するに当たり、付加的要因として考慮する。)
2.発症に近接した時期(おおむね発症前1週間)において、特に過重な業務(短期間の過重業務※)に就労したこと。
☆特に過重な業務とは、日常業務に比較して特に過重な身体的、精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務をいうものえあり、日常業務に就労する上で受ける負荷の影響は、血管病変等の自然経過の範囲にとどまるものである。ここでいう日常業務とは、通常の所定労働時間内の所定業務内容をいう。
3.発症直前から前日までの間において、発症状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したこと。
☆業務の過重性の具体的な評価に当たっては、疲労の蓄積の観点から、以下に掲げる負荷要因について十分検討する。
a 労働時間の評価
疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間に着目すると、その時間が長いほど、業務の過重性が増すところであり、具体的には、発症日を起点とした1ヶ月単位の連続した期間をみて、
①発症前1ヶ月ないし6ヶ月間にわたって、1ヶ月当りおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること。
②発症前1ヶ月間におおむね100時間又は発症前2ヶ月間ないし5ヶ月間にわたって、1ヶ月当りおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できることを踏まえて判断すること。ここでいう時間外労働時間数は、1週間当たり40時間を超えて労働した時間数である。
労働者災害補償保険法
第三章 保険給付
第一節 通則
第七条 この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
一 労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(業務災害)に関する保険給付
二 複数事業労働者(これに類する者として厚生労働省令で定める物を含む)の二以上の事業の業務を要因とする負傷、疾病、障害又は死亡(複数業務要因災害)に関する保険給付
三 労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(通勤災害)に関する保険給付
四 二次健康診断等給付
5.業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害
労働者が、就業に関し、厚生労働省令で定める就業の場所からほかの就業の場所へ移動する際に被った通勤災害は、その終点たる厚生労働省令で定める就業の場所に係る事業場の保険関係に基づき処理される。
基発1228第1号
平成28年12月28日
〇労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する省令の施行について
(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
6.業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害
労災保険法による保険給付の対象となる業務上の疾病の範囲は、労働基準法施行規則別表第1の2で以下の通り定められている。
(1)業務上の負傷に起因する疾病
2~7 略
(8)長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく憎悪させる業務による脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む)、重篤な心不全若しくは大動脈解離又はこれらの疾病に付随する疾病
(9)人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の障害又はこれに付随する疾病
(10)前各号に掲げるもののほか、厚生労働大臣の指定する疾病
(11)その他業務に起因することの明らかな疾病
労働基準法施行規則
第三十五条
法第75条第2項の規定による業務上の疾病は、別表第1の2に掲げる疾病とする。
別表第1の2
一 業務上の負傷に起因する疾病
二 物理的因子による次に掲げる疾病
三 身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する次に掲げる疾病
四 化学物質等による次に掲げる疾病
五 粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症又はじん肺法に規定するじん肺と合併したじん肺法施行規則第1条各号に掲げる疾病
六 細菌、ウィルス等の病原体による次に掲げる疾病
七 がん原生物質若しくはがん原生因子又はがん原生工程における業務による次に掲げる疾病
八 長時間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく憎悪させる業務による脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む)、重篤な心不全若しくは大動脈解離又はこれらの疾病に付随する疾病
九 人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の障害又はこれに付随する疾病
十 前各号に掲げるもののほか、厚生労働大臣の指定する疾病
十一 その他業務に起因することの明らかな疾病