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記憶の中の光景|子育て

先日、以前住んでいた土地にふらっと寄った。

そこは、結婚してから娘が2歳になるまで住んでいた街。私にとっては、まさに第二の人生がスタートし、はじめての育児を経験した思い出深き地だ。

近づくにつれ懐かしさが増す。自宅だった賃貸アパートから近隣を辿っているうちに、気づけば涙がこぼれていた。

線路沿いの真っ直ぐな道。夕暮れ時、手を繋いで散歩する母と娘の後ろ姿が脳裏に浮かぶ。回想は巡り、娘が寝ている間起こさないようにとそーっと夕飯の支度をしていたこと、重ねた小さな手の感触、成長することの喜びと寂しさがセットだってことを教わったあの感情へと続いていった_。

懐かしいなあ、と泣いていた。

寂しいなあ、と泣いていた。

その光景は今この瞬間にはなく、もう記憶の中でしか存在していなくて。あの幸せの中に自分も娘も居ないのだと思ったら、言葉にならない感情が渦巻いた。

手を繋いで歩いていた。
幼子の拙いお喋りを聞いていた。
2人は笑っていた。

ただ、それだけでどれほど満たされ幸福だったか。

いつの間にこんなに欲張りになったのだろう、私は。
どこを見ているんだ、私は。
自分の傲慢さを思った。

否応なしに変わりゆくものにしがみついたり、杭てもしょうがない。けれども、変わる必要のないものまで置いてけぼりにするのは何か違う。

光景が連れてきた色んな記憶に揺さぶられ、そして、自分に問いかけた。

大切にしたいものを大切にできているか、と。

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