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30年ぶりのスラムダンク
漫画のスラムダンクを読むと、なぜだか父親のことを思い出す。特に、山王戦のラストから最終回にかけて。
「左手はそえるだけ」
「『負けたことがある』というのが、いつか大きな財産になる」
「天才ですから」
漫画の中でキャラが放つ名言を、誇らしげに僕に向かって伝える姿がうっすらと記憶にある。それだけ、きっと父親もこの漫画を好きだったんだろうと思う。
僕は今年40歳になった。
スラムダンクを読んで今更バスケを始めようなんて思うほど、こどもではない。でも、この漫画には人を元気にさせる力があると思う。
12月に入って、実家の母親に「誕生日、何か欲しいものある?」と聞かれた。最近は自分の息子にプレゼントをあげることはあれど、自分がもらうことに特別な意識はない。欲しいものがあれば自分で買えるからだ。「無い」と言いかけて、ふと思いとどまった。
「…スラムダンク。全巻」
そう言うと、とても不思議そうな顔をされた。
「今さら?」
そう。自分で今更全部買い揃えるかと考えると、そこまでの熱量はない。でも、くれるというなら欲しい。そんなちょうどいい位置にあったのがスラムダンクだった。調べてみると、いつの間にか「新装再編版」なるものが出ている。全20巻。それをプレゼントしてもらい、今日全て読み終わった。
「うは…。こりゃすげえ」
中身や試合結果なんて全て知っているはずなのに、展開にドキドキした。連載が終わって30年近く経つのに全く色褪せない。やっぱり、すごい漫画だった。これが連載されていたのが1990年から1996年。僕が小学1年生から6年生までだ。
そういえば、これで中学生になった途端、バスケ部に入る人たちが増えたんだっけ。僕の通った中学には男子バスケ部は無かったけど。
ふと計算してみた。
スラムダンクが連載されていた時、僕の父親は何歳だったんだろうと。
すると、連載終了した年が42歳だった。
「今の自分と同世代じゃん」
父親も今の僕と同じくらいの歳の時に、スラムダンクにハマっていたのだ。親子で同じくらいの歳に同じ漫画にハマるなんて、なんか面白い。
そして今なら言える。
「父ちゃん、分かるよ。その気持ち」
毎年大晦日には、離れて暮らす父親の元で過ごす。今年の年末は、世代を越えてスラムダンクの話で盛り上がれる気がした。