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思春期の子どもと仲間とカヌー


12歳。

中学1年生の次女と仲間たちが、江ノ島で開催されたアウトリガーカヌーの大会に挑戦しました。

江ノ島の片瀬東浜にアウトリガーカヌーが20艇以上ずらりと並び、小学生からシニアまで漕ぐことが大好きな老若男女に囲まれての雰囲気は圧巻です。


「眠いよー」とか言いながらじどうかんを出発した皆も、会場に到着してお祭りのような場の空気を吸い、海上に設置されたブイを見たらムクムクと実感が湧いてきた様子。

「ちょっと緊張してきた!」
「あそこにいる緑のTシャツのチームは中高生じゃね?」

なんて話しながら開会式に出て、コース説明を聞きます。


江ノ島を出発し、2キロ沖合に設置されたブイを折り返し、江ノ島に戻るという4キロのレースです。

(浜から見える2つのブイの間のスタートラインを眺めながら)「あそこに5分前に到着して、うまく操船しながら他の皆と並ぶの、難しそう!」

「4キロって本気で漕いだらどのくらい?20-30分?そんな距離、ダッシュの全力で漕ぎ続けたことあったっけ?」

「そもそも、(12−13歳の自分達だけで)コースも間違えず、他のチームと接触もせずに無事に戻ってくることができるのかな?」


たくさんの問いを抱え、緊張感を持ったまま、コーチのたくちゃんと作戦会議。

改めてシート順やペース配分、互いへの声のかけあい方なども確認して...

いよいよスタート!!


ホーン音と共に、数十艇が漕ぎはじめました。

大人たちに混ざったジュニアチームは全部で5艇ありました。とびうおユースは一番若いチームです。

トップ2艇は中3〜高校生の強豪チームで、しかも「OC6」よりもずっと軽い「V6」に乗っていることで、ぐんぐん前へと行ってしまいます。

って、条件がどうあれ、速い艇がどんどん前に行くのを見て、焦りを感じないわけがありません。早く前に進もうという気持ちが、とびうおユースのキャッチのペースをどんどん早くしていきます…!


1番、K。
しっかりとした前傾。前に進むという気迫と、全力の漕ぎ。トレランと陸上部で鍛えた脚力と体力が眩しい。パドルを指す角度が父でありコーチのたくちゃんに似てきていて、ちょっと泣けます。

2番、Y。
1番をしっかりとフォロー。普段はおしゃれとおしゃべりに余念のないJCですが、ハイペースなKの漕ぎに、全身全霊でついていっているのが遠目にもわかります。健気な横顔にグッときました。

3番、S。
しっかりと前を見据え、集中している表情に心奪われた。普段はめっちゃマイペースなS、いい声でコールするんだよね。長いレースでコールをかけ続けるお役目、お疲れさま!

4番、W。
実はカヌー歴7年の大ベテラン。ちょっと前まで隙あらば海に飛び込んで遊びたかったW。ひとまわり大きくなった身体で大きく前に伸ばした腕と軸のある漕ぎが、頼もしかった〜。

5番、R。
最近の練習ではちょっとフニャっとしてたのに、何、その真剣な顔〜!!これ以上ないくらい腕を伸ばし、しっかりと体重の乗った圧巻の漕ぎ。迷いない眼差し、感動したよ。

6番、A。
「スタートラインに入れるかな…?」と言いながら出発していたけど、堂々たるステア(舵取り)ぶり。皆で作る水流の抵抗にならないように細かいポークで航路を作りながら、合間に自分も全力で漕ぐ!後ろから全体を見て、メンバー全体への声かけも忘れません。


一人ひとりの気迫と漕ぎが本当に素晴らしくて、伴走船から見ていて熱く込み上げてくるものがありました。

だけど。

ペースが早くなれば、合わない人が出てくる…!

キャッチが上滑りして、深くからしっかり水をとらえられなくなる…!

ゆっくりでも、6人で深くしっかり水を捉え、ひとつの水流を作るほうが、カヌーはぐんぐん進みます。そんなこと、皆もわかっているはずなんだけどな...!

「がんばれ、とびうおー!」
「リラックスだよー!」
「ゆっくりー!」
「落ち着いてー!」

船から観戦した母たちが必死になってかけていた声は、(後から聞いたら)カヌーでも、お互いに掛け合っていた声のようでした。


前半は緊張から、他のチームに随分離されてしまいましたが、「ブイを回航してからは少しずつ皆のペースが合うようになってね、後半は気持ちよく進む感じを実感できたよ!」。

それでも結果は、ジュニア5チーム中、5位。


「浜で待っていて、みんな落ち込んじゃうかな?とか思ってたんだけど、それぞれにいい顔して戻ってきたんだよね。一人ひとりに話を聞いたけど、協力しながらチカラを出し切って、すごくいい感じだったよ」と監督たくちゃん。


勝負の話でいえば、OC6とV6は違う乗り物だから、道具が違ったのは大きかった。ジュニアではもう1艇だけOC6が出ていたけれど、そちらのステア(舵取り)には抜群に漕げる大人が乗っていたりもしたから、見ていた親としては思わず「同じ条件で勝負させてやりたかった...!」と感じてしまいます。

一方で、子どもたちは条件的に不利だったとかそういう言い訳は一切なく全力を出しきって「ビリになっちゃったね」「でも後半はみんなの息が合ってきたよね」とお互いの検討を讃えあったり、次回に向けてできることを話したり。勝負を超えたところにある一体感や気持ちよさ、子どもの美しさを感じさせてもらいました。

6人乗りカヌーって、この時期の子どもたちと相性がとてもいい。

キャッチのタイミングを6人で合わせることも、丹田に力を込めて全身の体重をカヌーに乗せていくことも、言葉でいうのは簡単だけど、実際に「わかる」には、身体でそれを感じる他にありません。

頼れるものが自分と仲間しかない外洋に出てカヌーを漕ぐ。言葉は介在しなくても五感で感じきる、自然とのいい対話の時間です。


中学生になると皆それぞれに部活や塾、他のスポーツも忙しいけれど、わたしがアメリカのミドルスクールにいた時は「3年間同じ部活に情熱を注ぐ」人はごく一部だけで、大半の皆は、兼部をしたり、シーズンごとに取り組むスポーツを変えていました。

若い時はできるだけ多様な仲間との輪があり、できるだけ多様な身体の動かし方を知り、できるだけ多様な価値観に触れてほしいなーと思います。

その意味で、小学校時代からの仲間たちと一緒に月に数回でも海に集まって練習して、初めて大きなカヌー大会に出場して、最年少チームとして貴重な時間を過ごさせてもらったね。

さあ次は、7月末の熱海遠征。

アウトリガーカヌーに乗って、漁船に伴走してもらってメンバーを交代しながら、逗子海岸から熱海長浜までの65km(相模湾横断!)を人力でやってみようという壮大な遊びが待ってます。

これからもできる範囲で海に集まっていい時間を過ごして、たまにこうして大会や遠征に挑戦するのを楽しんでいけたらいいな。

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