人生で一度だけ、父親に怒られた話
今まで、そんなに怒られる経験をしてこなかったせいか、人の怒気が苦手です。例えば他の人達が言い争う場所に居合わせるだけでもビクビクしてしまいます。周りで誰かが不用意な発言をした瞬間にフォローしようとするのは、他の誰でもない自分の為なのです。そんな私ですが、過去にただ一度だけ、父親に怒られたことがあります。
小学6年のある日、お昼にお汁粉を食べていました。お餅を食べ終わって、残った小豆の汁を台所の流しにジャーっと流したところ、
父「えっ、何やってるんだ!」
こ「食べ終わったから…」
父「じゃあ味噌汁も、具だけ食べて汁は捨てるのか?」
こ「いや…」
父「今、それと同じことをしてるんだぞ!」
こ「えっ、ごめんなさい…」
父「信じられない」
最後は、怒るというより呆れるというか、見限られたような感じでした。
私としては、そうめんを食べた後のめんつゆを飲み干したりはしないのと同じ感覚でいたので、急に怒られたことに驚きました。悪い事だと解っていたらもちろんやりませんし、普段は怒らない父に言われたことが何よりショックでした。
確かに残り汁も食べ物ですから粗末にした私が悪かったと思い、それ以来、汁物や麺類は、つゆも汁も全て飲み干すようにしました。どんな食べ方が正しいのかは解らなくても、とにかく完食すれば怒られないと思ったからです。
しかし後に上京して、自販機で売っている缶入りの「おしるこ」を初めて買ってみたところ、飲んでみてビックリ。なんと、お餅が入っていないのです!
そんなことがあるのかと色々調べてみた結果、実は「お汁粉」とは小豆を煮た甘い汁自体を指していたことが判明しました。ずっと私はお汁粉を「甘い汁を浸けたお餅」の名前だと認識していて「お餅が入っていないからお汁粉ではない」と思っていたのは、大きな間違いでした。
ということは、あの日の私は、お汁粉の残り汁を捨てたのではなく、お汁粉その物を捨てたことになります。怒られた当時は少し釈然としない気持ちもありましたが、やはり怒られて当然でした。本当にごめんなさい…。
もし皆さんの周りで、お餅を食べ終わった後のお汁粉を捨てようとしている人がいましたら、なるべく優しく指摘してもらえると嬉しいです。その人もきっと悪気はないと思うので…何とぞよろしくお願い致します。