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第2話《人生最悪の出来事》


結婚生活も着付けの仕事もうまく行かず、実家の両親の問題もさらに大きくなり、身体も心も疲れきっていた頃・・・


友達の誘いで参加したお茶会で、Aさんと出会いました。


Aさんは、私より5歳位年上の男性で、カウンセラーを仕事にしていて、「何か悩みがあるならいつでも聞くよ。」と声をかけてくれました。


うまくいかない現実に疲れきっていた私は、悩みを打ち明け相談にのってもらうことにしました。


ところが、その人は…ある有名な財団が出している60枚組みのCDを勝手にコピーし、教材として活用しているカウンセラーという名の詐欺師でした。


悩んでいる女性をターゲットに、コピーしたCDを高額(20~50万円)で売り、さらにカウンセリングと称して、体の関係を迫るなど 卑劣な行為を繰り返していたのです。


家庭や仕事が上手くいかない相談をしたとき言われたのは、私を全否定する言葉でした。
「妻として最低だ。」
「こんな最悪な状況をよく作れたものだ。」
「能力もないのに仕事が上手くいくわけない。」


あまりに酷い言葉を浴びせられショックで泣いている私に、今度は「でも、僕にはわかる。あなただったらできるよ。」
と、優しい言葉を何度も繰り返してきました。


後で、これはよくある洗脳の手口だと知りましたが、この時は知る由もなく、私は罵倒のショックから一転「この人は私の味方だ。この人が助けてくれる。」と、すっかり信じきってしまいました。


すぐに、60枚のコピーCDを特別価格ということで15万円で購入し、毎日聴きました。


私は体の関係を迫られることはありませんでしたが、広告塔のような形で利用されました。


何度となくAさんに呼び出されては、悩みを抱えた女性とAさんと私の3人でお茶をする。
そして、一通り悩みを聞いたAさんは、

「この女性みたくなりたくない? 」

と、私を指差す。


女性達はみんな「なりたいです!」と言ってくれました。


彼女達の憧れる女性として、その場にいること。
それが私の役目だったのです。


私は、ただお茶を楽しんでいるという感覚しかなかったのですが、実はその後、私の知らないところでCDセットとカウンセリング料金として、女性達から高額を巻き上げ、卑劣な行為を繰り返していたのです。


今 考えると「なんか、おかしいな」と思うことがいくつもあったのですが、当時の私は、

「この人が私を助けてくれる救世主」

と思い込み、すっかり信用していました。


そんな私のことを、周りの友達は「悪徳詐欺に加担して、マージンをもらっている人」と思い込み (実際には1円ももらっていませんでしたが) 、どんどん友達が離れていきました。


それから1年、気付けば昔からの友達は、私の周りから一人もいなくなり、詐欺師を通して知り合った人達しかいませんでした。

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【最悪の事態から救ってくれた社長との出会い】


洗脳詐欺師と会う7年前、20代最後の年に、ある講演会に伺う機会がありました。
大阪のIT会社の社長のビジネス講演会でした。


第一印象は「パワフル」
とてもエネルギッシュな方だなぁ、と感じたことを今でも鮮明に覚えています。


そして、「この方ともっとお話しをしてみたい」と思い、講演会後の懇親会にも参加し、沢山お話しをさせていただきました。


ステージで話すパワフルな印象とは別人のように気さくで謙虚な方でした。
しかも、

私と同学年!?


とても驚いたのと同時に親近感も覚えました。


その社長は、IT会社を経営されながら、企業コンサルや人材育成もされていました。
また、プライベートでも沢山の人の育成・サポートをしていました。


少し私のプライベートの相談をさせていただくと、

「俺は、育成が大好きなんや。困ったことがあったら、いつでも連絡しておいで!」


と連絡先をおしえてくれたのです。


その言葉を素直に捉えた私は、困ったことがあると連絡をして、アドバイスをもらっていました。


どんな時も話を丁寧に聴き、アドバイスをしてくれる。
同じ質問をしても、私が納得するまで何度も答えてくれる…


一銭の得にもならないのに、真剣に私を真正面から受け止めてくれるという姿勢に、私は少しずつ心を開いていきました。


こんなにお世話になった社長とも、詐欺師のAさんに出会ってからは、全く連絡をとらなくなっていました。

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Aさんに、大阪の社長の話をした時「その人は信用できるのか?俺は信用できない。もう連絡はとらない方がいい。」と言われたからです。


ある日、大阪の社長から突然、久しぶりの電話がありました。


「明日、札幌に行くから、◯◯時に◯◯駅で待ち合わせしよう!必ず来いよ!」

詐欺師と出会って1年程経った頃でした。


ずっと連絡もせず、社長を裏切っていたのでは?という後ろめたさもあり、ギリギリまで迷いましたが、ちょうど時間も空いていたこともあり、また、何故かどうしても会わなければならない気がして、約束の場所に向かいました。


久しぶりに会う社長は、笑顔で私の前に立っていました。
ホッとする笑顔だったのを今でも鮮明に覚えています。


そして、空港に向かう電車に一緒に乗り、その間の約40分で、私の洗脳を解いてくれたのです。


社長は、私の様子がおかしくなったことに気が付いていました。


何ヵ月も時間をかけてAさんのことを調べ、証拠を掴み、資料をもって札幌まできてくれたのです。


「お前は洗脳にかかっているんだぞ。わかるか?」


資料を見て説明を受けて、初めて自分は洗脳にかかっていたのだと知りました。


ショックでした。。。


落ちるところまで落ちてしまった私は、もう、幸せになることなんてできない。取り返しのつかないことをしてしまったと、目の前が真っ暗になりました。


ショックで固まった私を責めるでもなく、社長はそっと言葉をかけてくれました。


「人は誰でも失敗することもあるし、間違うこともある。そう気付いた時は、そこからやり直せばいい。人はやり直すことができる生き物だ。躓いて転んだら、もう一度立ち上がればいい。人は何度だって立ち上がることができるんや。」


信じていた人にずっと騙されていた。その事実とショック、そして社長の優しさに、電車の中で人目も気にせず号泣していたことを、今でも覚えています。


それからすぐに、Aさんに電話をし、縁を切りました。


さらに、Aさんを通して出会った人達 約20人の女性に一人ずつ会いました。
事実を伝え、「Aさんと縁を切るよう」伝えたかったからです。


謝罪の気持ちも込めて、電話やメールではなく、直接会いました。


何人かでも伝わればいい、と思っていたのですが、私が会った全員が私の言葉を信じ、詐欺師と縁を切ってくれました。


全てが終わった時、私の心は疲れ果てていました。


もう、自分も他人も流れてくる情報も、何を信じたらいいのかわからない。
また騙されると思うと何も信じられない。
大切な友達も全員いなくなってしまった。
何のために生きているのかすらわからない。


疲れ果てた私は、私を救ってくれた社長にも連絡をしなくなりました。
そんな気力もなくなってしまいました。


ただ、二人の息子の為だけに、何とか生きる日々でした。


【もう一度やり直す!】


それから3年。
結婚生活は相変わらずの冷戦状態、大好きな着物の仕事も、なかなか思うようにいかない現状ではありましたが、生活をしていくため、必死で働き続けていました。


当時、着物の仕事とは別に飲食店で接客の仕事をしていた私は、スタッフやお客様の恵まれ、少しずつ人を信頼することができるようになっていきました。


パートとして働き1年も経たないうちに、会長から仕事を認めてもらうことができ、私の特性を生かした新しいポジションを作ってくださり、正式に社員として働かせていただくことになりました。


VIPのお客様のメイン接客。


会社の会長や社長は勿論、ここではお名前をあげられないような有名な方々の接客をさせていただきました。


やりがいのある毎日の中で、今まで、心に蓋をして忘れてしまっていた大阪の社長から教えが、一つずつ思い出されてきたのです。


重要なポジションも与えられ、やりがいをもって仕事ができるようになってきた頃、

「自分の人生、このままでいいんだろうか?」

と考え始めるようになりました。


20代からの夢でもある
「着物に関わる美容の仕事で独立」
「女性をサポートしていく仕事をする」


この2つを実現しないまま人生が終わったら絶対に後悔する!
ある日、自分の本当にやりたいことを思い出し、もう一度チャレンジすることを決意しました。


そのためにも、あのお世話になった社長から、人として・経営者として、仕事のことも人生のことも学びたい!
そう思って、社長の誕生日にメッセージを送りました。


返事もないまま、1ヶ月が経ったある日、社長から突然の連絡がありました。


「明日、札幌に行く。◯◯時、空いてるか!?」


久しぶりの社長との再会。
そしてその時に言われた、衝撃的な言葉。


「お前は3年成功しない」


続きは、第3話で話しをしていきます。


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■第1話 《どん底の人生》
■第2話 《人生最悪の出来事》
■第3話 《ゴミ拾いが人生を変えた!?》

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