先日、『スローフード宣言〜食べることは生きること』出版記念トークの第2弾で、シェ・パニース元料理長のジェローム・ワーグさんにお話を伺いました。
そんな風に語ってくれたジェロームは、アリスが息子のように大切にしている人。「アリスが最も愛した料理長」という表記を読んだこともあります。
まずはアリスとの出会いを聞きました。
ジェロームは、シェ・パニースで25年間働いていましたが、途中からは理事会にかけあって、料理人としての勤務を週3回に減らしたそうです。理由は、「食と政治をつなぐ表現をしたかった」から。
ベイエリア全域の美術館や広場などで「食」と「アート」を通じて、生産者、料理人、消費者をつなぐイベントを開催していたのです。
シェ・パニースは去年50周年を迎えましたが、40周年を記念して出版されたこちらの本に、ジェロームたちの記録も載っています。
以下、ジェロームの文章を意訳:
以下、サム・ホワイトさんの文章を意訳:
そんな風に、料理の枠を超えて五感に訴えるジェロームの作法は、震災後の日本にも届きました。
2011年の秋、シェ・パニースでインターンをしていたことがある野村友里さんをコーディネーターに、料理人とデザイナーの集団が4カ月間に渡り、さまざまなイベントやディナー、パフォーマンスを展開しました。その間に人生観を揺さぶられた人の数は知れず、なかでも現代美術館で開催した "OPENharvest" は、今も多くの人の心を捉えて離しません。
主催のジェローム自身は、その間に日本に惚れ込んでしまいました。
シェパニースを卒業し、OPENharvestに参加した料理人のひとり原川慎一郎さんと共に、神田に The Boind Donkey という店を開きました。そんなジェロームも今は結婚して、東京と徳島県神山町との二拠点生活を始め、自然や森と近い暮らしを愉しんでいます。
年を重ねるごとに、五感に働きかけることの力強さってすごいと感じます。読書やお説教から学ぶことができるのは、もともとそこに関心がある人だけだけど、感動で細胞や五感が揺さぶられるとき、誰もが何かに気づき、学ぶから。
ジェロームは、ご自身のことを「料理人としては素人だった」と言うけれど、きっと若い頃から「そのままの自分」であることや既存の枠組みを越えること、人が「ハッ」とする表現を生み出す天才だったのではないかと感じました。そして、アリスはそこを愛でていたのだろうなと。
シェ・パニースの活動の多くは、そんな自由な感性でお店を出入りした無数の才能に支えられていたのだと考えたら、妙な納得感を得ることもできました。枠組みからはみ出る情熱や才能を決して潰さず、むしろ愛して育む土壌がシェ・パニースにはあって、それが「予約のとれないレストラン」に昇華したのだとしたら...
すべての職場や学校に、そんな土壌があったらなあと思わずにいられません。
まとまらないままですが、
ジェロームにお話を伺うことができて、とにかく幸せでした!
次は、11月24日に虎ノ門にて、日本で "OPENrestaurant" に携わった料理人の野村友里さんと原川慎一郎さんのお話を伺います。お楽しみに。
https://www.shibuyabooks.co.jp/event/9226/