あいあい

福岡生まれ、地球育ち、今はオーストリア人の夫とサルツブルクで暮らしています。仕事はフリ…

あいあい

福岡生まれ、地球育ち、今はオーストリア人の夫とサルツブルクで暮らしています。仕事はフリーランスで、大事に思うことをあれこれ手がけています。亀と大根とコンポストを敬愛。

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一本の電話とフィールドワーク

「いつですか?」 「今日でもおかしくない」 だったらあまり長電話はできないな。私はそう思いながらも、数ヶ月ぶりの電話に、そしてもうすぐ産まれてくるらしい命に、それを取り囲む家族の暮らしの一幕に立ち会うことに、少々興奮気味だった。 電話越しの相手は、去年の春まではお隣さんだったお兄さん。私の大好きな友達で彼の息子さんたち、わんぱく三兄弟がいよいよ妹を迎えるという。 室内で集まれないなら外へやはり新型コロナウイルスの影響は依然として続いているようで、集まるということがなか

    • 「もったいない」より大事なこと

      「『もったいない』をなくしたい」という願いが込められた企画にお声かけいただき参画することになったので、「もったいない」について自分の考えを記しておこうと思います。 私は「もったいない」という言葉を自分に対しては多分しょっちゅう使っていますが、コミュニケーションの中で使われる「もったいない」はあまり好きじゃないことがよくあります。 私が好きじゃない「もったいない」最たるものは「もったいないから残さず食べなさい」という追い詰め。一般的に「まだ食べられるよ」と教えてあげるのは良

      • 時を刻んだ指輪が教えてくれた新たな時

        バキ、グキ、ゴリッ ??? 骨が折れたか、何が割れたか、一瞬見当がつかなかった。 机についてノートを広げ、初めて一人で作るおせちの計画立ていた私は、しばらく考えあぐねながら、なんとなく肌寒く感じる手をお尻の下に敷くようにして、いつにない体勢を取っていた。 割れたのは指輪だった。 セレモニーで交換した結婚指輪。 そういえば、当日の朝に間一髪ギリギリ届いた、時を得た代物だった。 あれから毎日、私の薬指と一体化して時を過ごしていた。 真っ二つどころか、4つの破片とな

        • 旅のスタート地点

          思えば遠くに来たもんだ。 今、私はオーストリアの自宅のリビングでこれを書いている。 もうすぐクリスマス。 そうだ、3年前の昨日、初めてオーストリアに来たんだった。 沖縄で彼から受け取ったスペシャルバウチャーは、クリスマスにオーストリアへと招待してくれたもの。 中学高校と吹奏楽に明け暮れ、大学で心理学を専攻した身としては、いつかは行ってみたい憧れの国だった。 まさか、こんな形で夢が叶うなんて。 年を越して帰国する時には、婚約の報告を持ち帰って周囲を驚かせてしまった

        一本の電話とフィールドワーク

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        • 365Alive!
          6本

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          昔ながくて、今みじかいもの

          Gemütlichkeit 去年の夏、夫と親しい友人(ドイツ人)を訪ねたミュンヘンで習った言葉。 昼下がりの散歩の途中に 川沿いのちょっとしたキオスクでビールをいただきながら 夫を含むドイツ語を母国語とする3人に 「これは覚えておくんだよ!」と何度も発音させられた。 ゲみゅートリッひカイT?!? ü(ウムラウト)の慣れない難しい発音も入っているし どこで音節が区切られてるかも分からず なんじゃこのながったらしい単語は!!!と思った。 けれど、これが文化を象

          昔ながくて、今みじかいもの

          自分のストーリーを生きるためにやめたこと

          もう10年くらい前のことになるけれど、 はっきりと覚えている。 大学生のころに サンフランシスコで仲良くなった日本人のお姉さんが 大事な秘密を教えてくれるかのように そっと私にこんなことを言った。 「あいちゃん、あのね、 テレビっていうのはドラマの中に主人公がいるでしょ。 人生はあなたのドラマだからね、 テレビで他人のドラマを観てないで あなたのドラマを主人公として思いっきり楽しんだ方がいい。」 私はハッとした。 なるほどとも思った。 それから、テレ

          自分のストーリーを生きるためにやめたこと

          物語/ストーリーを書くということ

          『おーい、おじさん』 私が人生ではじめて書いた物語のタイトルだ。 人口3千人ほどの小さな村に赴任となった父の 駐在所のオフィスで もうすぐ5歳になる頃の私は一人、 電気もつけずに、ひそやかに創作していたらしい。 メモ紙として半分に切られた裏紙に 年の離れた兄たちの真似をして 覚えたばかりのひらがなを一つずつ並べて 短編物語を完成させたのだった。 元がペラペラのメモ紙だから ところどころ破れているが、 処女作ということで母が丁寧に製本(っぽく)してくれた

          物語/ストーリーを書くということ

          星降る朝に

          なぜかしら朝4時に目が覚めて ぼんやり窓の外をみると 真っ暗な世界に満点の星空。 窓を開けると、一つ星が降った。わ! また一つ。お! たった5分くらいのうちに10個以上の流れ星をみて、静かに心が大騒ぎ! これはただ事じゃないと、寝ている夫に速報を伝え 私は一人、コートを羽織ってバルコニーへ出る。 外はマイナス2度。 空気は澄み、晴天に星が瞬いている。 そしてまた一つ、星が降る。 大きな星が流れ、心がまた跳ねたとき、 「スゴイィィィーィ!」 向こうの方

          星降る朝に