『スリル・ミー』"レイ"とは何者か…
ミュージカル『スリル・ミー』東京公演、まもなく千秋楽を迎えますが、私は2021年に、この作品と出会い、"彼"と"私"の森から抜け出せなくなり、CDも繰り返し聴き、今期は1ペアのみの観劇となりましたが、そんな中で、ふとした疑問や、それについて私なりに思うことなど、本記事では"レイ"について、まとめてみたいと思います。
※ネタバレを含んでおります。
※私的感覚での解釈となります。
※シーンの順番は前後します。
※まぎらわしいので、”私”のことはレイと表記し、私は筆者を表します。
《 レイという人物 》
☆レイの思考「さあ、いいか、ぼくたち2人、共犯者」
仮釈放が認められて、自由の身になったレイが言うセリフですが、レイの思考が顕著に表れているセリフだと思う。
”共犯者”つまり、誰にも言えない秘密を共有すること=強いつながりを持つという思考。公園で再会した時に、レイの言う「ただの友達じゃないはずだろ?」の言葉からも、強く伝わってくる。
さて、この公園での再会、どちらから声をかけたのだろうか?
私は、”彼”の弟を通じて、レイが”彼”を誘ったのだと解釈している。
黙って自分から離れていってしまった”彼”をもう一度、取り戻すために…。
とある夏休みに突然1人でどこかへ行ってしまった時「壊れた船のように」なってしまったレイ、そして、再び”彼”が何も告げずに途中で大学を変わってしまった…この時の寂しさや孤独感が、強烈なトラウマになって、一生”彼”を離さない、二度とこんな思いはするもんかっていうメンタルに導いたのではないかと。
過去の経験から知っていた…”彼”が自分を必要とするとき、それは、犯罪を犯す時、「あの一本のマッチが全てに火をつけたのです」の言葉通り、公園で再会した時、レイが差し出したあのマッチ、マッチの揺れる炎、そして、そばに自分がいる………必ず、かつてのように、彼は、放火したくなるに決まってる………と、”彼”の心に火をつけた私の計画の始まり。
ただ、この再び共犯者になるという計画、この時点で、レイは一体、どこまで想定していたのか…。
☆「何もかもお前が、お前が仕組んだ」の”何もかも”とはどこからどこまで?
ラスト近く、”彼”が言うセリフですが、ここで、私は必ず、少しの疑問にとらわれる。私のイメージでは、レイが仕組んだのは、マッチの炎で”彼”を放火に誘ったのと、”彼”が立てた殺人計画をわざとばれるようにメガネを落とした、この二つ。
でも、”彼”がこの台詞を口にする時、あたかも、最初から殺人計画までレイが導いたように聞こえてしまう。もしそうなのだとしたら、レイという人物はとんでもなく恐ろしい。そして、そんなこと可能なのだろうか?
私的見解では、共犯者として犯罪を犯し続ければ、その間はずっと”彼”は自分のそばにいてくれるから、とりあえず昔よくやってた放火から…”彼”が放火に飽きたら、また次の犯罪をそれとなく提案すれば良い…程度の計画だったのではないかと捉えている。
幼い頃から一緒にいて、全部を見てきたレイには、「もうやめよう」と言えば、必ず”彼”は、「いやもっとだ」と反論してくるのはお見通しだったのだろう。
そうして、少しずつ犯罪の程度がエスカレートして行くことは想像できたとも思うが、果たして殺人まで、想定したかどうかは、今のところ、どのペアのレイからも読み取れていない。いや、成河さんのレイは、若干、その気配を感じたかも…🤔
☆実は”彼”よりもレイの方が求めていた”契約書”
”彼”の犯罪に手を貸しても、”彼”が自分の要求に応えてくれないことに対して、レイが「もう犯罪を犯すのをやめよう」と訴えた時、見事なまでに”彼”は、レイの術中にはまり、レイを引き留めるために、契約書を作ることを提案する📃
そして、”彼”主導で作り始めた”契約書”、よく聞いてみると、タイプライターで契約書を打つレイ、”彼”の要求に対しては、「できる限りで」と自ら注釈をつけているのに、レイ側の文言は、「いかなる要求に対しても同意することを誓う」と、”彼”が拒めないようにしている。これ、”彼”は気づいていないのだろうか?
それともう一つ、血でサインをする時、”彼”は言う「前にもやったことがある」……😳え?誰と?何のために?
ここ、どのペアも、特にレイが気にしている様子はなかったように記憶してるんだけど、気にならないのかな?
血と血で交わす契約なんて、そんなにちょいちょいするもんじゃないと思うけど、それだけ”彼”にとっては、特別なことじゃないってことなのかなぁ?
さて、しばらくは、この”契約書”通りに、お互いの要求を満たしあっていたものの、いつからか、”彼”がレイの要求に応えてくれなくなってしまった。
しびれを切らしたレイは、”契約書”を盾にして、強引に”彼”に、自分の要求に応えさせてしまう。事後、満たされた表情のレイに対して、虚無な状態の”彼”…。奇しくも、自分の作った”契約書”によって、レイの要求を拒めずに、従う形になってしまった。
常に、レイの上に立ちたい”彼”にとっては屈辱的だったに違いない。そして、それは”彼”の中のリミッターが外れた瞬間だったのではないか…レイの想像が及ばない凶悪犯罪を提示することで、一旦、劣勢に陥った自分を再び優位に立たせるための殺人計画……短絡的で稚拙な承認欲求😓
さぁ、ここで、最初からここを最終地点にしていたレイなら、心の中は「しめしめ」だし、そこまでは考えていないレイなら、心の中は「やばい、いくらなんでもそこまでは…」だろう。
私は、後者であって欲しいと切に思う。
☆「メガネがないと…」
メガネの印象付けについて、契約書作成の時レイが言う「メガネがないと」…このセリフの言い方で、あえてメガネを"彼"と観客に印象付けているように見える場合と、あくまで独り言として、さらっと流している場合では、計画の中身が違ってくるような気がする。
前者の場合、すでにこの時点で、メガネを何かしらの材料として使う気があるとあるということになる。この時点で、殺人現場にメガネを落とすことを考えているのか…?
そして、事件後、"彼"に、メガネを落としたかも…と電話で伝える時の言い方と表情、これも、"彼"の反応を探るように言うのと、ホントにパニックになってるように言うパターンがあったような気がする。
どちらも、演者さんの言い方に着目したいポイント🧐
☆「弟じゃない…代わりの誰か」
"彼"が「殺す相手は俺の弟」と言った時、レイは「彼も家族だ」と言う。その言葉で、"彼"は、「だとすれば、別の誰かを」と矛先を変える。
レイが、さすがに家族を殺すのは忍びないと思って、咄嗟に助言したように受け取れるが…。
ここ、もしも、殺人計画に至ることを視野に入れていたレイなら、弟殺しだと、普段から父親が弟ばかり可愛がって、顧みられない"彼"に情状酌量の措置が下って、終身刑にはならない可能性があることを鑑みて、通り魔的な殺人に誘導したとも考えられる。だとしたら、マジで怖いし、高い知能の使い方、間違ってるー😥
☆♪戻れない道…
この曲…最初から殺人計画まで見据えていたレイと、そこまでは考えていなかったレイでは、意味合いが大きく変わってくると思っている。
前者の場合は、自分の計画通りに進んできて、本当にこれでよかったのかはわからないが、とにかくもう引き返せない…計画を予定通りに遂行しなければならない、彼を檻の中に閉じ込めるまでは…となる。
後者の場合は、共犯者として軽犯罪を手伝ってきたが、まさかこんなことになろうとは…でも、もう引き返せない…せめて、この殺人計画を最後にしよう、わざと捕まるように工作しよう…そして、2人で檻の中に閉ざされよう…となる。
私的には、圧倒的に後者であって欲しい🥺
☆「……理由ならちゃんとある」
護送車の中で、レイが語る「理由なき殺人なんて皆言ってるけど、理由ならちゃんとある。君を僕の物にするためだ」……私は、このセリフ、2通りの解釈ができると思っている。
一つ目は、"彼"のことが好きで好きで、離したくないから。
もう一つは、いつも上から目線で自分を良いように扱ってきた"彼"への仕返し。
そして、続けてレイが♪99年の中で歌う「ゲームの終わり」……こちらも、2通りの解釈ができる。
一つ目は、君が僕に仕掛けた、焦らしたり冷たく当たったりするゲームは、形成逆転、最後の勝利者は僕だよ…っていう意味。
もう一つは、君は僕にゲームを仕掛けていたけど、僕も君にゲームを仕掛けていたんだよ、そして、計画通りゲームは進み、僕の完全勝利だ…という意味。
どちらのセリフも、レイを演じる役者さんによって、見え方がかわるポイントだと思う。
☆レイという役どころ…
ここまで、分析してみた結果、レイという人物を役作る時、大きく分けて、2通りあるように思える。
一つは、"彼"への愛(と言っても、好きだという感情をぐいぐい押し出す系の好意)ゆえに、"彼"を自分だけの物にしたいレイ。
もう一つは、自分の欲求を満たしてくれる相手としての"彼"を欲し、独占し支配したいレイ。
まぁ、どちらのレイも、これまで欲しいものは全て、父親のお金で買ってもらって生きてきて、唯一、なかなか手に入らない"彼"を、最終的には、父親のお金(大金で有名な弁護士を雇ってもらった)で手に入れた形になるなぁ…と😒
演者さんによって、様々な表情が浮かび上がる"レイ"というお役、やりがいあるねぇ。そして、難しいねぇ🤭
皆様にとっては、レイとはどんな存在ですか?
そして、どなたのレイがお気に入りですか?
別記事で、"彼"についても、まとめてあります。