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自分のストーリーを生きるためにやめたこと

もう10年くらい前のことになるけれど、

はっきりと覚えている。

大学生のころに

サンフランシスコで仲良くなった日本人のお姉さんが

大事な秘密を教えてくれるかのように

そっと私にこんなことを言った。

「あいちゃん、あのね、

テレビっていうのはドラマの中に主人公がいるでしょ。

人生はあなたのドラマだからね、

テレビで他人のドラマを観てないで

あなたのドラマを主人公として思いっきり楽しんだ方がいい。」


私はハッとした。

なるほどとも思った。

それから、テレビを観るのをやめた。


今でこそ、テレビを(敢えて)持っていない家庭というのも、私の周りには珍しくないけれど、私はいたって普通にリビングにテレビがある家庭で育った。

「食事のときはテレビを消しなさい」と親に言われて渋々消すみたいなこともあったから、それくらいよく点いていたと言ってもまあ間違いじゃないと思う。

小学校の頃は、17:50からの「忍たま乱太郎」(笑)、中学校の頃は、毎週月曜日の「ランチの女王」を楽しみにしてたのを覚えてる。

他に記憶にあるのは、ユースケ・サンタマリアさんが主演した「アルジャーノンに花束を」や、「ごくせん」。仲間由紀恵さん演じるヤンクミのかっこよさが清々しく、父親とよく笑ったりワイワイ言ったりして楽しんだものだ。

高校生の頃は、深夜にNHKがやってた「爆笑オンエアバトル」にハマってた時もあった。わざわざビデオテープに録画して見返したりまでしていた。

大学生になってからは、なんとなく手持ちぶさたで、何をしようかとやる気も出ないような時には、とりあえずソファーに寝っ転がってテレビのリモコンを握っていた。特にこれという目当てもなかったのだろう、どんな番組を観たかはっきりとした記憶がない。


そんな、どこにでもいそうなテレビっ子だった私が、

大学生になって出会った、友人の一言でテレビをあっさり卒業した。


「人生の主人公はあなたです」

なんて、文字にしてみると、校長先生のつまらない話にだって出てきそうな話だし(色々と失礼)、「言われなくても分かってるよ!」と言いたくなることかもしれない。

「他人のドラマを観てる時間があったら、自分のドラマを楽しむ」

そのときの私には、仲良しのお姉さんにとっておきの秘訣を教えてもらえた感じで、とてもラッキーだった。

彼女は本当に彼女の人生を謳歌しているように私の目に映っていた。その姿は月並みな表現だけど、本当に輝いていて、のびのびと毎日・毎秒をいきいきと「生きてる!」って感じに見えていた。なんだかとっても素敵な女性なのだ。

もちろん「楽しむ」といっても、楽しいこと、嬉しいことばかりなはずはなく、辛いことや悲しいこと、腹が立つこと、言葉では言い表しにくい複雑なこともいろいろ含まれている。

実際、彼女にもアメリカに住むためのグリーンカードの申請をめぐって心労が多い大変なときがあったことを知っているし、恋愛で言えば、当然悩みも尽きることはない(!)。

そういえば、彼女と仲良くなったのは、お互い長期滞在していたホステルで同じ部屋になったときに、気がついたら8時間ぶっ通しでおしゃべりしていたというのが始まりだった。若かったとは言え、凄まじい持久力とトーク力だ(笑)。

テレビドラマだったら8本、映画だったら4〜5本の計算になる。ただただお互いを知り合うというシンプルなおしゃべりが楽しくて仕方がなかった。ちょうど私は中米とニューヨークの旅からサンフランシスコに戻ったというタイミングで、彼女はサンフランシスコに8年くらい住んでいたんだったと思う。日本を離れるという共通体験がありながらも、そこに至るまでの経験やそれぞれの価値観、リアルな感情で紡がれるストーリーのあれこれは、飽きるなんて言葉とは無縁だった。

そんな彼女があるとき教えてくれた、「テレビドラマより、自分の人生」というライフハックは、なんだかピンときて、実際その後、私の人生の時間の質をうんと上げてくれたと思う。


「テレビなんてくだらない」なんて言うつもりはない。

テレビ番組にも、優れた作品や、興味深いテーマが、きっとたくさんあると思う。私も、観ていた頃はとても楽しんでいたし、好きだった。今はもう、面白いか、くだらないか、観てないから分からない。

テレビがくだらないんじゃなくて、自分の目で見ること感じることが面白いし、リアルな世界に費やす時間を思うとテレビを観る時間が惜しくなっただけのこと。リアルと比較されては、テレビがかわいそうなくらい、勝ち目がない(笑)。

自分の人生ほどリアルで魅力的なドラマはない!

幼い頃からテレビが日常の一部だった私にとって、そのことに気がついたのはその後の人生の時間を大きく左右したと思う。そんな貴重なきっかけをくれた友人の言葉と、当時それを受け取ることができた自分の素直さと、その後の選択に今改めて感謝したい。

ちなみに、テレビを観なくなったからと言って、困ったことがないというのも面白い経験だった。

「テレビを見なかったら情報が入ってこなくて困る、流行りについていけない」という心配が巷でよく聞かれると思う。が、今のところ、まったく問題がない。それよりも新しい気づきや見方、世界の広がりの方が大きい。その辺りもいつかまたタイミングが訪れたら書いてみられたらと思う。

My Life is My Story.

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