湯気
身体を洗った後、ザブンと肩まで風呂に浸かる。
いつもより少し熱めのお湯。
湯気がふわりと立ち上っていく。
今日は特に寒かった。
南国と呼ばれる宮崎でもこんなに寒いのならば、北の方にいたら絶対に暮らしていけない自信がある。
今年は明日で仕事納め。
最終日は大掃除メインなので、あんまり実務らしい実務は入れていない。
フーッと大きく息を吐いて足を伸ばす。
リラックスした状態で今年をぼんやり思い返してみた。…といっても、全然振り返れないのが現実で。色々あって面白かったような、辛かったような。よく分からない。風呂でこんなこと考えるもんじゃないな。
両手でお湯をすくってバシャっと顔にかけた。
風呂を描いたシーンで、好きな歌詞がある。
飯を作ろう 一人作ろう
風呂を磨いて ただ浸かろう
窓の隙間の 雲と光混ぜた後
昼食を済まそう
星野源さんの「うちで踊ろう」という曲の中に出てくる歌詞だ。
窓から覗く雲と差し込んでくる光がとても綺麗に合わさっている中で、ただただ風呂に浸かっているという日常感。
描かれているシーンがとても素敵だなぁと思う。
この歌詞のように難しいことなんて考えず、ただ風呂に浸かってゆっくりすれば良いのだ。
とりあえず、明日を無事に終えよう。
掃除でもして、スッキリさせよう。
全部終わったら、今年を終えよう。
「よし」と風呂から上がろうとしたが、いったん考え直してもう一度浴槽に身体を沈めた。
やっぱり、あと10秒数えたら出よう。
湯気が立ち込める浴室で、一人でゆっくりと数え始めた。