夢か現実か、それ以外か
『おはよう!』
私は挨拶を大切にしている。
母の教育でもあったが
自分が夢の中なのか現実にいるのか
よくわからなくなることがあるからだ。
現実なら挨拶は大抵かえってくる。
もうすぐ中学生
『あの世に行くなら早くしなきゃ』
制服の仕立てにいく。
母は嬉しそうだ。
娘がこんなに成長したのだと・・・
『母を悲しませることはしたくない。』
うなされる
現実と理想と希望と、また現実と・・・
高い所から飛び降りろと言う
「早く楽になれるよ。」
はやし立てる、その人に
『さようなら』
かえってこない・・・これは夢だ
『私は飛び降りたいだなんて言ってない!』
妙に強気の私がそこにはいた。
その人は何も言わない。
ただ風だけが強くなって私を崖から落そうとする。
よろけて、膝をついた私を見下ろして
「お前には無理だ!誰も愛せないだろ!」
この世のものではない醜い表情で言った。
『違う!私は愛してる人がいる、家族がいる!』
スッと能面のような無表情になって横目で私を見る。
「愛されなくなっても、愛していれるものかね?」
その言葉に号泣して私はハッキリ言った。
『どんなことがあっても私は愛の人である!』
何も言わずに去っていく
聞こえないだけで何か呟いていたのかも?
風はやんで青空に鳥が飛んでいる。
「お姉ちゃん起きてー!!遅刻するよー!!」
妹が身体を揺らす。
『おはよう・・・』
「うん、おはよう!早く起きないとー!!」
よかった・・・現実だ・・・
初めて悪の存在と対峙し啖呵を切った。
夢から覚めたくない、
現実から逃げたくて仕方がなかった私はそこにいない。
『現実に立ち向かうんだ!』そう決意していた。
もうすぐ中学生
元気に登校する妹の後ろに、その人はついていて
振り返って私を見て、ニタニタと笑う。
『妹には手を出すな!』
大切な人を守るにはどうしたらいいのか?
私に何ができるのか?
自問自答の日々が始まる。
本気の人生が始まった。
これは夢じゃない、現実だ・・・