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立入禁止のわくわく部屋
こんにちは、愛音です
小学校を卒業するくらいまで、祖母の部屋が立入禁止になることがよくありました。
「おばあちゃんの部屋、しばらく入っちゃダメだよ」
「はぁーい!」
立入禁止になるのには理由がしっかりありました。それもわくわくするような理由が。
祖母は若い頃洋裁、和裁、どちらも学んでいました。月日が経ってもその腕は衰えずに私にワンピースや浴衣を。母にはジャケット、エプロンなどを作ってくれました。
そう、立入禁止になるのは服を作る時なんです。まち針や縫い針、裁ちばさみなど危ない道具が部屋に広がるので、私が遊んで怪我をしないように立入禁止になるというわけ。
立入禁止になっても私は襖を開けて、部屋に入らないギリギリ位置から洋服作りを見ていました。一緒に選び買いに行った可愛い生地がはさみで切られて、まち針で型紙を固定、そして足踏みミシンでダダダっ!!!とミシンをかけていく。
見ているとどんどん形が変わっていき、だんだんとワンピースの形になると心はもうわくわくでした。
「調整するから、こっちにおいで」
「うん!!!」
呼ばれると立入禁止部屋に入り、完成手前のワンピースを着てみる。祖母は前後ろ、横、と様々な角度から見て調整していきます。
ワンピースを脱ぐとその数日後には完成。母と祖母と選んだ大好きな生地のワンピース。ボタンやワンポイントの飾りも手を抜くことはしない。
残念ながらワンピースや浴衣は手元にありませんが、母のために作った冬用ジャケットは私が今、受け継ぎ着ています。世界でただ1つ。手作りなのに手作りさを感じさせないデザインで、こうして今も着ているのが誇らしくもあります。
立入禁止部屋
そこは祖母のお店です
私や母のために服を一生懸命作ってくれる
凄く素敵でわくわくする秘密と魔法が詰まった部屋
*愛音*
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あの世界を覚えている
笑顔があって涙もあって
最後はいつも笑える世界を
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