演劇とクレープな木曜夜 New York, Manhattan
出会ってもうすぐ10年になる友達が居る
彼女は人生のほとんど
ずっと演劇をしてきて
今でも演者だ
昔彼女が言ったことをふと思い出した
「舞台ってさ
お客さんに払わせるのは
チケット代だけじゃないんだよ
劇場に来るまでの交通費と
そのあとにごはんでも食べよっかってなるかもしれない食費
帰り道寄り道でもしよっかってなるかもしれない費用
そういうものも全部
かかってるんだよね
だから
劇場に足を運ぶために腰をあげるその気持ちと
そのあとにごはんでも食べよっかってなる興奮
帰り道寄り道でもしよっかってなる余韻
そんな付加価値を
費やしてもよかったって思うそんな付加価値を
提供する役目が舞台にはあるんだよね」
昨日クイーンズで
演劇のワークショップを受けた
10年近くやってた演劇から離れて
3年も経つから
あるいは
3年しか経ってないのに
ワークショップの話を聞いた時
演技をすることが
恥ずかしいと思った
緊張するし怖いと思った
でもちょっと重たかったけど腰をあげて
稽古場まで行った
いろんなことをした
大きな声を出した
相手の目の奥を見て相手を感じた
いろんな感情を声に乗せてみた
空間を使ってエチュードをした
頭を柔らかくして
好きな事をした
表現してみた
すごく
すごく
懐かしかった
その空間が
本当に懐かしくて
ぽん、って後ろから
優しく肩をつかまれて
一回立ち止まって
浸ったら?
ってだれかに言われたような
(比喩表現もいいとこだけど)
でも本当にそんな優しい気持ちになった
心が柔軟体操したような
(比喩表現もいいとこだけど)
そんな感じ
心が健康になった気がした
私の最寄り駅に着くには
クイーンズから7番線に乗って
42丁目で乗り換える
家にそのまま帰るのはもったいない
そんな余韻に浸っていた
だから途中下車で寄り道して
ブライアントパークに行って
クリスマスシーズン限定で立ち並んでる
出店をゆっくり回った
なんか気持ちがうきうきしてお腹がすいてきた
美味しい甘いにおいがするから
歩いてみたら
クレープ屋さんがあった
肌寒い夜にあったかくてちょっと甘すぎなクレープは
すごく美味しかった
昔彼女が言ったことをふと思い出した
「劇場に足を運ぶために腰をあげるその気持ちと
そのあとにごはんでも食べよっかってなる興奮
帰り道寄り道でもしよっかってなる余韻
そういう付加価値を
提供する役目が舞台にはあるんだよね」
今日の私だ
と思った
稽古場に行って
42丁目で寄り道して
クレープを食べた
通販番組に乗っちゃったみたいに
「そういう付加価値」に
まんまと乗ってしまった
でもそのまんまと乗ってしまった自分に
いいのいいのたまには
と甘やかしたくなる
そんな気持ちになった
観客だけじゃなくて
演ずる側をも
そんな素敵な気持ちにする
舞台だけじゃなくて
演劇そのものに
そういう付加価値=力
があるのかもしれない
と思った
今一緒に留学してる友達と
演劇は人の心を平和にする
って話をした
本当に
そんな力があると
私は信じてる
※
「観客だけじゃなくて
演ずる側をも
そんな素敵な気持ちにする」
プロじゃないから
そんな呑気なことが言えるって自覚しているつもり
本気で稽古中のひとが
稽古帰りに寄り道してクレープ食べるとは思ってない
演劇の持っている力のひとつの例として
書きたかった
でもだからこそ
演劇人じゃないひとたちもみんな
もっと演劇を楽しめばいいのに
って思う
演劇に触れたあとには
綺麗な気持ちと余韻
(たまにおいしいごはん)
がついてくるのだから
っていう
クレープに9ドル払ったことを
演劇のせいにして自分を慰める
そんな今日
いいのいいのたまには
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