大人になって味わえるもの
子供のころ、星の王子様を読んで意味が分からなかったけど、大人になってとても感動したというのはよく聞く話。
良さが分かるようになるまで時間がかかるものは多い。
ビジネス書は即効性がある。問題があって、それに対する解決策が載っているとか。こうした方が良いと何かしら道しるべが記されているとか。
小説はあとからじわじわ効いてくる。読み始めは面白くないと思っていたのに、読み終わったら泣いていたり。数日経って、ふと内容を思い返したり。
葉巻は小説のよう。味わうのに時間がかかるのだ。
長さの分だけ時間がいる。きちんと吸うには最低でも30分。大きさによって2時間じゃ足りないこともある。
年上の方で、葉巻を1,2回吸ったけどなにが良いのか分からなくてやめたと言う人は多い。
吸ってすぐ、良さが分かるとは限らないのに。
私が初めて葉巻を吸ったとき、帰宅してすぐと寝る前、起きてからと朝食の後、計4回歯磨きをしたのはいまでも忘れられない。
煙を口の中に入れては出し、家で頑張って歯を磨く。それを何回か繰り返していくうちに歯磨きをする回数が減り、口の中がもごもごする感覚がなくなり、煙が味わえるようになる。
煙の味を楽しめるようになったらこっちのもの。
新しいジャンルの小説が面白くなり、色々な作家に手を出すのと同じ感覚で、色々なブランドの葉巻を吸う。この葉巻はビターテイストだとか、この葉巻は軽めだとか、種類によって違いがある。
同じ葉巻でも、気分や状況によって味が変わることがある。この間吸って美味しかったのに、今日は味がしないとか、前は苦いだけだったのにその中の甘みが分かるようになるとか。
初めて葉巻を吸ってみてよく分からなかったとしても、本をしまっておいてたまに読み返すのと同じように、思い出したら吸って欲しい。
良さに気づいて、時間と共に味わえるようになるから。