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【論文瞬読】言語モデルの内部知識vs外部文脈:RAGの振る舞いを機械的に解明した最新研究

こんにちは、皆さん!今日は自然言語処理の分野で注目を集めている研究について、ちょっとディープな内容をお届けしようと思います。

最近、言語モデルの応答を拡張するために外部の文脈情報を利用する手法、Retrieval Augmented Generation (RAG) が人気を博しています。RAGは、検索システムを利用して関連する情報を取得し、それを言語モデルに組み込むことで、より正確で豊かな応答を生成することができます。でも、その正確な仕組みってまだあまりよく理解されていないんですよね。そこで登場したのが、今回紹介する研究なんです!

タイトル:From RAGs to rich parameters: Probing how language models utilize external knowledge over parametric information for factual queries
URL:https://arxiv.org/abs/2406.12824
所属:University of Massachusetts, Amherst, Microsoft, University of Maryland, College Park
著者:Hitesh Wadhwa, Rahul Seetharaman, Somyaa Aggarwal, Reshmi Ghosh, Samyadeep Basu, Soundararajan Srinivasan, Wenlong Zhao, Shreyas Chaudhari, Ehsan Aghazadeh

RAGの振る舞いを機械的に分析

この研究では、因果媒介分析、注意貢献度、ノックアウトという3つの手法を用いて、LLaMaPhi ファミリーのモデルにおけるRAGの機械的な振る舞いを詳細に分析しています。

  • 因果媒介分析:特定の隠れ状態が事実の予測に大きな影響を与えているかを特定する手法。

  • 注意貢献度:注意機構が言語モデルの出力を形成する上でどのような役割を果たしているかを調査する手法。

  • ノックアウト:予測の質を維持するために不可欠な注意エッジを特定する手法。

RAGを利用した事実に基づくQAシステムのセットアップ

これらの手法を駆使して、研究チームは驚くべき発見をしたんです!RAGのコンテキストがある場合、言語モデルは質問に答えるために内部のパラメトリックな知識をほとんど使わずに、主にコンテキスト情報だけを利用する「ショートカット」の傾向が強いことが明らかになったんですね。つまり、言語モデルはRAGから提供される情報を優先的に使っているってことです。

RAGコンテキストがある場合とない場合のLLaMa-2とPhi-2の
MLPにおける平均間接効果(AIE)の比較

この図から、RAGコンテキストがある場合、MLPのパラメトリックメモリへの依存度が大幅に減少していることがわかります。

さらに、注意貢献度の分析から、RAGコンテキストがある場合、クエリ内の主語トークンから最後のトークンへの情報の流れが減少していることが明らかになりました。

RAGコンテキストがある場合とない場合の、
LLaMa-2とPhi-2における主語トークンから最後のトークンへの注意貢献度の比較

加えて、ノックアウトの実験でも、RAGコンテキストがある場合、主語トークンから最後のトークンへの注意をノックアウトしても、予測確率にはわずかな影響しか与えないことが示されました。

RAGコンテキストがある場合、主語トークンから
最後のトークンへの注意をノックアウトしても、minimal effectしか生じない

この発見は、RAGの活用におけるモデルの振る舞いを理解する上で重要な手がかりになります。言語モデルが外部の情報をどのように処理しているのか、そしてそれが予測にどのような影響を与えているのかを知ることは、より効果的なRAGシステムを設計する上で欠かせません。

今後の展望は?

この研究の知見は、RAGの活用におけるモデルの振る舞いを理解する上で重要な手がかりを提供しています。今後のRAGシステムの設計や改善に役立つことが期待されます。

ただ、まだ解明されていない点も多いんです。例えば、長いコンテキストでの影響やファインチューニングされたモデルでの振る舞いなど。また、研究で使用されたデータセットは事実に基づく質問に限定されていたので、他のタイプの質問でも同じような傾向が見られるのかどうかは分かりません。さらに、RAGのコンテキストの品質が予測に与える影響についても、まだ十分に調査されていません。

これらの課題は、今後の研究で取り組むべき重要なポイントです。RAGシステムの可能性を最大限に引き出すためには、さらなる研究と実験が必要不可欠ですね。

自然言語処理の未来に向けて

自然言語処理の分野では、外部知識の活用が重要なテーマの一つです。この研究は、その理解を深める上で意義のある一歩を踏み出したと言えるでしょう。

この知見を活かして、より効果的で信頼性の高いRAGシステムの開発が進むことを期待しています。将来的には、RAGを活用した高度な対話システムや、知識集約型のタスクへの応用など、さまざまな可能性が広がっています。

自然言語処理の未来は、まだまだワクワクすることばかりですね!この研究をきっかけに、さらなる発展と革新が生まれることを楽しみにしています。