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第七話: 土の試練
エリスピリは風と火の試練を乗り越え、次に待ち受ける土の精霊の試練に挑むため、荒れた大地を歩いていた。土の精霊の力は重く、安定したものだと聞いていたが、その力をどのように使うのか、エリスピリは少し不安を感じていた。
「えっと、次は土の精霊かぁ…」
エリスピリは自分に言い聞かせるように呟きながら、大きな息を吐いた。土の試練はこれまでの試練とは違い、力を使うだけでは乗り越えられないと聞いている。どうすればいいのか、まだ分からないまま歩き続けた。
「うわっ!すっごい大きな岩だぁ!」
エリスピリは周囲の巨大な岩を見上げ、目を輝かせたが、その後すぐに緊張が顔に浮かんだ。荒れた大地、揺れる大地、そして不安を感じさせる巨大な岩。土の精霊の力を感じると、エリスピリは少し怖くなった。
「これ、どうやって戦うの?土って…強すぎるよぉ。」
思わず呟きながら、彼女は少し後ろに下がった。
その時、突然、地面が揺れ始め、土の精霊が現れた。巨大な岩のような姿で、静かにエリスピリを見下ろしていた。
「お前が土の試練を受けに来たか。」
土の精霊の声は深く、重たく響いた。
「うわっ…!ちょっと、こわっ…」
エリスピリは思わず後ろに一歩退く。土の精霊の力が圧倒的で、心臓がドキドキと速くなる。
「土の精霊は、安定と強さを試すものだ。」
土の精霊は続けた。「無理に力を使わず、冷静さを保て。」
「冷静さを保つ…?」
エリスピリはその言葉に少し戸惑うが、すぐに「よし、頑張る!」と心の中で決意を固める。
「じゃあ、始めるよ!」
土の精霊が手を一振りすると、突然大地が大きく揺れ、岩が空中に浮かび上がった。エリスピリはその激しい揺れに驚き、足元がふらつきながらも必死に耐えようとする。
「わっ!えっと、どうしよう!?」
大きな岩が迫り、エリスピリはバランスを取ろうと必死になった。足元がガタガタ揺れて、立っているのがやっとだ。
「怖いよぉ、これ!」
エリスピリは目を大きく見開き、周囲に迫る岩を避けながら必死に後退するが、何度も足元が不安定になり、転びそうになる。
「ダメだ、避けられないよぉ!」
焦る気持ちを抑えきれず、エリスピリはつい叫んだ。そのとき、土の精霊の冷徹な声が響く。
「無駄な力を使うな。」
その声に驚き、エリスピリは一瞬立ち止まる。心が少し冷静になった。
「え…無駄な力?でも、岩が来てるよぉ!」
エリスピリは不安そうに岩を見ながら、どうすればいいのかを必死に考える。
「でも、無理に力を使ったらダメなんだよね…」
エリスピリは心の中で自分に言い聞かせる。「よし!私は冷静にしなきゃ!」
そのとき、エリスピリは気づいた。岩を力で押し返すことはできない。その強さをどう受け入れ、調和していけばいいのか。それを考えながら、エリスピリは目を閉じて深呼吸した。
「私は…できる!」
彼女は力を入れず、ただ静かに大地を感じ取ろうとした。震える大地、その力を受け入れ、恐れずにその力と調和する。力を無駄に使うことなく、冷静さを保ちながら大地の動きを感じる。
しばらくして、周囲の岩が少しずつ静まり、大地の揺れも収まってきた。
「これが…調和…かな?」
エリスピリはその感覚に安堵し、少し微笑んだ。大地と心がひとつになったような感覚が広がり、周りの岩が静かに降りていくのを感じた。
土の精霊は静かにその様子を見守っていたが、やがてその深い声が響いた。「お前は、力を無駄にせず、大地と調和することができた。それが本当の強さだ。」
その言葉に、エリスピリは心の中で少しホッとした。試練を乗り越えたのだと実感した。
「次は、水の精霊かぁ…」
エリスピリは新たな試練に向けて、また一歩踏み出した。